方針決定
「……現時点で、組織の存続を確信しているのは私達だけ」
やがて、シアラが口を開く。
「魔物の資料など明確な情報も手にしたことだから、ノイド将軍も騒動は終結したと宣言するでしょう。ログエン王国に頼ることは、もうできない」
「ディリウス王国もそれは同じだよ。内通者と思しき人間まで捕まり、俺を城に来させようとしているわけだから、事件は解決したと考えているはずだ」
「組織側としては国を手玉に取っているようね」
「情報戦という観点から見れば圧倒的に優位だな。戦闘についてはボロ負けだけど」
「……今後、組織がまだ残っているということを証明するには、再び人型の魔物を見つけ出さないといけないということかしら」
「それにしたって、組織が残したものと解釈できる……魔物がいるからといって、組織がまだ残っているという証明にはならないな」
「組織が生き残っていることを説明するには、私達が証明するしかないと」
「ああ……ただそれをすれば、確実に組織側にも情報が届く」
シアラは頭をかきつつ思案する。どうしたものかと悩みつつ、
「ユーク、私としてはあなたが動くのであれば手を貸すつもりではある。例えばの話、今回の騒動で私の社会的な地位は上がった。よって政治的な活動をするように装って、情報を集めることはできるけれど……」
「騒動を直接的に解決した俺達に対し組織は多少なりとも警戒するだろうから、難しいと思うぞ。まあどこかで観察しているという可能性は低いと思う。組織が消えたのになぜまだ監視されているのか、と怪しむ理由になるからな」
「私が動いても無理なら、完全に一から情報を集めるしかないってことよね?」
「手がかりはある。男を操っていた魔力の持ち主だ……ただ本人を捜索するにしても、索敵魔法を使えば気付かれる可能性もあるし難しい。ならば手は一つしかない」
「操っている人間を探せば……ということ?」
「そうだ。組織はずいぶんと人員を使い捨て騒動解決を図ったけど、まだ構成員はいるはずだ。それを探す……同様の魔力を持っている人間がいれば俺にはわかるから、それを手がかりに組織を見つける。幹部クラスとなればさすがに操っているというわけではないだろうけど、情報収集のために捕まえた男みたいな立場の人間はいるはずだ」
「足で捜索することになるわね」
「そうだな……でも、前よりはずいぶんと進展しているよ」
その言葉を受け――眼差しからシアラはユークが組織探しを続けるのだと理解した様子。
「わかったわ。といっても……あなた達は今後どうするの?」
「まずディリウス王国に事件解決したということで度の目的を変更する旨を伝える。今回の騒動で勇者という存在について見識を広げたくなった……よって、色々な勇者に会うべく旅を続けると」
「王宮には行かないの?」
「それは適当なタイミングで向かうとするよ……さすがにいつまでも旅の空というわけにもいかないだろうし」
もっとも、王都で屋敷に押し込められてもずっとそこにいる気はない、とユークは胸中で呟く。
「それに、俺としてはそう悲観的になる必要もないし、足が棒になるほど歩き回る必要性だってないと思ってる」
「その根拠は?」
「傀儡の多さだ」
ユークの発言を受けシアラは一瞬考えた後、
「……これだけ使い捨てる人間が多い以上、他にも魔法を付与している人間はまだまだいると」
「そうだ。勇者なんかと接触していれば、確実に会えると思う。もちろんただ慎重に動く必要はある。組織が存続していると明確に断定できるのは俺達だけという今の状況を維持したい」
「かなり大変そうね」
「情報源については意外とあっさり見つかりそうな予感もするし、なんとかなるさ……それに、シアラのように組織側が干渉してくるという可能性もゼロじゃない」
「ユークを勧誘するために?」
問い返したシアラに対しユークは首肯する。
「ああ。例えばの話、魔物の存在を伏せて話をしてくるかもしれない」
「それはさすがにないと私は思うけれど……ま、よくよく考えてみれば組織の行動方針とか何も知らない以上、どんな可能性もあり得るか」
「シアラの方は、情報集めにしても無理はしなくていいからな。ログエン王国が組織について調査しないとなったら、動かなくていい」
「心苦しいけれど……」
「ここに俺達の居場所をちゃんと用意してくれれば、それでいいよ」
「あくまでここを拠点に?」
「ああ、信頼できるし、何より友人だからな」
ユークの言葉にシアラは嬉しそうに笑う――そうして話し合いは終了。ユークはアンジェへと話し合いの内容を伝える。
「わかりました、ユーク様に従います」
彼女はあっさり返答。ただそれは盲目的に付き従っているのではなく、ユークの方針に賛同しているが故の態度であった。




