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「おい!どうなってる!?」


「分かんないよ!こんなの!」


「とにかく囲まれない様に!」



 例の蛮族トリオは、現状で3匹のクロウベアと7匹のモビングモンキーに半方位されている。

 正面にクロウベアを、横から猿が投石で援護をする形だ。

 今も、細剣持ちの女が一歩下がった所にひと呼吸置いて、石が飛んでくる。

 クロウベアに比べたらチリみたいなダメージだが、真価はダメージじゃない。



「あぁもう!ウザったいなぁ!」



 投石を当てられた細剣持ちは、心底苛立った様な声を上げる。

 あの猿の投石は無駄に性能が高いのだ。

 コマンドを組んでいる最中なら高確率でコマンドがキャンセルされるし、ダッシュ中なら高い足止め(スネア)効果もある。

 しかもコマンドを組む隙を上手い事狙うんだよな…

 単体なら苦戦なんてしないが、他の魔物と一緒に居ると厄介極まりない。

 分かっていれば、真っ先に潰す筆頭だ。



「あのクソ猿ぅぅ!」



 まぁ、分かっていなくても苛立てば狙いたくなる奴だ。

 既に何度も猿にコマンドを邪魔されているからか、細剣持ちの女の怒りは有頂天だ。

 なりふり構わずに潰しに行く気だな。



「ペネトレイト!…ふぐっ!」



 しかし悲しいかな、またも投石の餌食だ。

 先程のダッシュ中に足止め(スネア)効果についての話だが…

 別にあれは自発的に走っている時だけじゃない。

 移動系…特に突撃する様な武技・魔技でも足止め(スネア)効果がある。

 ここは一度冷静に、向こうの動きを止めてから接近するべきだったな。

 ま、そうしようとすると再び投石の餌食でもあるんだが…



「おい!てめぇこら待て!」



 しかも勝手に役割を放り出す始末だ。

 仲間から罵倒されたってしょうがない失態である。

 だって彼女の役割は、攻撃力の高いクロウベアの手数を減らす事だったんだから。

 それがかく乱や遊撃の目的でもある訳だし。


 現状、両手斧持ちが壁役として攻撃を引き受けていたが、あの熊は攻撃力が異常だ。

 それが三体、普通なら耐えられる訳もなく…

 細剣持ちが主に相手の妨害をする形で支援を行う事で負担を減らし、なんとか耐えていた状況だった。

 弓持ち?…ダメージソースじゃないか?

 遠くからチクチクと射って、それだけ。

 ま、それでもクロウベア三匹だけなら苦戦程度で倒せる連携だ。


 だからこそ、猿に邪魔させる形で参戦させたんだけどな。

 あ…俺じゃなくてエルフが…な。

 つか俺は別に効率良く嗾けろとは言ってないんだけどなぁ。

 ただ…『逃げられない様に包囲する形で魔物を擦り付けろ』と言っただけだ。



(ファルマ、ここも危険だ、下がろう)


(あぁ、分かってる)



 他のエルフと連携を取っているアルベルトの指示で、もう少し彼らとは距離を離す。

 ちなみに現在、警戒探索を使って魔物の接近は確認している状態だ。

 かなり距離があるが、ギリギリ届く範囲には居るからな。

 あまり近くに居ると、魔物をこっちに引き寄せる事にもなりかねないし。

 という訳で彼らと魔物達に気が付かれない様に、そっと距離を離していく。



「あんただけでもいけるでしょ!」


「馬鹿!無理だ!」



 しかし遠くなると、今度は話している内容や戦闘の詳細が分からんな…

 叫んでいるのが聞こえる距離もギリギリだ。

 もう少し離れたら聞こえなくなりそうだ。



「駄目だ!持たないぞこれ!」


「退路はある!ずらかるぞ!」



 とか思っていたら、そろそろ撤退か?

 ずっと後ろで弓を引くだけだった奴が、撤退の指示を出した。

 …まさかあれで退路を確保していたってのか?



(丁度良いな)


(あぁ、そうだな…)



 いや、驚く事でもないか。

 こいつら…探索のアビリティ持ちは居ないんだろう。

 何故気がつかないか疑問ではあったのだが…そう言う事か?

 となると…採取や鑑定なんかのコマンドは別のアビリティのコマンドって事になるが…

 他でこれらのコマンドが取れるアビリティって何だろうな?


 とか考えたけど、どっちも無くて良いのか?

 採取コマンドじゃなくても採取自体は可能だし、鑑定だって町の鑑定屋NPCに任せれば良い。

 それに一つ正体が分かればほかのも一括で分かるってんだから、鑑定料なんて端金みたいなもんだ。

 だから別に無くても困るわけじゃないんだよな。


 って今はそんな事は関係無さ過ぎる。

 ちょっと集中力が欠けてたな。

 結局何が言いたいかと言うと、チェックメイトって事だ。


 ブウゥゥゥン!!


 猛々しく空気を弾くような羽音を伴って、その退路から追加だ。

 6匹のフォレストワスプの奇襲、既に臨戦態勢と言った感じで。

 逃げ出そうとしていた弓持ちはそれを見て思わず足を止めた。

 とにかく、これで包囲網が完成した訳だ。


 ま、目視に頼りすぎたツケって事でいいんじゃないかな?

 後はなす術無くやられてくれ。



(どうだ!ざまぁみろ森荒らし共め!)



 で、魔物たちを擦り付けて非常にご満悦な姉ベルト。

 気が付けばいつの間にか、他のエルフたちも戻ってきていた。

 …ちなみに警戒探索だと全くエルフの位置は掴めない。

 ちょっとこいつら隠密で行動しすぎじゃないかな…



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