泣き声
いたぁ…い。
頭とお腹がとても痛くて、そこに意識が集中して目が霞む。
パチパチと何かが燃える音。
鉄が強い風に負ける不気味な音。
グラグラと揺れる大きな鉄の塊の音。
微かに聞こえる女の子1人の泣きわめく声。
私は目をしっかり開ける。
「……っ!」
飛行機に乗っていたはずの私は草むらに投げ出されていた。
私は状況を整理しようと体を起こすが、お腹から出血を感じる。
「痛いぃ…。パパ…、ママ…?」
私は少し遠くからゴウゥンゴウゥンと聞こえる鉄が風になびく音に近づくために歩き出す。
コートに隠れた白いニットワンピースのお腹部分は割かれていて、そこからドクドクと血が流れている。
でも、私は動けてる。
パパとママは動けないのかもしれないから、私が助けてあげないと。
音を辿り、その場が見えると同時に私は瞬きするのを忘れ、その光景を受け入れられなかった。
飛行機の機体がバラバラになっていて、そこら中に乗客らしき人の手や足が変な方向に曲がっている人々。
「ぇ…ぱ…ぁ、…ま…」
私はパニックになり言葉を失う。
そこからは体が勝手に動き出す。
私はお腹の痛みを忘れて、必死にパパとママを探す。
座っていた座席付近に向かい2人を探した。
「パパ…!ママ…!」
私は必死で何も考え無しに機体の重い破片を退けていく。
いない、いないよ。
どこにいるの。
私は瞬きと呼吸を忘れ、必死に2人を呼び続けながら人であったものを瓦礫から出してはまた探す。
すると瓦礫の下から、
ママがパパに今年のクリスマスプレゼントであげていた手編みニット着た頭の潰れた人がいて、その隣には下半身が飛行機の残骸で潰れているママの半分があった。
「いやああああぁぁぁ!!!」
私は1人泣き叫ぶ。
山奥で誰も助けに来てる様子もない。
でも誰か…、誰か助けて。
パパとママ、みんなを助けて…!
私は肺が酸素を求めるのに気付き、呼吸をする。
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…!」
「…ぇぇぇぇええん。」
私が呼吸を正している時に、小さい女の子の泣き声が聞こえる。
呼吸を正しながら、周りを見るが誰もピクリとも動かない。
動くのは強風に揺れる機体の破片のみ。
私は2人の手を握り、謝る。
パパママ、ごめんなさい。
泣いてる子がいるの。
その子を安心させたら必ず戻ってくるから。
冷たくなった2人の手をそっと離して、私は女の子の声を辿る。
あの時、また瞬きと呼吸を忘れ必死にその子を探した。
無心でただただ女の子の声を辿る。
だんだんと近づく女の子の泣き声。
女の子は機体の一番後ろの尾っぽ部分にいた。
1人泥だらけで座って泣いている。
その後ろには強い風で揺れる機体の鉄板。
「おーい!大丈夫ー!?」
私は出来るだけ大きい声でその子に声をかけながら駆け寄る。
その声に気づいた女の子がこっちを見た。
大丈夫、私も怖かった。
けどもう1人じゃないよ。
私は笑顔を作り、その子に近寄る。
と、その時とても力強い向かい風が私と女の子、そして鉄板を煽りバランスを崩す。
やめて…!これ以上、人が死んで欲しくない!
私は全身全霊で女の子に向かい走る。
そのスピードは今までの大会で出たことがないほど。
どんどん景色が後ろに吹っ飛んでいく。
女の子が私に手を伸ばす。
鉄板があと30㎝で女の子の手に届きそう。
大丈夫!間に合う!今の私なら間に合う!
だって __と一緒に遊んで鍛えた体だもん!
あれ…?名前が出てこない。
そう思い返した途端、私の体は女の子の体を拾い上げ、大空中3回転をして大木にぶつかりずり落ちる。
「お…お、おね…ちゃ…ん…?」
私はぶつかった衝撃で視界がぼやけるが、なんとなくわかる女の子の目をしっかり見て笑い、
「大丈夫!私が来たからもう安心!」
ドクドクと血が流れているけれど、この子は助けられた。
やっぱり__と一緒に陸上してきた甲斐がある!
あれ…、誰だろう。
一緒に陸上してきた子の名前も、一緒に遊んだ子の名前も思い出せない。
「お、ねぇちゃん。ありがと…。」
女の子が涙を拭き、泣くのを我慢しながらお礼を言ってくれる。
「うん!ちょっとここで救助来るまで待ってよう!」
「…うん。」
私は何か用事があったはずなのに、思い出せずそのまま女の子を抱きながら眠りに入ってしまった。




