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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
付属編成 二両目

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435/439

#435

よく、戦場でPTSDと診断された傭兵や治安官は兵器を見ることで発狂をして銃乱射事件を起こしたりして錯乱することがあった。

PMCにおいても、当然PTSDによって会社をクビになった人間はいる。この世には数多くの自分達ですら把握しきれない様な、初めて聞く様な仕事ばかりである。そんなごまんと存在する仕事の中でも生殺を合法的に行う仕事がまともな仕事では無いと断言できる。


嘗て、まだ戦場が槍や剣の時代、戦場というのは己の磨き上げた肉体を用いた決闘であったという。様々なルールが用意され、己が研鑽した能力を活かす為に指揮官が自ら先頭に立って敵に突撃を行った。


「一体いつからかな…戦場に指揮官が立たなくなったのは」

『近代戦の始まりは日露戦争と言われているんだろう?』

「あるいは、アメリカ南北戦争」

『ふんっ、一〇世紀以上昔の話ではないか』


座っていたスフェーンはサダミにそう答える。少なくともこれらははるか昔の話で、滅多に歴史の授業でも学ばないほど話だ。もはや大学で習う様な内容である。


「傭兵なんてまともな人間のやる仕事では無い」

『全くもってそうだ。だが、傭兵ギルドは今も必要とされている』


くだらないが、と一拍置いて彼女は煙草に火をつける。彼女は嘗て自分が作った組織により、今までほぼ闇であった傭兵の世界の金の動きを白日の元に晒した。これにより、表立って傭兵を使った企業による妨害工作は表立って行われなくなった。

傭兵への依頼・支払いが表面化して分かりやすくなった為に、多くの人間が野盗と傭兵の区別がつかなかった時代から一転し、その後の戦禍時代は官民問わず多くのものが傭兵に身を投じた。

その代わり、企業は野盗を使うようになった。野盗と傭兵の違いが傭兵ギルド創設に合わせて明文化されたことで、彼らは秘密裏に南北戦争時の接触も含めて妨害工作に彼らを使うようになった。


「逆に治安が良いから、傭兵は必要とされいるんじゃ無い?」

『…どうだかな』


サダミは付けている眼鏡から先頭に連結された装甲車のガンカメラの映像を受け取ると砲撃を行う。


「支援砲撃、任せたよ」

『了解。…昔の癖で壊すなよ』

「勿論」


そこで涸れ川(ワジ)を塹壕代わりに使っていたオートマトンは背中から一筋の閃光が過ぎたのを確認して森林に出る。砂利の溜まっていたその場所は飛び出すとスラスターの噴射気流で散弾のようになって吹っ飛ぶ。

ここら辺で植えられているのはジャイアントセコイア。オートマトンの機体ですら、小柄に見えてしまうほど巨大なその幹は雷に打たれて自分を燃やすことで種子を周りに撒き散らすという。その為、恐ろしい勢いでこの巨木は育って一度に大量の木材を製造していた。


