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虚と現  作者: 沙羅双樹
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王太子_20

かの侯爵家が残してくれた最後の忠誠といえる閻魔帳のおかげで

現王家の万障といえる、母や母の実家を押さえつけれただけでなく

母や母の実家だけでは賄えないかの侯爵家の穴を

閻魔帳に乗った貴族たちに賄わせる


多分、5年もしないうちに

閻魔帳に乗っている貴族の半分以上が爵位を返すことになるだろう


爵位を返上した貴族が持つ領地の中で

国にとって有益な物は残すが、ほとんどの領地を放棄することになる


かの侯爵家から見捨てられた配下や分家の領地もそうなるだろう


この国は長い安寧の元、手を広げすぎた


しかも、伸ばしたのは己の手ではなく

忠誠という形のないものを担保にした借り物の手


その上、形がないことをいいことに

その忠誠を踏みつけ続けたのだから、情けないことこの上ない



領地を閉じれば、もちろん、そこに生きる者たちは苦難に晒されるだろう


彼らを守るために、国を治める者として責任を果たす必要がある

だが、彼らを含め、国民たちにも今までと同じ日常を約束することはできない


国だけでなく、国民たちも長き時間の中

責務意識もなく、庇護を甘受する意識が芽生えている


貴族が魔物討伐をしない、などと嫌悪し

前線で好き勝手に暴れている曾祖父を持ち上げる風潮でも

それは明らかだ



国の守護者と言えたかの侯爵家を失った今

国民たちは思い知るだろう


彼らが名も知らぬ英雄(生贄)たちのおかげで

彼らがただ己の生活のためだけに邁進し、生きていけるその事実を


今まで当然あったはずのその安寧に満ちた日々は

すでに消えた夢でしかない



それでも、今王家が持つ力、そして、王家が揮える貴族たちの力でもって

できる限りの庇護をしていく


そして、それこそが正しい国の在り方だと感じる



かの侯爵家を奴隷のように踏み躙り、生贄にしたのは

王家だけでなく、貴族、そして、国民たちもだ


無知は罪


今こそ、我らは罪への償いの道を歩み始めた、と言える。

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