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ちょっと書き方変えてみました。
「話は聞いていたわ!」
俺の腕を引っ張りながら、堂々と盗聴宣言する女の子。
それに、素材を見せろだって?
店長の前でよくそんな事言えるな。
普通に営業妨害だと思うんだが…
「なぁ…アスティ?」
「げっ!?ティーリア!?」
誰だ?このガキ?って聞きたかったのに。
なんだろう?この反応…本当に商売敵とか?
こんなゲームの店にまで圧力とか嫌がらせってあるんだな…
「全く!アンタはちょっとそういう事があると!」
「ごめん!ごめんって!」
とか一瞬思ったけど、そうじゃないみたいだ。
因縁があって敵対してるような感じでは無いし…
って、あれ?
「アスティに…ティーリア…?」
そういえばこの店の名前って…
もしかしなくても名前くっつけただけか?
「だからアスティリアなのか?」
「あれ?あんた言ってなかったの!?」
「いや~!ついうっかり忘れててね!」
「大事な事じゃない!店の名前よ名前!」
「だ~か~ら~!ごめんって!」
まぁ、どう見ても立場はあっちのちっこい方が上だな。
「別に良いけど!で、そこのアンタ!あたしはティーリア!」
「もうひとりの店主か?」
「事実上あたしの方が上だけどね!」
「酷い!共同出資の店だろう!?」
「アンタは専ら接客担当じゃない!」
「だってティーリアが出ると全員そっちに行くだろ!」
「それだけアタシが魅力的って事でしょ?」
しかしこうして見ていると、お互いにそこそこ仲はいいよな。
でも俺を置いて言い合いすんの、やめてくんねぇかな?
「そんな訳ないだろ!全員『幼女!幼女!』って盛り上がって!」
「あら?それも魅力の内じゃない?」
「何言ってんだ?このガキ」
それは普通に犯罪案件だろ?
つかこの店はそんな変態どもが集まる魔窟だったのか…
贔屓にすんの、止めようかな?
同類扱いは流石に勘弁だ。
「そんな!ガキだなんて…照れるわ!」
「はい、はい」
なんでガキ呼ばわりで喜んでんだか…
ってか話が進まん!
ちょっと強引にでも、話を戻そう。
「で、ティーリアで良いんだよな?」
「えぇ、アスティリア防具店のもう一人の店主ティーリアよ!」
「なんでいきなり素材出せなんて?」
「決まってるじゃない!防具、欲しいんでしょ?」
「そりゃそうだが…」
オーダーメイドなんて結構な金が掛かるし、何より時間的に今すぐは無理だ。
それなら取り敢えず当面の防具を見繕ってからでも遅くはないだろうに…
「善は急げ、よ!」
「ただ待ちきれないだけだね」
「そうみたいだな」
堪え性の無いガキ、と。
「いやいや!そうじゃないでしょ!アスティ!」
「はぁ?何がさ?」
「いやいや、複合鎧が半壊してるのよ?」
「そうだけど…?」
「…なんで分からないのよ!バカぁ!」
また始まったよ。
どうにも一々コントを見なきゃ話が進められないみたいだ。
「俺にも分かるように説明してくれ」
「いいからアンタはさっさと素材を見せなさい!」
「ちょっと!?ティーリア!?」
「えぇい!黙りなさいアスティ!」
「さっさと納得して貰った方が早いと思うよ?」
「…はぁ」
全く、話が進まない。
こりゃ、店から出られるのはいつになる事やら。
