37.認定試験
遂に試験当日がやって来た。
やっぱり緊張するよね!
でも頑張って演習の成果を見せないと。
しかも森での演習中に、大ファンだった“月光のオース”の皆さんとも出会えた。彼らは暫くカルデアで活動するそうだ。
図々しくもお願いしてみたら、ダンジョン下層攻略エピソードブックにサインをもらえたよ!勇気出してお願いしてよかった。
後、何故か聖女の周囲に気を付けろとアドバイスをもらった。
聖女って確かあれだよな?パストーリ伯爵家の御令嬢。しかも聖女派閥みたいなのも有るらしくて、めんどくさそうだった。
貴重な助言、ありがたや!
「さぁ、アンリ様。お時間です。」
イグナーツ君が試験開始を知らせてくれる。
リューシャがくれた杖のお陰で、基本属性の魔術は扱える様になった。術式数は魔術師で合格できるラインに来れたが、問題は魔導師に必須の大規模魔術。
試験会場となったのは演習でお馴染み、ザーグロスの森。
地の利があるホームでの試験だ。がんばるぞ!
「では始めてください。」
認定官さんが開始の合図をくれる。
手には魔力値計測用の魔道具を持っているようだった。
オレは教え通り、基本属性魔術を規定数放つ。
杖有りokでよかったと思ったが、杖の扱いも試験の対象らしい。
「結構です。威力も十分ございますね。では、魔導師認定試験を開始します。」
遂にこの時がやって来た。
高火力の攻撃魔術はイリアさん直伝のレールキャノンだ。
音と衝撃波が凄いけど威力も有るし、見た目カッコいいからこれで是非認定が欲しい!
今日は杖のお陰かとても安定している。今ならイリアさんの様に連射が出来る気がする。
射線上には魔物が居るだけだし、撃ってみよう。
マジックストレージから鉛弾を5つ取り出し魔力操作で装填準備をしておく。
バリバリと雷属性魔力を纏い、レール作成に入る。
うん良い出来だ!
「では行きます。衝撃波があるので結界をはります。」
そう言いながらオレは自分と皆の分の結界を用意して、いざ射出。
連射のせいで物凄い音と衝撃波が来るが、そう言う物なのでしょうがない。
撃ち終わると、着弾地点に酷いクレーターが出来上がっていて申し訳ない気持ちで一杯になった。
認定官さんは口をOの字にして唖然としているし、オレの応援団である側近三人衆やラファエラ先生がため息を付きつつ少し呆れた顔をしている。
「ちょっと直して来ます。」
オレがそう言いクレーターが出来てしまった部分に向かうと、後ろから認定官さんの声が聞こえて来た。
「ま、まだ試験中です!私も行きます!」
そう言ってついて来てくれた。
精霊術の詠唱文を書いたオレ作のメモブックもとい魔導書を取り出し、再生を開始する。
「土さん達、みんなみんな豊かにな〜れ!」
くそっ!死ぬほど恥ずかしい!
だがクレーター部分にモリモリと栄養たっぷりそうな土が盛り上がって来る。
「草木もいっぱい、元気にな〜れ!」
土で埋まったクレーター周囲の草木がどんどんと侵食して来て、土の上を覆い尽くすと修繕は完了だ。
周辺魔素や瘴気を大量に消費したせいか、空気が綺麗になった気がする。
「何という幻想的で美しい光景・・・!」
認定官さんが、精霊術で発生するキラキラと輝く粒子に包まれた空間を見渡している。
頼む、そのままキラキラに目を奪われていてくれ。
そしてそのまま詠唱の事は忘れて下さい!
