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追放王子と星降の魔女  作者: ぷも山
カルデア大公領と魔女の課題
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39.アクィラ宮殿と騎士寮




 予定通りの時間に宮殿に行くと、何処もかしこも怨嗟と瘴気だらけで一気に気が重くなった。

 澱みすぎだろうここ・・・政の中心地がこんなんで大丈夫だろうか。


「アンリ、こちらよ!早くいらっしゃいな。」

 宮廷魔導師のイザベラ叔母上が瘴気など気にもしない素振りでこちらにやって来た。

 こんな空気だが、何とか気を取り直して初めましてのご挨拶をするが、行き交う貴族達の視線とひそひそ声も相まって、オレの気分はさらに落ち込んだ。


「あら嫌ね、そんなお顔をしないでちょうだい。」

「叔母上様は凄いですね・・・」


「ここずっとこんな有様よ。でも慣れればどうって事ないわ。」

 このひどい空気のせいか、オレの肩の上のカルコス君もプッチ君も少し元気がない。


「自分の周りだけでも浄化して良いですか?」

「まぁ!それは良いわね。いっそ宮殿まるっと浄化をお願いするわ。」


 笑いながら言う叔母上様は、部下達を呼び寄せると何故か護衛してくれた。


 え?オレ危険なの?死ぬの!?


 この護衛配置はかなりヤバい状況だよ!?

 でも死角がないからちょっと安心。


「ウフフ、流石ね。その慌てぶりを見ると、どれだけ自分が危険な状態にあるのか分かっている様ね。」


 ほらやっぱりー!

 伊達に護衛を学んだわけではないんですよ!


「一度庭園に逃れましょう。」


 叔母上様はそう言って行き先を変更するが、庭園には既に皇帝陛下と宰相さん、第一位から第三位までの皇子が揃っていた。

 後は護衛騎士と従者さん。それと、皇妃様方だろうか?

 でも立ち位置がおかしい。もしや皇妃様の妻達か!?


「陛下、ケラヴィノス卿が宮殿を浄化して下さるそうですわよ?」

 叔母上様があっさり言い、陛下もじゃあ宜しくと気軽に言ってきた。


 宮殿で精霊術はとんでもない羞恥プレイなんですが。

 詠唱を聴かれたくないんですが!!


 ルーさんと第二位のカスパー殿下がわくわく顔でこちらを見ている。

 アルブレヒトさんは諦め顔で、まあ頑張れと口元が動いた。


「此処が薔薇の庭園で本当に良かったです・・・」

 オレはボソリと呟き、一番マシな詠唱文を選ぶ。


「花達よ、癒しの香りで満たしておくれ。」


 花の精霊ルルディの祝福とまでは行かないが、宮殿中の瘴気と怨嗟を消費し魔素を拵え、精霊術を発動させる為の魔力に変換する。


 宮殿が光の粒子達に包まれ、少しサッパリとしてるが、甘みのある薔薇の香りが満ちていく。

 薔薇だけで無く芝生もつやっつやになったが、しょうがない。


 そんな中、皇妃様の妻の一人が声を上げる。

「は、肌が・・・潤っていく!!」


 あ・・・あかん、これ美肌効果や。

 女性達が追い求めて止まないあれだ・・・


「肌が潤い、若返った様にも感じられるわね。」

 叔母上様が自分の頬をペタペタ触りながらその感触を確かめていた。

 若返る、と言う危険ワードが飛び出し、冷や汗が出て来る。


 おいぃぃぃ!!!ルルディィィ!!

 効果も詳細に教えてくれよおおおおおおお!!


 --良い匂いがするだけの魔法。


 とか言って、一番危険なヤツ!

 気分転換するぐらいしか効果が無いって言ってたじゃねーか!!


 ほらぁ!皇妃様とその妻一同目がギラギラしてるじゃねえかあああ!!!!


「どうやら宮殿内は、ほぼ浄化された様ね。」

 その言葉に、叔母上様の部下の魔導師さん達が宮殿内を確認しに行った様だ。


「は、はい。浄化完了です・・・」


 オレは順序が変わってしまった気まずさを堪えつつ平静を装いながら膝をつき、皇帝陛下に挨拶の口上を述べる。

 そして謁見の許可をくれた事に御礼を言って、ショコラアソートを献上すると、庭園内に拍手が響いた。


「今日の良き日に其方に会えた事を喜ばしく思う。

 ・・・そして、我らは盟約に従い、務めを果たし、いずれ来たるべき日を神々へ捧げましょう。」


 陛下は、精霊への挨拶定型文を口にした。


「この世界が安らぐ日を願います。」

 とても自然に、自分の口からも言葉が紡がれた。


 皇帝陛下はニヤリと笑い、次はユヴァーリで会おうと言って庭園を去って行ったのだが、入れ違いにヒルデガルドさんとヴィルヘルミナさんがやってきた。


 その後庭園ではお茶会へと移行していくと、


「陛下は退位の準備で忙しいのよ。」

 皇妃様がそう言ってお茶を振る舞ってくれた。


 あれ?