そんなこんなで話を聞けば、まず俺が購入していたフォレストワスプアーマーの分類は単純に鎧だが…プレイヤー、とりわけ生産職では複合鎧と呼ばれているらしい。
体部位を中心に、装備部位を幾つか占領するタイプのものだな。
ちなみにフォレストワスプアーマーは体に腕、腰の複合鎧だ。
大体が上半身だけの複合鎧で、腰当てまでを含めたタイプの複合鎧は珍しいそうだ。
それでも、もっと珍しい物として頭からつま先までの全身鎧もあるようだけど。
まぁ、ここまでは別にどうでもいいから半分聞き流しても良いんだが…
この複合鎧、防御力は他の部位防具の組み合わせたよりは実は低い上にそこそこ重いが…その分防御範囲が段違いに広い。
勿論、同等の素材と箇所で比べた場合だ。
例えば体と腕の複合鎧と小手や腕カバー+軽鎧とか胸当て、ベスト等の組み合わせと比べると、組み合わせた側は防具自身の耐久を大幅に減らしやすい箇所が多かったり、防具の防御力を割合で無視してHPを減らす弱点が多く存在するようだ。
その点を考えると、複合鎧は耐久を減らしやすい箇所=弱点で、その弱点もほぼ可動部位くらいにしか存在しないっていう徹底した保護っぷりだそうだ。
結局、なんであれだけあのガキが興奮して素材を見せろと五月蝿かったと言うと…可動域くらいしか弱点の無い装備を、ただ掠るだけで耐久を半壊させた魔物の素材様を見たかったらしい。
「…言いたい事は分かった」
俺はたったこれだけの内容を聞き出すのに、ゲーム内ですでに朝を迎えている訳だがな。
途中から聞き流さなかった俺を褒めて欲しいくらいだ。
…まぁ、一人だけ椅子に座ってるけど?
立ち疲れたんだから、しょうがない。
「じゃあ早速見せて貰えないかしら?」
「その前に、先に当面の防具を買うのが先だろ」
取り敢えずさっさとオークレザーアーマーを買いたいんだこっちは。
「じゃ、オークレザーアーマーでいいよね?」
「ダメに決まってるでしょ!アスティ!」
とか思ってたらこの幼女、止めやがった。
なんだ?何かあるのか?
「少なくともレア度4じゃ無いと、またすぐ半壊するわよ!」
「うん、そうだろうねぇ~」
「わかってるならさっさと適当に持ってきなさい!」
「あだっ!」
防御力的には大体20%増しくらいなんだが…これで足りないのか…
つかレア度4って…金足りるか?
手持ちでそこまで持ってきてないぞ?
「全く、ちょっとトラウマを刺激されるとすぐああなるんだから…」
「そうなのか?」
「そうなのよ!」
成る程、つまり褒めない方が良いと…
いや、違うか?
トラウマには興味が無いけど、まぁ…ああやって誤魔化すのはダメだって事か。
ってかさっき謝ったのにまだいじけてたのかよ。
「じゃ、これと…これかな?」
それでティーリアに蹴られてようやくいつもの調子に戻ったようだ。
結局レア度4の防具で持ってきたのは二つだ。
フォレストクイーンアーマーと騎士羽蟻の甲殻鎧…
「どっちも蜂系なんだけど…」
やっぱアスティの機嫌、戻ってないんじゃないか?
「あら?良いと思うけど?」
「やっぱファルマに似合ってると思うよね!」
「それに使い勝手も変わらないでしょうし」
そういう考えもあるのか。
確かに見た目もそう大きく変化が無いしな。
装備部位も変わらない上に、防御もアップってか?
