黒頭巾たち
黒頭巾の子どもたちとゼファイの会話。
やはり子どもたちには何か秘密があるようです。
結局二人は広場に戻り、また歌うことにした。やっとそこに辿り着いたゼファイはそれに向けて、怒鳴りつけるように声を張り上げた。
「おいこらクソガキども!!!!!馴染みすぎだろ何やってんだ!!!!」
それにくるりと同時に振り返り、黒頭巾たちはすぐに言い返した。
「おそーい」
「おとなっていいかげーん」
「十日も待ちぼうけさせられるなんてねー」
「仕方ねーだろこっちはこっちで段取り変わったり色々あんだよ!!!」
喋りながら、端の方へ近づいていく。その先には、石造りのベンチがあった。黒頭巾たちはその周りをくるくると回ってから、すとんと座る。ずっと手は繋がれたままだ。組み合わせた指を上に向けて、左右対称の姿勢で座った彼らに、
「そんで君等は、何してたんだ?一応聞くが、禁秘の漏洩なぞしてないだろうな」
それに子どもたちは、黒頭巾の下から目を交わし合う。その縁から髪の毛が零れる。それは濡れたような艷やかな黒であるが、毛先からの僅かな部分だけが青く染まっていた。
「約束どおり、しかたなく」
「だれかさんが来ないからーこの村にご厄介になってたのー」
「その代わりー一曲歌ってって言われたのー」
「魔除けのうた、妖女殺しの歌」
「子どもが歌うと、良いんだって」
数ある歌の中でも妖女殺しの歌は、無垢な子どもが歌うことで、最大の効力を発揮すると信じられている。幼い子どもは死にやすい。だからそれを覚えさせ、歌わせることは一つの節目でもある。地域によっては「魂の羽化」と呼ばれる習慣だった。
幼さの残る高い声は区別しづらい。よく似た声で、二人は交互に言葉を発する。それが彼らの常態だった。
「ふ、ふふ、ふは」
「ばかみたーい!」
二人は顔を合わせ、笑った。明るいが無邪気ではない声で笑った。
その間にも十本の華奢な指は絶えず動き回り、互いに絡めては解き、遊び合う。その様は、見えない楽器を奏でているようにも見えた。
その指先にはターコイズを思わせる青い爪が、貝殻のように揃っている。蛍光のような不思議な光沢を持つそれは、毛先を染める青と全く同じ色だった。
それがお洒落でも何でも無い生まれつきだということは、ゼファイもよく知るところだ。
「秘術の披露?するわけない」
「棚上げずいずい、かっこわるい」
「待たせておいて、あやまれないの?」
「……遅れたのは謝罪する。だからさっさと進めてくれ」
そう言うと、黒頭巾たちは案外あっさり態度を軟化させた。
「よかろう」
「許してやろーう」
この感じからして、十日間の余白はそう悪いものでもなかったらしい。もしも不愉快なものであったなら、この程度では追及は終わらなかっただろう。その点では、ここの村人たちに感謝すべきなのだろう。