 夫が魔女の元に行ってしまう、という雰囲気では無い。

 寧ろ喜びや達成感に溢れているような、そんな気配を感じる。

 しかも、ぽわんとした嬉色がオレの目に映る。これは初めての現象だなぁ。

 


「アンリ、先程の輝く光が貴方の精霊術なのかしら?」

 ヒルデガルドさんは不思議そうに王妃様やその奥方様達を見るとオレに向き直り、説明してちょうだいな。と言った。

 説明欲しい!是非欲しい!と言わんばかりの顔で全員の視線が集まったので、オレは正直に言う事にした。


「あれは花の精霊さんが教えてくれた、良い匂いがするだけの精霊術の筈だったのですが、思わぬ副産物を産んでしまった様です・・・」


 此処にいる人達は、先程の陛下とオレの挨拶を聞いて、どう言う事なのか予測がついているのだろう。

 女性陣が若返りを無理強いするような事はなかった。


「瘴気を祓ってくれたのだもの。あまり気にしないでね。」

「ああ、そうだとも!とても美しい光景だったし、今もまだ香りが残っていて、とても気分が良い。」

 カスパー殿下が未だワクワク顔でそう言ってくれたので安心したのだが・・・


「術効範囲は宮殿全体では有るのですが、肌に潤いをもたらした範囲はこの庭園内だけの様です。」


 イザベラ叔母上が早速部下たちの報告を纏めてくれた様だ。


「尚且つ肌にもたらされたのは潤いだけでは無い様ですし、薔薇の効果か精霊術の効果か。今後研究が必要です。」

 って、研究するんかい叔母上様!


「良い研究だわ。退位まで時間が限られますが、わたくしからも予算を臨時で出す事に致しますわね。」


「髪もつるつるする。」

 ルーさんが自分の髪を撫でる様な仕草をすると、皆一斉に髪を触り出した。

 そこで、お行儀が!と言う者は居なかった・・・







***


 お茶会も終わり、予定していた時間より少し遅くなってしまったが、サーシャさんが待つ騎士寮を訪れた。


「宮殿のあれはアンリの仕業だろう?此方にも薔薇の香りが届いていたよ。」

「すみません、余りにも瘴気や怨嗟が酷かったので。」


 ちゃんと陛下の許可を貰ったよと伝えれば、寧ろありがたいとお礼を言われてしまった。


「上位の皇子皇女は良いとして、微妙な位置付けの者達の派閥が厄介でね。最近特に酷かったんだ。」


 死人も結構出たそうで、オレはその話を聞いて震え上がった。


「イザベラさんがいてくれて助かった。君をルートヴィッヒ様の派閥だと勘違いした者が多かったみたいでね。」


 暗殺や連れ去りを心配してくれていたそうだ・・・

 帝都怖い!カルデアやユヴァーリに帰りたいよぉ!!


「それとアンリ、君は聖女ロザリーの関係者と揉めたりはしていないかい?」


 此処でもパストーリの御令嬢の話題が出た。


「よくわからないのですが、月光のオースのリーダーさんにサインをもらった時、聖女の周辺に気を付けろと忠告を頂きました。でも理由が分からないんです。」


 夜会の時にご挨拶されただけだ。

 ただ、彼女の取り巻き風の人が、ありがたく思え的な事を言っていた気がするのでその事を話すと、サーシャさんも考え込んでしまった。


「たったそれだけの邂逅で恨みを買うとは考え難いが、狂信者でも居たのかなぁ。」


 狂信者。

 不穏なワードだ・・・


「サーシャさん、聖女って何でしょう。称号には無いですよね?」


「称号ではないけど、神々により齎された聖書を崇める神殿と聖教会。その神官によって認定されるものなんだ。ただ、ちょっと聖書の解釈がね・・・」


 あぁ、サーシャさんの父親達の中にモノホンの神様いますもんね・・・


「神の意に添い人々を癒す存在が聖女と定義されていて、光属性を使用する治癒師が選ばれやすいそうだよ。」


「あれ?治癒魔術は水属性が一番効果高いんじゃ無いんですか?」

 ラファエラ先生の授業で習ったし、フェリクスさんも治癒師や薬師は水属性が必須だと言っていた。

 しかも次点は土属性だと言っていた気がする。


「光属性の治癒は、その場凌ぎな物が多い。応急処置としては確かに使えるが、再生力が低い。」


 光属性の癒やしは初めて聞いたが、サーシャさんの話を纏めると、対症療法であって根本治療は出来ませんよ。ってことで良いのかな。


「光属性魔術と言えば、母さんの広域殲滅魔術を連想してしまってね、聖女の治癒魔術は怖くて受けられないんだ。」

「それってリューシャが浄化作業で使ってるあれと同じですか?」

「そうそう。アレだよアレ。」


 ソーラメテオール側の森で見た、リューシャの広域殲滅魔法を思い出し、震えた。

 それは水明の魔女ミカエラさん直伝だった様だ。


「オレも聖女の治癒は無理そうです・・・普通の水属性治癒魔術が一番ですね。」


 その後は、演習場を案内してくれたり食堂にも連れて行ってくれた。

 何故に食堂?と思ったら、リューシャが従軍前に遊びに来た時、しつこく騎士寮の食堂に行きたいとせがんだそうで、何となくオレを連れて来てしまったそうだ。


「10人分はあっただろう大盛のトマトスパゲッティを美味しそうに完食していたよ・・・」


「安心して下さい、オレはそんなに食べられません。」


 そう言うと、サーシャさんは笑いながら普通盛りのトマトスパゲッティを頼んでくれた。

 肉団子がゴロゴロ入っていて、とても美味しかった。


 オレが帰る時間になると、サーシャさんの部下の近衛騎士団第三隊の皆さんが宮殿から戻ってきた所で、その中には茶会で護衛に就いてくれていた騎士さんも居た。

 改めてご挨拶すると、

「助かりました。これで大分仕事が楽になります!」

 と、お礼を言われた。


 良かった!一番まともな詠唱にして良かった!


 帰り際に、大渓谷での討伐頑張って!と応援され、サーシャさんも早く戻って来いよと声を掛けてくれた。


 屈強そうな騎士さん達の声援はとても嬉しかった。

 オレもあんな騎士になりたいなぁ。


 









こちらはpixivにも投稿しております

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