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リゼルドの指示

「……ルアードは最早反乱軍の根城と化しており、襲撃から逃れた者も数えるほどしかおりません。反乱がここで終わるとは思えず、周辺都市も戦々恐々としており……」


 サダン攻略のために落とした都市の一つだった。邪魔が入らぬよう、周りも適当に弱らせておく必要があったのだ。周りからの救援があるかどうかで、攻略の難易度は大きく変わる。主目的のサダンを孤立無援にするためには、周辺都市を落としておく必要があった。


 ルアードはそのために、最初期に攻め滅ぼした都市だった。そのはずだった。


「……ルアードか。あそこは確か、殲滅を命じたと思うんだけど」

「実際の指揮を執ったのはルドガー様です。どうも密かに助命、援助して拠点構築をしていたようです」

「えーそんなことしてたんだあいつ。気づかなかったなあ」


 蜂起した兵たちにより、上層部が攻撃を受けた。ベルナーは無傷で逃れたが、将校が何名か重傷を負った。配下の兵も多くが裏切り、取り込まれた。抵抗した者は殺された。


 指揮系統はすでに破綻している。こうなっては、最早北部の戦線を維持することは叶わないだろう。


「ああ~とうとうやられてしまいましたか……」


 一緒に報告を聞いたサウスロイは、気の抜けた声で茶々を入れた。そんな彼には目もくれず、伝令は青い顔で口早に報告を述べる。


「蜂起を先導したのは、まず間違いなくルドガー殿でございます。目撃証言によれば、配下が何名も付き従い、援護していたとのこと。ベルナー様はどうにか逃れたところで重傷のラーデン殿を見つけ、ご一緒に退避なさいました」

「……そっか、そっか。姿を見せないと思ったら……上手に戦線離脱したなあ、あいつ」


 そこまで聞いたリゼルドは、機嫌良さげに喉を鳴らした。


「負傷したこと、更に時間帯を鑑みるに、ルドガー殿と接触したものと考えられますが……尋問致しましょうか」

「……良いよ、ひとまず安静にさせて手当してやりな。必要な費用はいくらでも使っていいから。医師団の薬でも医者でも、入用なら何でも買うと良いよ。ただし。歩けるようになったら真っ先に僕のところに来いと言っておけ。

 それに、ローゼだ。誰か男を頼って聖都から逃げ出すと思うから、適当に捕まえておいて。レイノス様に怒られない程度にね」


 そこまで言ってから、リゼルドは気だるげにひとつ欠伸をし、首を傾げた。


「で、留守番だったベルナーは今どうしてる?」

「部下が庇ったため軽傷で、小隊とともに一先ず逃れましたが……今回の事態の責任を取って、自主的に謹慎したようです。当主様の処断を求めております」

「その必要はないよ。その内呼び寄せるから、体は鈍らせるなって伝えておいて」


 報告と指示を一通り終え、伝令や侍従が出て行ってから、リゼルドは虚空を見つめて沈黙した。そんな彼に顔面蒼白の侍従が、おずおずと声をかける。


「当主様……お怒りは無理もないですが、どうか冷静に……」

「……怒る?まさか、どこにそんな理由がある?」


 緩んだ瞳が青く色を増す。少女のような美貌が微笑む。長い黒髪が踊る。持ち主の喜びを代弁するように。


「僕はずっとこれを待っていた」


 万感の籠もる声だった。凍てつくような凄みがあった。なまじ顔貌が美しいだけに壮絶だった。伝令や侍従たちはただ息を呑み、立ちすくんだ。


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