表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/60

定住

 あれから一年半後。


 今日も昼からのんびりと昼寝をしていた。あのグリフォンの件はその後の調査の甲斐もなく、これといって進展はしていない。情報も全く入ってこなかった。ただ、事態を重く見たレリアス王は、対策として直ちに特殊情報部を設けた。この特殊情報部は、この件だけでなくその他の国の情勢、危険分子の情報、対策、魔術の研究、人材の育成などの多種多様にわたる幅広い諜報活動を行うことになっている。本格的に活動できるように構成されたのは、事件から約半年ほどたった後ではあったが、その間、護、劉を中心に土台は出来上がっていた。


 劉は国正規の部隊の隊長であったので、そちらのほうを優先して活動していたため、実質護がほとんどを任せられていた。現在、立場上特殊情報部の少佐の地位にいる。といっても、ばたついていたのは最初の数ヶ月ぐらいで、調査の結果、これといって今のところ新たな危険が迫るという可能性がなかったため、その後は結構暇な時間を過ごしていた。もちろん仕事はあったのだが、大まかなことは部下に任せ自由にやっている。実際問題として、ある程度自分のことは説明しておいたとはいえ、新参者で子供の姿をしたものがうろちょろしていたら周りも困るだろうということを考慮した上での行動である。と、護本人は考えていた。むろん、漆黒の疾風ということは、まだ上部の数人しか知らない。



 護は、ゆっくりと目を覚ました。

 

「ふぁ〜、よく寝た。」


 時刻は三時過ぎ。窓から漏れる木漏れ日がとても気持ち良い。のんびりと窓の外を見ていた護は、ベットから起きると出かける準備をした。こういう日はまったり散歩に出かけるのが良い。いつものようにあそこに行こうと思った。支度して階段を下りていく。

 

「ちょっと出かけてきますね」


 ゲンに言葉を投げる。

 

「おう、どこ行ってくるんだ」

 

「ちょっといつもの場所まで」

 

「ああ、あそこか。おまえも好きだね」

 

「それじゃあ、行ってきます。」

 

 目的地に行こうとして、ふと足を止める。そしてそのまま、反対側へ歩いていった。しばらく歩きマリアの店の前に立つ。

 

「マリアおばさん、こんにちは」

 

「ああ、いらっしゃい。護ちゃん」


「今日はいつものやつと、あと、ポテトと卵サンドもらえますか。あ、包んでくれると助かります」

 

「はいよ、ちょっと待ってて」


 マリアの元気のいい声が広場に響く。 頼んだものをもらうと、そのまま来た道を戻っていく。ストロベリーの前を過ぎ、五、六分歩いたぐらいのところで横の細い獣道に入って行く。

先に進むと泉の広がる広場に出た。そこに自分で作ったベンチがあるのでそこに座る。


 そう、まだこの町に着いたばかりの時に見つけ結界を張った広場である。天気が良い日は、ほとんど決まってこの場所に来るのが習慣になっていた。ここは気持ちが安らいで気持ちが良いからである。ここで食べるお弁当は最高だ。ぼーっと空を見上げながら、軽くお弁当を食べる。

 

「ああ、今日も平和だな〜」


 ぽつりと言うとベンチを降りて横の芝生に寝転がる。


「なんだかんだいって、もう一年半経ったのか。ほんの少しいるつもりだったのがいつの間にか定職にまで着いちゃって。世の中分からないものだな。まあ、楽しいから良いけどね」


 独り言を呟く。周りは、泉に満ちる水の音と風が揺らす木の葉のすれる音が包み、なんとも落ち着いた雰囲気である。ここにいると嫌なこととか時間とかが忘れられて良い。どれほど時間が経っただろう。護は、またうたた寝をしていた。そのとき、風の流れが変わった。目が一瞬にして覚める。こういう事には敏感なのだ。

 

「近くで、誰かが争っている・・・」


 良く耳を澄ますと、どこからかキーンと甲高い音がした。そちらの方に急いで行ってみる。奥の森が深くなっているところで誰かがいるようだ。人影を確認すると少し離れたところの木に登りしばし様子を見ることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