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戸惑い

 堂々巡りで一向に結論が出ず、日が落ちる前に誰かがやって来た。聞き覚えのある足音に顔を上げた途端、扉が開かれる。


「シノレ!今大丈夫ですか?」


 ユミルは着替えて、湯浴みもしたようだ。その服装も足取りも、まるで惨劇などなかったかのような清潔さと端正さだった。


「……ユミル様。大丈夫でしたか?」

「はい、おかげで傷一つありませんよ!」


 ユミルは朗らかに笑った。その内心までは読み取れないものの、あの惨事の直後にこんな顔ができるとは、かなりの大物なのかもしれない。そしてその手には、数種類の食べ物を乗せた盆がある。


「こちらはお夕食です!食事抜きにされているかもと思って、こっそり持ってきちゃいました!!」


「……どうして」


「ジレス様とのことは聞いています。確かに聖者様の従者として、相応しい振る舞いではなかったかも知れません。でもそれをおいて、僕個人としては非常に嬉しく思いました。だから僕もほぼ同罪でしょう!だから、一緒に食べましょう!」


 いや、「だから」の後が分からない。それとこれがどう繋がるのだ。混乱するシノレの眼の前で、ユミルは勢いよく盆を置く。


「シノレ、とにかく食べましょう。さっきからずっと、酷い顔色ですよ」


 ぼんやり座っていたシノレを引っ張って、食事の前へ連れて行く。


 その時、新たな気配が部屋の外から近づいてきた。「失礼します」と、扉からひょっこりと顔を出したのはシオンだった。もう会議は終わったのだろうか。


「シノレ君、ちょっと……おや、ユミル様もおいででしたか」

「あ、シオン!来てくれたんですか!」

「勿論です、ユミル様。シノレ君に夕食をお持ちしました」


「あ、僕もです!これで三人前ですね!」

「おや、考えることは同じですね。それでは丁度いいですし、一緒に食べましょうか」


 どうせ今、城内は食事会をするどころではない。シノレの部屋の卓を囲むようにして、食事が始まった。


「全く、息が詰まりました。レイグ様が怒っていらしたの何の……あの方は、ああいう時がおっかないんですよねえ。また一波乱来る気がします」


「そうなんですか!?知りませんでした!前に聖都でお見かけした時より怒ってましたか?」


「まさか、あの時とは比較になりませんよ!……ところでシノレ君、食が進みませんかか?ジレス様は未だに立腹しておられますけれど、暫くすれば冷静になることでしょう。シノレ君も辛いと思いますが、もう少し我慢して下さい」


「…………」


 どんな顔を向けるべきかも分からない。元聖者の護衛騎士であったというシオンに、今のシノレがどう向き合えるというのだろう。


「シノレ君?どうしました?」

 まだ半分ほど呆然としたままで、シノレは言った。シオンに聞くというより独り言に近かった。


「…………分からないんです。聖者様はどうして、あんなことをしたのですか」

 そうだ。結局それが分からず、途方に暮れているのだ。




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