35.帰領
あれやこれやと、家具について考えていると夕飯の準備の時間になってしまった。
明日帰るのに全く間に合わないんですが!
「アンリくん、明日帰るんだよね?一応私の研究資料渡しておくね。」
リューシャがとんでもない宿題をくれた。
“大容量転移陣の安定した運用について”、と言う資料の写しだった。
内容はとても高度な魔術論文で、今のオレには難解な部分が多い。
そして驚くことに、理論的には既に完成している。
ただ、リューシャの魔力量が基準なので、一般運用ができる見込みが全く無い・・・。
これは先が長そうだなぁ。
そして今日の夕食は、オレが全部作る事になっている。
これはリューシャのご飯係としての力量をエマヌエルさんに見てもらう為だ。
食料庫を見ると、大量の食材が有ったので何を作ろうか悩んでしまう。
自由に使ってと言われると余計に難しいなぁ。
ヴァツカーヌで収穫されたアボカドとプルプルンラックスを使ったサラダは決まりとして、他は何にしよう。
そう考えながらも沢山ある卵を見て、ふわとろオムライスが食べたくなったオレは一先ず材料集めを始める。
「デミグラスソースは精霊術使えば時短で作れるかな。」
慣れると便利な精霊の力に感謝しつつ料理を始める。
フェリクスさんがチョコ作りの時にくれた手書きの魔法陣と風魔石がミキサー代わりになって、とても役立った。
自分でも描ければ良いんだが、魔法陣は少し苦手なんだよなぁ。
そして何とかソースが間に合い、夕食の時間になった。
ナイフで切れ目を入れて、とろんと広がるオムレツに皆が楽しそうに声をあげてくれた。
チキンライスも上手くいって、とても美味しい仕上がりになったと思う。
スープは普通にポトフを作った。食料庫で巨大なコーンを見つけて、コーンスープもいいかなと思ったが、このメニューでは重たく感じてしまう。
デザートは採れたて苺を飴でコーティングした苺飴。
リューシャが食いたいと言うので急いで作った。
本当は別の物を作る予定だったのだがしょうがない。
マンゴープリンは中止して、角切りにしてセストで購入した他の南国フルーツも添えておいた。
「これなら十分に台所を任せられるわね!」
エマヌエルさんがそう言うと、アドラーさんもうんうん頷きつつ、今日も炭酸強化されたエールを美味しそうに飲んでいる。
合格ゲット!ありがとうございます!
「お義兄さんはお掃除も上手ですよ。」
精霊術を使用した物理的浄化魔術を褒められて、こちらもとても嬉しかった。
そしてセシリアちゃんは、アボカドとプルプルンラックスのサラダを美味しそうに食べ、珍しくおかわりをしていた。
鮭類が大好物なのだそうで、それに合うアボカドも気に入ってくれた。
森に沢山生ってるから是非消費してくれ!
「これならリリーとジルが来ても大丈夫だね!」
リューシャは自分の妻候補の名を挙げるが、結局役割がねじれそうな気がする。
もう一人くらい妻でも夫でもいいから家事要員が欲しいです!
誰かいませんかね・・・
***
次の日、浄化作業を手伝った後、カルデアに帰還する。
どっさりお土産を渡されて有り難かったが、リューシャからは早く大渓谷から帰って来てねと、強ーく念を押された。
カフェですね、わかります。
そして帰りは、ブランシェさんが送ってくれるそうだ。
安全飛行をお願いします!
まぁ、結局最速で飛ぶよね・・・
ブランシェさんは天馬狩をしてからユヴァーリへ戻ると言っていた。
やはり天馬は美味しいらしい。
ブランシェさんも結構食いしん坊さんだよな・・・。
そして、パルティア城に戻れば皆が祝福ムード一色で、出迎えも盛大な物になっていた。
一通り皆にお礼を言った後、叔父上が自身の魔術工房へとオレを連れて行く。
事情聴取かなと思い素直に従っていると、精霊術と目についてワクワク顔で質問攻めにされただけだった。
花の精霊さんから教えてもらった、詠唱メモを見せると感激していた。
こんなゆるゆる詠唱文にも関わらず、上級精霊など滅多にお目にかかれないし、貴重な資料だと言っていた。
ソーラメテオール第一住人は花の精霊さんだと教えると、是非遊びに行きたい、新居祝いに行きたいと言う。
そして、大公家としても結婚祝いに調度品一式をプレゼントしたいと言ってくれたので、屋敷の間取り等が描かれた写しを渡したら、直ぐに手配を始めてしまった。
高原リゾート風ですよ!よろしくお願いします!
「来週には、帝都から称号認定官が来る。彼らにもお前の魔術を見せつけてやるとよい。」
大事な事をさらっと言われた。
魔術師や魔導師の称号を得る為には、試験を受けて認定書を発行してもらわなければならず、その為の認定官がわざわざこちらに来てくれるそうだ。
因みに騎士称号はロムレスの認定証があるので、既に申請と承認が終わっているそうだ。
オレいつの間にか帝国騎士になってしまっているよ!
「アンリ、オルトロスは今後もお前が使うと良い。宝具殿に眠らせて置くより、テレシアも喜ぶだろうからな。」
「はい!有難うございます。この剣のおかげでノーヴァ卿とは15秒戦えました。感謝しかありません。」
「三騎士と打ち合って10秒を超えるか。中々良い腕前だな。」
にっこりと笑む叔父上だが、剣技に興味がないのが見え見えです・・・
少しだけだが教えを受けた事を話しても、それは何より。としかコメントをもらえなかったよ。
そして、試験想定の為にラファエラ先生が一通り内容を教えてくれるそうだ。
所謂、過去問対策。
目指すは魔導師!一つ目の目標に向けて頑張るぞい。
叔父上の魔術工房から自室に戻るとオレの側近三人衆が迎えてくれた。
カルコス君が泣きながら飛び付いて来たので、どうしたものかと思っていると、今後大渓谷やユヴァーリの魔女領に行ってしまうと聞いて、寂しくなってしまったそうだ。
プッチ君は従魔契約しているので連れて行く事になる。だがカルコス君は大公家のペットもとい猟獣なので連れては行けない。
「叔父上に従魔契約しても良いか聞いてみるよ。」
一旦そう言って宥めたが、前よりも一層くっ付いて離れなくなってしまった。
しかし癒される。
何でこう猫科の動物って皆可愛いんだろう。
これは本気で交渉に挑まなければ!
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