表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mad Clown  作者: 彼方わた雨
chapter 3 ~善│悪~
16/95

-16:中心都市-

「飴、美味しかったわ」

「良かったな」


 リースとルーナが出発する日。2人は変わりなく宿屋を後にした。

 一方、アスラエルの町はいつもより静かな気がする、とルーナは感じた。町には、アエルが案内してくれた日のようにたくさんの人がいて、たくさんのものが飛び交っていた。


「ルーナ、お前、水調達して来い。俺はちょっと食料集める」

「……はーい。1時間後にまた、ここ?」

「ああ。気をつけろよ」


 ルーナは水を汲みに町に設置してある、水汲み場のところまで向かっていった。リースはその後姿を見送ってから、食料を買うために市場をうろうろしていた。


「おや、お兄さん」


 呼び止められたような気がして声のした方に目を向けると、そこにいたのはイアルダ鉱石の装飾品を扱っている店主がいた。先日、アエルと共に訪れたイアルダ鉱石の店だった。


「今日は1人か?」

「手分けして食料調達だ」


 リースがそう言うと、店主は表情を暗くした。


「男の子はいいけれど、女の子を1人にするんじゃないよ。昨晩だって、また、フェザリードルの人間が死んだって言うのに……。気をつけなよ、お兄さん。世の中物騒だ」

「フェザリードルの? 誰だ」

「エイクドの息子さ。自害だって言う話だよ」


 リースはそれから、店主に別れを告げ、また、市場を見て回った。

 頭の中では、あの店主の話がずっと離れなかった。


「……リース?」


 1時間後にまた、集合し、アスラエルを出た2人だった。しかし、浮かない顔をしているリースがルーナは心配だった。話しかけても、微妙な返事しかしないので、最初は嫌に思っていたが、だんだんとルーナも心配になってきたのだ。


「……何でもない」


 ルーナはそう言うリースの事が信じられずに、疑いの眼差しを向けた。


「変な顔だな。……言ったろ、無駄だ」


 そして、ニヤリと笑ったので、ルーナはもう心配なんてしてやらないと心の中で思ったのだった。



(……無駄、いや、無理だな)



 2人は次なる場所へ、歩いて行った。



―16:中心都市(セルトラリア)



「……これが、セルトラリア」


 アルセア国の中心に位置するのが、セルトラリア。

 聖都であるクリスタスよりも大きな土地である。アルセアのど真ん中にあるために、人、物が多く集まる。そのため、アルセア一の大都市である。クリスタスは聖都とはいえ、その多くが政府関係者であるために、発展しているが、賑やかではない。


 セルトラリアは賑やかであり、発展した都市である。

 アスラエルとは違う、賑やかさと活気ある雰囲気にルーナは圧倒される。同時に、彼女をわくわくとさせた。知らない土地が目の前に広がっている。何かを得られるかもしれないという期待感が増した。


 家がたくさんあり、洗濯物が家と家の間に干されていたり、子供たちが元気に走り回っていたりした。店もいくつかあり、アスラエルと違い、地面に布を広げたような簡易的な店はほとんどなかった。水路も整備されているようで、道のわきには水が水路を流れていた。家が多い所には水汲み場の様なものもあった。


「セルトラリアの中心に、アルセア国の中央図書館セントラルライブラリーがある」

「……図書館」

「ああ。蔵書数は国一、過去の新聞も保管されている。探せば、道化師(ピエロ)の事件記事があるかもしれない。必要が無いなら、セルトラリアを後にしてもいいが」


 ルーナは道化師、と言う言葉に反応した。道化師の情報が得られるのなら、セルトラリアを離れるわけにはいかない。そんな事、ルーナにとって考える時間はいらない。


「行く。案内して!」


 リースを真っ直ぐ見つめた瞳と、胸元にあるペンダントがきらりと光った。



 セルトラリアはなかなか広く、北のアスラエルから来た2人にとって、かなり歩いていることになる。セルトラリアの中心に行くのにも一苦労である。


 しかし、ルーナは念願の道化師の情報がいくつか得られるとあって、張り切っていた。そのためかあまり疲れを感じているようではなかった。


「……お前はどうしてそこまでする」


 前をどんどん歩いて行くルーナにリースは尋ねた。

 両親が殺され、それは話に聞くあの道化師の仕業。何もしていない両親が殺されたのは確かに納得できないだろうが、わざわざ危険を冒してまでなぜ、そいつらを追うのかが、リースには理解できなかった。

 不意に立ち止まったルーナに、リースは並んだ。


「何故って、悔しいからよ。それに許せない」


 ルーナは唇をかみしめていた。


「何より……両親が悪い事をしていないって、信じたいの」

「今のお前は、信じていないのか?」


 リースが訪ねると、ルーナは泣きそうな目で彼を睨んだ。


「信じているわ! 父は一生懸命働いていて家族を守っていたし、母は私を温かく包み込んでくれていた。そんな人たちが、悪い事しているわけない……!」


 そして、彼女は視線を前に向けると、リースを置いてまた歩いて行った。

 リースはその後姿をしばらく眺めて、追いかけた。


「そんなガツガツ進んでいると倒れるぞ」


 リースが追い付き、ルーナのすぐ後ろまで来た。


「……うるさい」

「今日休む宿も検討つけてお――」



「ほー、では家はどうかな?」



 2人は今までいなかった声に驚いた。


「遠慮する事はない。な、我が息子?」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