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真実

未世麗さんは、私が理解するまで何度も噛み砕き繰り返し説明してくれた。


私は凶妖きょうのけという妖怪に、お腹を噛まれ重症を負ったこと。


そして、その凶妖は私を食べようとしていたと言う事。


凶妖は自分の好んだ“肉”にマーキングをつけて、なにも邪魔するものがいなければその“肉”を食べる事。


私は未世麗さんと愛芽李と他の団員が凶妖を封印するために動いていた時に、自力で意識が戻りあの女の子を助けた。


そして、今までに無い速さで脚が動いたのは、凶妖の妖力が私の体を流れ、通常の人間よりも早い動きが出来た事。


けど、その妖力は噛まれた場所によって使い方が異なると未世麗さんは言っていた。


私が噛まれたのはお腹で、そこは他の部位の人たちとは違って体のどこかの動きを止める事で力を発揮する事が出来る。


その事を自我穿通(じがせんつう)と未世麗さんたちは呼んでいた。


自我穿通は、自分の自我を高めて妖力を上手く使いこなすためにあるものらしく、私は無意識にあの女の子を助ける時に使っていた。


通常なら食べられるか、救出され手当をされるかだけれど、私はあの時自我穿通を長い事知らず知らずのうちにしていて、あの時の約束を忘れかけていた。


そして、約束したパパとママの名前を失った。


そう未世麗さんは謝りながら教えてくれた。

未世麗さんはなにも悪くないのに、いつも謝って静かに涙を流している。


私は帰らないといけない場所を知ってるけれど、まだ住所も詳しい地名も思い出せず数週間過ごしてしまっていた。


けど…、帰っても私の大好きなパパとママはもういない。

だから私は、


「ここで働かせてください!」


と、慰撫団いぶだんかしらの未世麗さんに頼んだ。


未世麗「…いいけど、絢愛さんはどんな未来を願ってる?」


未来…。


絢愛「私は大好きな人たちが笑顔いっぱいで暮らしていける世界になってほしいと思ってます!

私は体を動かすくらいしか能がないんです。だから、凶妖を封印する手伝いをさせてください!」


未世麗「絢愛さんは本当にいいの?凶妖と戦うと言うことは記憶が零れ落ちていくの。

ここで出会った仲間も、昔知り合った人たちの大切な思い出も失われていくの。

貴方のようにお腹を噛まれた人は、災獣園で保護した凶妖のお世話をしたり、救護班になってもらうようにしている。

誰でも失いたくない記憶があるはずだから。

だから無理して凶妖と戦う選択肢を選ぶ事は無いわ。」


絢愛「…私はもう失ってしまったようなので、無理な選択を選んでいません!

きっと、私と同じお腹を噛まれた人たちも戦いたいって思ってる人いると思うんです。

その人たちの思いも全て私が背負って、この悲しみの連鎖を止めたいんです!」


未世麗「…じゃあ、少し考える期間を絢愛さんに与えるわ。」


と言って、たくさんのノートと新幹線のチケットを渡される。


未世麗「道府県参りは本当は愛芽李が行く予定だったのだけれど、私がこんな風になってしまったから愛芽李しか頼れる人がいないの。

だから、この道府県参りで臓方はつがた腹方はらがたに会ってたくさん慰撫団の事を学んできて。

この団員たちの思いを背負って、自分の記憶を代償に動ける覚悟をこの道府県参りで固めてきて。」


絢愛「分かりました!」


愛芽李「…いいの?」


愛芽李が心配そうな顔で私を見る。


絢愛「大丈夫!私が出来る事を私がやらなかったら誰がやるの?」


愛芽李「…分かった。」


愛芽李が未世麗さんから手を離し、誰かを呼びに行きすぐに戻ってきた。


「よ!ハツラツ子!」


絢愛「おはようございます!」


愛芽李が連れてきたのは、さっきまで寝ていたのか寝癖で長いロングヘアがぐちゃぐちゃで半裸の嘉田苛かたいら げんさん。


さっき未世麗さんが言っていた、臓方という5つの地域を統括している人をサポートをしている腹方の1人。


愛芽李「眩さん、道府県参りは絢愛とお願いします。」


眩「…いいのか?未世麗さん。」


未世麗「この子なら大丈夫。」


未世麗さんがいつも以上に優しい声でそう言ってくれた。


眩「それじゃ、ささっと荷物をまとめて出発だ!」


絢愛「はい!」


眩さんと愛芽李に案内された衣服室で服を貸してもらう。

全部着物なので、愛芽李に着付けを教えてもらう。


…あれ、なんかやった事ある気がする。


と、ふと思ったけれどしっかり思い出せなかった。


事故にあった時のコートを、団員さんが洗って直してくれたらしく綺麗になって戻ってきた。

そのコートを羽織り、眩さんと一緒にまずは沖縄に向かう事になった。



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