「それに雰囲気が蜂に似てるし」
色々と言いたいが、軽く睨んでやるだけで我慢しよう。
「冗談よ」
一々突っかかって話が伸びていくのはホントに面倒だ。
さっさと肝心のステータスを確認しよう、っと…
・フォレストクイーンアーマー レア度4 作成評価7
カテゴリ:鎧
基本防御性能:74
耐久:810/810
特殊能力:状態異常軽減Ⅰ:毒・麻痺
状態異常防御:魅了
一部アイテム使用時、効果増大Ⅰ
スタミナ消費軽減Ⅰ
蜂系モンスターからのダメージ6%カット
空を飛ぶ中型の蜂の女王の素材を用いた鎧。
森の蜂の女王の力の為か、蜂は僅かに攻撃を躊躇うようだ。
また、蜂の作った物に関して何か特殊な効果を発揮するようだ。
・騎士羽蟻の甲殻鎧 レア度4 作成評価8
カテゴリ:鎧
基本防御性能:91
耐久:1020/1020
特殊能力:状態異常軽減Ⅲ:毒・麻痺・睡眠
状態異常悪化Ⅲ:魅了・混乱
スタミナ消費軽減Ⅱ
ターゲット引きつけⅠ
戦闘に長けた羽蟻の素材を用いた鎧。
しなやかで軽量、それでいて丈夫な素材は高い防御と機動性を生み出す。
堂々たる存在感を放つ蟻の騎士の魂が籠っていそうだ。
さっき防御20%アップとか言ってたのがバカみてぇじゃねぇか…
どっちも防御が倍近く高い上に特殊効果も…随分と強化されてるし!
防御性能だけで言うなら圧倒的に蟻で、特殊能力も考えるなら…ギリギリ蜂か?
魅了を完全に防御出来る上に、蟻は混乱にも弱くなるみたいだし。
…どっちも喰らった事がないけどさ。
使ってくる奴いんの?
「ちなみにおすすめは蜂かな~」
「値段良し、効果良しだものね!」
「う~ん…」
そう言われると蜂にしたくなるよなぁ…
つかぶっちゃけ疲れた。
さっさと買って帰りたいなぁ…
この後に素材のオーダーメイドとかあるのか…?
適当に理由つけて後日にしてぇな。
「こちらお安くなんとイチキュッパ!19万8000ミルスとなっておりま~す」
「わぁ!お安いですねぇ~」
「何通販ごっこしてんだお前ら」
おまけにこいつら二人を放っておくといつの間にかネタに走るし…
これを更に放置すると漫才を見る羽目になる。
…ちなみに既に体験済みだ。
ホント、語る口の止まらない二人組だよな…
「ちなみに蟻は15万3000ミルスだよ?」
「蜂のが高ぇじゃねぇか」
「蜂の女王の素材の方がレアだもの、しょうがないわ」
「私たちもアントかかき集めたんだよ!」
「「は…?」」
「…ごめん」
蜂の方の装備の話なのにな…
それは蟻の方が高い時に言えよ。
「で、結局どうするの?」
「そうだなぁ…」
流石に予想はしていたが、どっちも金が掛かるな。
手持ちは…ギリギリ20万とちょっと。
ふむ…これなら…
「じゃあ蜂で、頼む」
「分かったわ」
「は~いファルマ君、鎧いっこお買い上げ~」
ガチャガチャと手持ちの金額が減り、新しい鎧がインベントリに入る。
「あぁそう、古いのは引き取る?」
「そういえば忘れてたな、頼む」
「おっけ、これなら…って随分と酷いわね!これ!」
「今更言うなよ」
結局、査定の結果2万程戻ってきた。
買値と損傷を考えれば随分とマシな結果だろうな。
ぶっちゃけタダで引き取られると思ってたし。
「で、そろそろ本題なんだけど…」
「あぁ、そうだな」
「…何か問題でも?」
今になって言う事があるのかしら?と言わんばかりの視線と、逃すまいとがっしり掴まれる肩が痛い。
向こうも背は低いが、こっちも今は座ってるからな。
「今ので金が無くなった」
「そんなの別に今度で良いわ、さっさと見せるだけ見せなさい」
咄嗟に思いついた、お金が無い作戦はどうやら通用しないらしい。
いけると思ったんだがな…
マジでそろそろ帰りてぇんだけど、心の限界だ。
リアルでもここまで着る物選ぶのに時間はかけないぞ…?
「ここまで来てそれは無いでしょ?」
「…はぁ、分かったよ」
ここはもう、腹を括るか。
言われた通り出すだけ出してみようか。
ってな訳で持ってきたクローベアの素材を全てカウンターに置いた。
ちなみにビキニアーマーは複合鎧です。




