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しっかし、偶然とはなんとも厄介なもんだ。
ガサガサと無遠慮な足取りで歩いてくる三人組を見ながら、つくづくそう思う。
見たところ装備は両手斧、長剣、そして弓だな…
ただあの長剣、妙に細い。
もしかしたら細剣とか…なのかもしれない。
(彼らが森を荒らす奴ら…ですか?)
(いや、まだ分からないな)
万が一の可能性として、ただ森に迷い込んだって事もある。
と、地に伏せた状態で、アルベルトと小声でやり取りする。
既にクワイエットブリーズ、カムフラージュは使用済だ。
加えてエルフ達からも隠蔽の魔技を掛けて貰っている。
これならきっと、見つからないだろう。
で、結局どうしたかと言うと…だ。
『一旦様子を見たい、隠れないか?』
そう提案し、俺たちは隠れる事にした。
どう動くかと悩んでいたアルベルト達からは、特に異論は無かった。
姉ベルトからは『知るか!捕えろ!』とか言うかと思ったが…
そう言う事も無かったので、ちょっと拍子抜けですらある。
とまぁ、一旦状況の整理はここまでにしておいて…
歩いてきた三人組は、迷いなく採取ポイントを漁りはじめる。
先程、俺がピピッドの実を回収した場所だ。
今日たまたま森に迷い込んだって訳じゃあなさそうだ。
手馴れた様子から、日常的にここいらを出入りしている奴らだろう。
「なんだか妙に品質がいいじゃねぇの?」
「これはもしかしたら?」
「もしかするかもな!」
「あぁ、だな!」
ピピッドの実の品質が良かったからか、とてもご機嫌な様子だ。
それから三人組は、採取ポイントからピピッドの実を全て回収…
未成熟の物も含めて、全部持って行きやがった!
そこに残ったのは、高さ50cm程の葉のついた唯の低木…
形の悪い観葉植物みたいな見た目になった。
「で、どうするよ?」
「とにかく見て回るしか…」
「いや、こりゃ一旦戻って報告した方がいいんじゃねぇか?」
「馬鹿言うなよ、ここで帰ったらよ…」
「他の採取地での分が減るよね?」
「まぁ、それもあるけどよ…」
くそっ!あいつら…!
俺の努力と無駄にする気か…!
(あいつら…!)
(姉さん、落ち着いて!)
…と、頭に血が昇ってきている最中に、そんなやり取りが…
視線を向けると、アルベルトに取り押さえられている姉ベルトが居た。
(離せ、アル!森が荒らされるのだぞ!?)
激情に身を任せて暴れようとする姉ベルトは見ていて…
何か、ちょっとだけ頭が冷えるな。
萎えたと言う方が正しいか…?
「エルフ達と初遭遇を逃すかも知れないんだぜ?」
「おぉ!金髪美女!」
「いや、パツキン美男子でしょ!」
…ここからはチラシの裏にでも書いてろ!って言いたくなるような妄想の類だった。
やれ一番乗りで出会って仲良くなって、エルフの武具や道具を独占だのと…
やれ俺は出会うとしたら金髪ロリ巨乳が良いだの、私は青年でクール系が良いだの…
やれ助手として雇って傍に侍らせておきたいだの…
様子を伺っていたエルフ達も、それを聞く事に徐々に殺気立っていくのが俺でもわかる。
で、その他諸々…世界中の蛮族もびっくりな事をのたまうのを見届けた後…
「それじゃ、夢のエルフ発見へ」
「「ゴー!!」」
と、意気揚々と森の奥へと進んでいった。
それを見ていた俺らの視線は、ゴミを見る様な視線だったとは言っておく。
妄想の半分程度は、あいつらだけが考えていると信じたいが…
後ついでに、姉ベルトを取り押さえている人数が三人に増えてる。
まぁ、とにかくあいつらは何とかしないとな。
このまま森の奥に行かれると困る。
採取ポイント然り、ブートキャンプ然り…
さっさと森から退場願いたい所だが…
何か良い案は無いものか?
「離せ!今なら殺っても良いだろう!」
「駄目だ!落ち着いて姉さん!」
「何故だ!」
「ここで出て行くのは悪手だからだよ」
探されている種族がのこのこと出て行ってどうするんだよ…
「気が付かれなければ良いのだろう!暗殺だ!」
「それも駄目だ」
もしやるとしたら…と考えなくも無かったが…
少し考えて、無理だという結論に至る。
と言うのも…死亡判定が出て、町に戻されるまでおよそ30秒の猶予があるからな。
その間、幽体離脱って訳でもなさそうだが…ある程度キャラクターの状態を俯瞰する事も可能だ。
前にデスペナを貰った時の教訓だ、忌々しい。
…まぁそれは置いておいて、暗殺でも何処を・何で・どうやって攻撃されてやられたか探せる時間があるって事だ。
その時に矢が刺さっていたら一発でバレるだろう。
少なくともこの状況、人が来ないのにPKと考えるのも少し厳しいだろうし。
「じゃあ貴様が行け!殺って来い!」
「それも無理だな、勝てる気がしない」
PKになるとか、そんな事は置いておいて…そもそも、だ。
この事件の黒幕って事は、そもそもトップクラスのプレイヤーである可能性が高い。
レベル的にどれだけ低くてもボリュームゾーン以上、恐らく30台…はあるだろう。
そんなの3人相手に単身で突っ込んで勝てる訳が無い。
…と、ちょっとだけ日和ってみる。
「う~ん…」
しかしそうなると本格的に困るな。
こいつらでなく、俺でもなく、とは言っても他に誰も居ないし…
う~ん…?誰も…?
それに、PKとも考えにくい状況…
「MPKなら…?」
人が居ない所で、大量のモンスターに襲われても、彼らも運が悪かったと諦めるしかないだろう。
それに、森のモンスターが凶暴化しているのはこいつらの過剰採取のせいみたいだし。
一度は自分達でその影響を味わってもらおうか。
それでやられましたって言われても、ただの自業自得だし。
「何か策があるのか…?」
「あぁ…だけど…」
しかし、あのストレスフルな記憶がやはり頭から離れない。
贖いの魔窟に放り出されて、アークスカルノービスにやられたあの記憶だ。
その元凶であるあいつと同じ事をする事には抵抗しかない。
だれがあいつと同じになるかって話だ。
「恐らく俺には上手く出来ない、アルベルト達にやって貰う事になる」
「ふむ…」
なので、エルフ達にやってもらう事にした。
自分の手は汚さない。
俺はあくまで提案しただけで、実際にやるのは彼らだ。
更にエルフ達のガス抜きになるし、目的の蛮族トリオを追い払えると…いい事ずくめだ。
という訳で彼らに詳細を説明していくか…




