ネーロ侵攻②
ライト王国軍は、この時点で、帝国の約半分を制圧していた為、追いつめられたネーロ軍の反撃も熾烈を極めていた。
この要衝ザールラント攻防こそ、天下分け目の決戦地となるのである。
ユウキが、ザールラントを望む高台に立って暫くすると、ネーロ軍の戦闘部隊が、イナゴの大群の如く押し寄せて来た。
先頭に居るのはベガ大佐、この街の指揮官である。そのスーツは、黒のボディに銀の蜘蛛の巣の模様があって、胸の中央には黒と黄色の縞模様の蜘蛛が凄んでいた。細身で長身の彼は背中に二本の刀を背負っていた。
彼の軍団は、アンドロイドが主力の為、スピードで人間に勝る最強軍団である。
ユウキは、彼らを薙ぎ倒しながら、予定通り、軍施設へ接近して破壊行動に入り、数時間でほぼ壊滅させた。そこへ、予定通り、ステラ軍が到着した。
事が簡単すぎて、ユウキが何か違和感を感じていたその時――、地響きと共に大きく地面が盛り上がったかと思うと、無数の巨人ロボットが湧き上がって来たのだ。身長は十五メートル、装甲は厚く、ステラ軍の攻撃を悉く跳ね返した。
次の瞬間、巨人ロボットから放たれたゴムのような物体が、ステラ軍の兵士の戦闘スーツを覆い尽くすと、彼らの戦闘服は制御不能となり、味方を攻撃しだしたのである。
それは、ネーロ軍の新兵器、奴隷化スーツと呼ばれるものだった。
ステラ軍は味方を攻撃する事も出来ず、逃げるしか無かった。
「ステラ、一旦引こう!」
ユウキがステラを促して、軍と共に数十キロ後退し、湖の畔に陣を張る頃には、軍の勢力は半数近くになっており、残りは人質となっていた。
簡単な食事を済ますと、十剣士始め主だった者が集まり、対策を練った。
「僕が、最初からあの巨人ロボットの存在に気付いていれば……」
ユウキが申し訳なさそうに、肩を落とした。
「ユウキが責任を感じる事はありません。敵も必死です。これからも、予想もしない角度から仕掛けて来るでしょう。こちらの次の一手が大事です!」
レグルスは、厳しい顔で皆を見回した。
「問題は、味方の兵士を殺さずに、どうやってあのスーツに取り付いた物体を仕留めるかですね」
サルガスが思案顔で呟いた。
「そうね、あの厚い装甲の巨人ロボットも手強いわ。ユウキ、何かいい案はない?」
「コスモによると、あの不思議な物体は、奴隷化スーツと呼ばれているようだ。僕のスーツの音波砲を調整して使えば、味方を殺さずに排除できると思う。但し、味方のスーツまで破壊してしまう可能性があるから、無傷と言う訳にはいかないかも知れない」
「命が救えるなら、やむを得ないでしょうね。巨人ロボットの方だけど、ドラゴン隊形ならパワーもあるし破壊出来ないかしら?」
ステラが、レグルスの方に視線を向けた。
「そうか、それがありましたね。ユウキが開発してくれたあの隊形なら、兵士の人数倍の力が出せますから、あの巨人の装甲を破壊出来るでしょう。
ドラゴン隊形は三百人で行い、あとの二百人はその援護と味方の兵士の救出に回しましょう。ステラ様は両方の状況を見ながら動いて下さい」
レグルスが話を纏めて、皆はその準備に散っていった。
夜明け前、ステラ軍が山を越えようとすると、巨人ロボット軍団が待ち受けていて、総攻撃をかけて来た。
百体のロボットから、巨大なレーザービームが一斉に放たれると、山は紅蓮の炎に包まれた。
「ドラゴン隊形を取れ!」
レグルスの号令で、三百人の兵士が空中で次々と合体してゆくと、巨大なドラゴンが姿を現した。
先頭の頭の部分は十剣士が務め、金属音のような雄叫びを上げたかと思うと、その口から巨大なエネルギー弾を吐き出して、十数体の巨人ロボットを一撃で破壊した。
巨人ロボット達は、空を泳ぐドラゴン目掛けて一斉にレーザービームで応戦したが、
彼らは一糸乱れぬ動きで、無数のレーザービームをかいくぐり、次々と巨人ロボットを倒していった。
一方ユウキは、ロボット軍団の上空を越えて街に近づくと、待っていたかのように、奴隷化スーツ部隊がユウキに襲い掛かって来た。
ユウキは最初、数人にミニ音波砲を打って、奴隷化スーツを破壊する力の調整をした後、一気に巨大音波砲を発射し、奴隷化スーツを吹き飛ばした。
「戦える者は、共に戦え!」
ユウキが叫ぶと、奴隷化スーツから解放されたステラ軍の兵士達は我に返り、次々と戦線に復帰していった。
巨人ロボットから、再び、無数の奴隷化スーツが放たれたが、ステラのスーパー羽衣によって、悉く破壊された。
ステラ軍のドラゴンは、敵のレーザービームを浴びて満身創痍だったが、最後の力を振り絞り、残った巨人ロボットを壊滅させると、兵士達は、ドラゴン隊形を解いて地上に下り立った。