「本当に大精霊様の加護をお持ちなのですね。・・・しかし、まるで本物の精霊様のような術で、実に美しい。」
その言葉に一瞬ぎくりとしつつ何とかその場をやり過ごす。
花の精霊ルルディ曰く、今のオレは中級精霊と同等くらいの力量らしい。そしていずれは元の上級精霊ぐらいの力に戻るのではないかと言っていた。
「魔導師認定致しますが、これは私が認定できる上限です。本来なら貴方は、大魔導師と言っても遜色ありません。・・・いえ、もっと上位の存在と言ってもおかしくありません。」
少し落ち込んだ様に認定官さんが言うが、オレは魔導師認定がとても嬉しい。
だって、これでオレも魔導騎士になれるんだ。
「いえ!魔導師はオレの夢でしたから嬉しいです!今日は本当にありがとうございます!」
認定官さんは安堵した様な表情を浮かべひと呼吸置くと、アイテムバックから何かを取り出しオレに手渡して来た。
「こちらが魔導師のローブです。」
「ありがとうございます!大切にします!」
帝国騎士服に魔導師ローブ。
憧れの魔導騎士であるサーシャさんと同じ装いだ。
オレがローブを羽織ると、皆が拍手とともに祝いの言葉をかけてくれた。
そして、認定官さんはこれからパルティア城に戻り認定証を書いてくれるそうだ。
***
その日の夜、叔父上が称号認定官のテイラーさんを晩餐に招待していた。
オレの魔導師認定のお祝いと言いつつも、テイラーさんの接待にも見えた。
料理と酒を振る舞い、お土産には新たなカルデア名物菓子のチョコレートを渡していた。
何だか賄賂っぽくてヒヤヒヤするがここは異世界。大公家の威信にも関わるので、持てなすのは当たり前なのだそうだ。
そして、テオブロマの発酵過程の酵母や、その後の加工もオレの製作工程を元にカルデアでも独自に開発を始めている。
オレの紹介した商人さんと連絡を取り、カカオポッドの輸入の手配も始めたそうだ。
そして、ヴァツカーヌではヨアヒムさんがテオブロマの栽培を始めたと言う。
ヨアヒムさんは功績などよりも研究過程を楽しむ人だ。それが新しく任官した学院同期の魔導師ルーテシアさんとタッグを組み、自力陞爵するために頑張っていると言う。
期限はオレが大渓谷での従軍期間を終えるまでという短さだが、ヴァツカーヌの田園を守るため頑張ると言っていた。
オレは申し訳ないと謝るが、魔女の夫は大変名誉で喜ばしい事だと祝ってくれて、そして今まで功績も立てず好きな事ばかりして来た自分の生活を戒めるのだと言っていた。
だが、元々ヨアヒムさんの領地経営の手腕はかなり評価されている。
管理も行き届いており、とても良い土地だ。
民も自分達が住む土地を見知らぬ誰かに割譲されたくないので一生懸命頑張っていると言う。
だから大丈夫。きっと上手くいくだろう。
「さぁ、カルコス君契約だ。」
オレが呼ぶとカルコス君はパタパタと走り寄って来た。
交渉もしていないのに叔父上が結婚祝い第一弾としてカルコス君を贈ってくれた。
従魔契約するオレ達を見て、プッチ君も心なしか嬉しそうにピピっ!と鳴いた。
契約でラインが繋がると、カルコス君はオレの魔力を纏い始め、みるみる内に身体が大きくなっていく。
「ティグリスの成獣化です!おめでとうございますアンリ様!」
イグナーツ君やレオンハルト君が珍しい物を観れたと喜んでいた。
『わぁ、大きくなった!ありがとうございますアンリ様!』
あの可愛かったカルコス君の幼い声が、野太い成人男性の物になっていた・・・。
ただ、幼獣化も出来る様で、小さく縮むと元の声に戻ったので少し安心した。
そしてオレの側近三人衆から今後の進路を聞かされた。
イグナーツ君とレオンハルト君は共にヨアヒムさんにスカウトされたそうだ。
ヨアヒムさんは専属の従者や騎士を持っておらず、パルティアから出向していた従者や騎士だけだったそうで、これから陞爵のために頑張る彼を支えて行くのだと言う。
二人はオレと共によくヴァツカーヌへ行っており、ヨアヒムさんとも大分仲良くなっていたので、その報告が嬉しかった。
ヴァツカーヌはユヴァーリ領に接しているので、良いアイテムが揃うし、ご飯が美味しいので人気の出向先でも有るそうだが、二人は出向ではなくヴァツカーヌ領主館で任官試験を受け直すと言っていた。
そしてクロエさんは希望の食品管理官になれるそうで、新たに出来たチョコレート部門に配属になったそうだ。
乳製品を取り扱える事に喜んでおり、更なる発展をさせたいと意気込んでいた。
お世話になったラファエラ先生はオレの講師を退いた後は領軍魔術隊に復帰すると言い、フェリクスさんは素材保管塔で治癒師を続けるそうだ。
やはり創薬業務が楽しいらしく、良い薬が出来たら報告をくれると言う。オレも何か作った時はフェリクスさんにも見て欲しいと言ったら、楽しみにしていると言ってくれた。
短い間だったけど、カルデアでの生活は楽しかったなぁ。
精霊の目を持つ今のオレだからこそ分かる。
パルティア城は瘴気が薄く、あったとしてもほぼ大渓谷からの流入物だけだろう。
これは働く皆が、楽しく仕事や研究をしている証でもある。
まぁ、領主が一番趣味を楽しみまくってる土地だからね、そうなるよね!
そして従軍準備を整えつつ、帝都へ旅立つ日が近づいて来た。
寂しさは感じるが、追放された訳じゃない。
何時でも里帰りして良い、寧ろいっぱい遊びに来なさいと言われるが、米の買い付けやカフェの準備でお世話になりたいと話すと出資までしてくれると言う。
勿論辞退など出来ない強引さだった。
だって叔父上は精霊が関わるとウキウキワクワクが止まらなくなっちゃうもんね・・・。
むしろ叔父上が頻繁に魔女領に遊びに行きたいとか言ってるしな。
さて、まずは帝都へご挨拶の旅だ!
お祖父様やサーシャさんに会えるのが楽しみだ!
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