悪魔的回想
悪魔は呪いから生まれると、母は言っていた。
当時の幼かった私には、その言葉の意味が分からなくて。
よく母に尋ねたものだ。
「いい? 私達はヒトではない存在。相入れることはないし、分かり合う必要も無い」
「でもね、咲。ヒトが憎いといっても、悪魔自身が呪いを生み出す必要はないの。だって私達みたいな哀しい存在が増えるなんて、それはとっても悲しいことだと思わない?」
「ママのお話、むずかしくてよく分かんない。それに、私人間のこと嫌いじゃないよ?」
「咲……あなたはいい子ね。あなたのような悪魔が増えれば、この世界も少しはマシになるかもしれないわ」
母にワシャワシャと頭をなでられ、くすぐったいながらも、幸福を感じられる。
「好きな子はいるの? ママに教えて」
「えっとね、お友達の綾ちゃん」
「あらあら、女の子じゃない。同じ"好き"だけど、それは違うのよ」
「よく分かんない……この前、綾ちゃんとチューしたよ」
「んん?? あなたたちの間で何があったの?」
「私がアクマだってこと綾ちゃんに話したの。そうしたら、男の人となんてダメだよって言われて……」
「ん〜。そっかぁ、綾ちゃんがねぇ……」
母は何かに納得したように相槌を打ち、私の頬に手を添えた。
「咲ももう立派な悪魔ね。お友達を誘惑しちゃうなんて」
「ゆーわく?」
「今はまだ分からなくていいの。いつか、本当にあなたにとって大切な人が現れたら、誘惑の仕方を教えてあげる」
「大切な人なら、もういるよ」
ーーーーママでしょ。
ーーーーお姉ちゃんでしょ。
ーーーー綾ちゃんに……
ーーーールリちゃん。