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避けられないバトル

護は、声の聞こえるほうにひたすら走っていった。いたるところでうろついているオウガデーモンに気をつけ、気配を消し、闇に同化しながら向かう。どうやら声は地下の方から聞こえてくるようだ。迷路のような城の中を走り回るとようやく、一本の通路に出た。その通路には敵はいない。そのままを真っ直ぐ抜けると階段があり、そのまま下のほうに続いている。声はこの下から聞こえ、今でははっきり聞き取れる。


「王様!どうやら、地下に向かう階段を見つけました。このまま降りていけばよろしいのですか?」

「うむ、その階段は地下の牢獄につながっている。私たちはそこに囚われているのだ」

「王妃様ともども無事ですか?」

「なんとかな。妻も無事ではあるが、長い牢獄生活と少ない食事のせいで、床に臥せったままじゃ。ここしばらくは、その食事すら満足に取っておらん。どうせ処刑される身じゃと諦めてしまっておるのじゃ」

「大丈夫です!必ず助け出します!」


そう会話しながら、ひたすら階段を下りていく。長い螺旋状の階段。底は真っ暗だ。護は面倒くさくなって、螺旋階段から飛び降りて、底にまっさかさまに落ちていった。しばし落ちること、いきなり足にがくんと衝撃が走る。


「い、痛ぁ・・・・・・。暗くて地面がわからなかったから、着地ミスしちゃった」


足をさすりながら、周りを見渡す。すると、一本の火のついた松明の横にでかでかとした扉があるのに気がついた。


「ここか」


護は扉に近づくと、開けようとした。しかし、手を触れた瞬間押すのをやめる。


「うっわっー、やっぱり護衛のモンスターがいるみたい。感じとしては、オウガデーモンと違う気配だけど、そこそこのモンスターがいるな。しかも、うじゃうじゃ。どうするかな・・・・・・」


しばし考える。あまり派手なことはできない。最初扉ごと吹き飛ばして、敵を殲滅してやろうかとも思ったが、それでは、目立ちすぎる。しょうがなく、そっとだけ、扉を開けた。中をのぞき見る。


「ふーん。見張りは、ゴブリンキングか。数は・・・・・・、15体。うーん。やっぱり先に倒しておいたほうがいいよね。もし先にレバスを相手にしてたら、その瞬間王様達に危害が及ぶかも。よし、王様聞こえますか?」

「うむ、はっきりと聞こえるぞ」

「では、すみませんが、敵を殲滅しますので、しばらくの間耳を閉じていてください。王妃様にも聞こえないようにしてください」

「あいわかった」


そう言うと、ゆっくり静かに呪文詠唱に入った。


「我、司るは、闇。無限の漆黒の中、彼の者は永遠の終焉を与えん。今、我対するものたちに、永遠と静寂なる眠りを授ける。さあ、永久に眠るがいい。漆黒の歌声」


護は、風に乗せて歌うような言葉を発した。その言葉は牢獄の通路に充満する。ゴブリンキング達の体がぐらつきゆっくりと倒れていく。すべてのゴブリンキングが倒れたのを見計らって中に潜入した。牢獄を一つ一つ見ていく。すると、ひとつの牢獄にぼんやりと人影が見えた。さらに歩み寄る。


「ラゼル国の王、レイン様とその王妃、サマンサ様ですか?」

「いかにも。そなたが、先ほどから語りかけておった、霞と助けに来たという護というものか?」

「はい、レイン王。お初にお目にかかります。風神護と申します。この度、王様方の処刑話を聞きつけ、霞様と救出に来ました。遅くなって申し訳ありません」

「いや、それはよい。もはや、我らは助からん身だと覚悟しておった。こうして、そなたが来てくれたことにより、一筋の希望が見えたぞ。しかし、霞はいずこにおる?」

「はい、現在、霞様は、町にてお休み中です。本来救出は、朝行うことにしておりましたので。しかし、王様方の身を案じ、私目が先に様子を見に参りました。ご無事で何よりです」

「そうか、霞が来てくれたか・・・・・・。あの時逃がした時は、無事に逃げ延びれるか心配しておったが、よかった・・・・・・」

「積もる話は後にしましょう。今、開錠します」


そういうと、護は、ショートソードを抜くと、架かっている鍵に突き刺した。しかし、その時。


「おわ!」


護は、思いっきり吹っ飛んだ。後ろの牢獄に体がぶち当たる。


「痛ぁー。なんだよ、いきなり」


背中をさすりながら、もう一度鍵をよく見る。今度は軽く叩いてみた。バチッという音とともに手がはじかれる。


「あらー、ただの鍵だと思ったら、しっかり、呪文ロックかかってるじゃないの。これじゃあ、術者倒さなきゃだめだなぁ」

「大丈夫か?護とやら」

「ええ、大丈夫です。それより、この鍵を何とかしないと。かなり複雑な呪文によるロックが架かっています。開錠するには、相当強力な魔法で吹き飛ばすか、術者を倒すしかありません。現状で、前者の方法は好ましいとは言えませんね。今私は、隠密行動で動いています。もし、度派手な魔法を使えば、モンスターともどもレバスにばれて、城からの脱出が難しくなります。やはり、レバスを倒すしかないでしょう」

