のんびり朝ごはん
「あらあら……姉様、もう寝ちゃったみたいですね」
「ネイのこと呼んでくるわね」
意識が闇に落ちる前にそんな声が聞こえた気がする。誰かに優しく持ち上げられてベッドに行ったような。
「……おやすみなさい、姉様。大好きですよ……なんちゃって……ふふっ」
「ミア様~?朝ですよ~?」
朝ごはんの用意もできたし、荷物の準備も完璧。いつもより一人分多めの朝ごはん。ミア様の周りが最近賑やかで嬉しい。
「んぅ……起きてるぅ」
「起きてください、ミア様?お二人とも既に起きられてますよ」
「起きてるってばぁ……!すぅ……」
やはり起きてるようで起きていない。意識がぼんやりとしているんだろう。彼女の肩を軽く揺すってみる。
「……んぇ、ネイ……?」
「はい。ネイですよ」
「……朝ぁ?」
「朝ですよ」
段々と彼女の目が開いてくる。まつ毛長いし顔が良すぎる。お化粧をしないでこれ……流石の我がお嬢様だ。
「……着替えなきゃ」
「お手伝いします」
「あら、ミア。起きたのね」
「おはようございます。姉様」
二人とも既によそ行きのお洋服に身を包んでいる。そして鼻をくすぐるおいしそうな匂い。
「ミアがなかなか起きてこないからお腹すきすぎちゃったわ」
「ご、ごめん……」
と、タイミング良くお腹の鳴る音が聞こえる。もちろん彼女たちではなく私のお腹から。
「あっ……」
「ふふっ」
皆に聞かれた……恥ずかしい。二人とも、ネイもオーバもくすくすっと笑っている。
「早く、食べましょうか」
「うぅ……」
「「「いただきます」」」
サクッと音を立てて一口。焼きたてのパン、とてもおいしい。ネイのおかげですっかりパンの朝ごはんに慣れてしまった。
「いつもながら、おいしいわね」
「恐れ入ります」
メインディッシュのベーコンエッグもおいしい。なんというか王道な感じで好き。今度はサクサクのパンにジャムをたっぷり。レイがお手製で仕込んでくれたいちごジャム。私のお気に入りの一つ。
「ん~っ……!おいしい……!」
「幸せそうに食べるわねぇ」
「いつも、こうなんです」
「作りがいがありそうね」
「それはもう」
「ん……?」
ほっぺたと鼻の先をちょんちょんと拭われる。
「姉様、ジャムついてましたよ」
「あ、恥ずかし……ありがとレイ」
「いえいえ。私のジャムを幸せそうに食べてる姉様を見て幸せです!」
「そ、そう?」
レイが喜んでくれてるならいっか。
「ごちそうさまでした」
今日は味わって食べようと思ってたのに朝ごはんをあっという間に食べきってしまっていた。おいしいから仕方ないとはいえ毎回毎回もっと味わって食べればよかったと思ってる私はバカなのかもしれない。
「お茶です。ミア様」
「ありがと」
お茶で一息をついたところで、少し休んだらみんなと集合の時間だ。
「楽しみね、温泉」
「ロベリアも元気を取り戻してくれるといいけどねぇ」
「そうね。最近あんまり話せてなかったし」
三人でうんうんと頷きながら何をしようか考えていたら後ろから気配がした。
「あら、そんなこと思ってたんですの?」
「ろ、ロベリア⁉」
私の頬を後ろからこねこねしてくるロベリア。いつの間にこの部屋に。
「ま、まだ集合時間じゃないわよ?」
「集合時間前じゃ来ちゃいけませんの?ふふっ」
イタズラっぽく微笑むロベリア。
「そんなことはないけど……」
「……どうやら心配をかけてしまっていたみたいですわね」
そりゃ心配する。数少ない私のお友達なんだし。あと、いい加減にそろそろ頬をこねるのをやめてほしい。
「でも問題はきっと解決しますから……心配はいりませんわ」
「ほんと……?困ったら言ってよ?」
「ええ。もちろん」
「ロベリア様、お茶をご用意しました」
「ありがとう」
私の頬こねをやめてソファーに座ってお茶を優雅に飲みだす。思ったより元気そうでよかった。ちょっと前まで無理してそうな感じだったしちょっとだけ安心かも。
「元気そうでよかったわ」
「貴女まで……まぁ、心配かけたのは謝りますわね」
「いいのよ。皆も喜ぶわ」
簡単にティータイムを楽しんでいるところで時間が来たので集合場所に決めていた玄関へ降りていく。
「あ、ノア。エトラ!」
「お、おはようございます」
「おはようっ!……って皆ミアたちの部屋にいたのね」
「な、成り行きでね……」
すぐにみんな揃ってしまったから早々と馬車に乗り込んで温泉地へ向かう。
「出発っ!」
「かしこまりました」
今日はエイリーンの従者とネイが一緒に操縦してくれるみたいで安心だ。ゆっくりと発進する馬車に揺られながらそう思う。