「そうか、しかし、倒せるのか?レバスは相当な実力者じゃぞ。我が精鋭部隊も歯が立たなかったぐらいじゃからな。あっという間に国を乗っ取られたのじゃ」

「ええ、それは、わかっています。でも、倒さないと、王様方を救出できません。なんとか、やってみます」

「護とやら、無理をするでない。レバスは危険な存在じゃ。我らを救うためとはいえ、そなたや、やっとの思いで逃がした霞が死んでしまったら、意味がない。我らのことは案ずるな。もとより、死ぬ覚悟はできておる。そなたらは、まだ若い。これからの未来を我らは霞に託したのじゃぞ」

「いえ、必ず助け出します。王様、私を信じてください。霞様にも危害が及ぶような真似はいたしません。信頼と安心を美学としている私の言葉を信じてください。私が約束するといったことは必ず守りますから」

「わかっておる。単身我らの身を案じ助けに来てくれたそなたの事は、それだけで、信頼に値する。しかし、そなたまだ子供ではないか。まだ人生は長い。早々死に行くようなことだけはしてくれまいな。もし、レバスとやりあって、かなわぬと思ったら、すぐに我らのことは放って置いて逃げるのじゃ」

「なにをおっしゃいます!私は、決して逃げません。それに、王様方が亡くなられたら、霞様が悲しみます。私は霞様の悲しむ姿は見たくありません・・・・・・」

「・・・・・・」

「全身全霊を込めて救い出して見せます!それまでの間、町の復旧作業などの事など考えていてください。町は相当荒れていましたから、早急に対策を立てなければなりませんよ?」

「そうか」

「ええ!レイン様の政治的手腕は相当なものと聞き及んでいますよ。ですから、王様は、レバスのことは私たちに任せ、国の復旧に力をいれてください。仕事は山ほどありますよ」

「うむ。なにか、そなたの言葉を聴いておったら元気が出てきたの。もう一度我が愛すべき民たちに会いたくなってきたぞ」

「その調子です、王様!必ず助かると信じて、その先のことを考えてください」

「うむ」

「あ、あと、こちらお渡ししておきます。王妃様に飲ませてあげてください。元気が出てくるお薬です。それと非常食持ってまいりましたので、こちらをお召し上がりくださいませ」

「いろいろすまぬな」

「いえ、これが仕事ですから。後、一応念のために、この牢獄に結界を張っておきます。そうすれば、私が死なない限り、王様方の身は保障されるでしょう」

「ありがとう」


そして、護は、結界を張った。


「これで、何人も王様方に手を出すことはできません。安心してお休みください。朝、今一度助けに参りますので。そのときは霞様もご一緒ですよ」

「おお、そうか。霞か・・・・・・。懐かしいな。もう二度と会うことは叶わぬと思っておったが、早く会いたいのぅ」

「とりあえず、明日を楽しみにしていてください。それでは、私はこれで一旦引き上げます。次は牢獄ではなく、玉座の間にてお会いいたしましょう。約束です」

「うむ。約束じゃ」

「それでは、しっかりと、お休みになり、助かった後の国の復旧作業のこと考えておいてくださいね」

「あいわかった」

「では、失礼します」

「うむ」


そういうと、護は牢獄を後にし、城から出て霞の泊まっている家へと向かい、何食わぬ顔をして眠りについた。



その夜、護は夢を見た。ある不気味な男がニヤつきながら立っている。


「くくく、おまえが、城に潜入したことぐらいお見通しだ。護とか言ったな。お前ごときが私に敵うとでも思っているのか?うぬぼれも体外にするがいい、小僧」

「誰だ!」

「ははは、知っているだろう?ふっ、余興ぐらいにはなるかな、付き合ってやろう。明日楽しみにしていてやる。そうだな単身乗り込んできたことに敬意を表し、私のいるところまでモンスター共は引き上げさせてやろう。モンスターどもとやりあって、体力がなくなってしまっては、退屈しのぎにもならんからな」

「何を言っているんだ!?お前は誰だ!」

「私を失望させるなよ、小僧。そして分際をわきまえるがいい」

「答えろ!」

「くくく、では、明日会おう。小僧、私からのもうひとつの贈り物だ」


そういうと、男は護に向かって手をかざした。手の前に氷の刃がいくつも出現する。そして、その男は手を振りかざした。いっせいに護に向かって氷の刃が襲い掛かる。そのひとつの刃が護の頭に突き刺さった。護は、そのままどさっと倒れ、意識が遠のく。その中笑い声だけが響いていた。

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