その森の中を一発の砲弾が飛翔して爆発を起こす。


「チッ、榴弾?」

『敵の状況が詳しく見えない』


幹の影に隠れていたスフェーンは軽く舌打ちをすると、軽く砲撃戦となった森林区間を列車は迎撃をしながら走行していた。


「上空は?」

『現在、マッピング中です。熱源探知は厳しいです』


小型のエーテル機関を装備した偵察ドローンでルシエルがそう返す。これのおかげでドローンは落とされずに偵察を続けることができた。

爆弾が仕掛けられたことは、参加者達には伏せられることが出発前にジョンから伝えられ、この恐怖の弾丸ツアーは続行が決定され、スフェーン達は愕然となった。


「とにかく撃ち落とされないようにして。それで最後の偵察ドローンだから」

『了解しました』


オペレーター役を買って出たルシエルは答えると、シエロが言う。


『列車からなんも見えませ〜ん』

『先頭、三〇に影』

『はいはい〜!』


シエロが苦労しながら炭水車に装備された自衛兵装を前方に旋回させて射撃を行う。


「全く、この距離じゃあミサイルも使えやしない」

『その事を理解してのこの区間での襲撃なんでしょ』


毒吐くスフェーンに装甲車から射撃を行うサダミが返す。自衛装備には自動装填装置付きの対戦車ミサイル発射機も装備されており、長距離はこちらで迎撃することもあった。

スフェーンは手元の操縦桿の射撃ボタンを押すと持っていた30mm自動小銃を発射し、同時に肩から短砲身の120mm無反動砲が発砲する。

焼尽薬莢を使用するこの無反動砲は、発射後にすぐに弾倉内のバネが押し上げて薬室に新しい穴の空いた砲弾が装填される。


このオートマトンには無反動砲が左肩に標準装備され、支援砲撃型となるとこれが両肩に装備される。

この機体は王国陸軍が装備しているオートマトンの一個前の機体であり、汎用型オートマトンの軍からの払い下げ品であった。


「面倒な…」


その直後、弾道計算で辿ってきたのか、先ほどまで隠れていたセコイアの幹に砲撃が着弾し、集中的に徹甲榴弾が叩き込まれる。


「チッ、向こうは弾道計算のコンピューター積みかい」

『良いもん積んでるなぁ…』


すぐに歴戦の経験者であるスフェーンは移動していたのでなんら問題はないが、流れ弾が列車にも着弾するような危険な距離まで接近されていた。


「線路上に爆弾は?」

『確認されていません。安定した運行が可能です』


列車のオートマトン格納庫に止まっていたサダミの質問にルシエルが回答をすると、その直後にサダミは列車が移動をし、スフェーンが牽制をしていたことで不用意に飛び出ていた多脚戦車を側面から貫通させる。


「サソリ型?奴らレーザー砲まで持ち込んでいるのか」


そして撃破した多脚戦車の形状を見て冷や汗をかく。

基本的に多くのこういった装甲戦闘車両というのは開発されており、中でもこと多脚戦車に至っては自然界に多数存在していた動物を参考に設計されていることもあり、多種多様に設計がなされていた。

例えばこのサソリ型の多脚戦車は大きくカーブしたような形状の後部の先端にはレーザー砲が備えられていた。


「添乗員各員、よく聞きなさい」


そして彼女は撃破した多脚戦車を見て添乗員達に伝える。


「敵車両にレーザー砲の所在を確認。白兵戦に備えろ」

『了解しました』


そこで報告を聞いた執事はすぐに部下に対し同様の命令から添乗員に武器庫からブルパップ式自動小銃(MTAR-21)自動擲弾発射機(MTL-30)を持たせて走らせる。


「畜生、どんな重装備だよ」

「実弾兵器より貫通力があるんじゃない?」

「いつだって犯罪組織は金があるわよ」


口々に従者達はそんな事を言いながら供与された武器を手に取る。

すでに車内は防護シャッターを下ろし、乗客達はこんな状況で怯えるどころか優雅にブランデーを傾ける猛者までいた。


「来たぞ!」


誰かが叫んだ時、森林からAWDが飛び出して乗り込もうとしてきた。


「乗り込む気なの?!」

「無茶しやがる」


そこで臙脂色の制服に身を包んだベルボーイが持っていた自動擲弾発射機が発砲。着弾してサーモバリック弾頭が連続して爆発を起こすと、車のフロントガラスを簡単に砕いて中の人員を殺傷する。そして追撃で異能が車に命中して乗員が投げ出された。


「こんな接近されているの?」

「初手で機関車壊されないだけマシだと思うぞ」


最初に機関車に向けて砲撃が行われたが、びっくりするほどの分厚いRHA換算の複合装甲と電磁装甲、APS、などで襲撃側が驚愕する抗堪性を見せつけた機関車は現在全速力でこの閉塞区間を走行していた。


「当主が肝煎で作っただけはあるわね」

「噂だと、オーバーホールの度に装甲材を変えてるとかっていう話だ」

「こっわ。戦車より頑丈なんじゃないの?」


そんな無駄口を叩ける余裕がまだ彼らにはあった。例の機関銃座を展開して迎撃をしていた彼らは、そこで時折飛んでくる砲撃が散発的であることを理解する。


「向こうはあくまでも人殺しではないのね」

「そりゃあそうだ。殺したら指名手配でまともに街を歩けなくなる」


今は客室で大人しく、そして優雅に過ごしている招待客達。彼らは皆、一様にこの国にとって重要な人物である。そんな列車を襲おうとするなんてまずどんな相手かが限られる上、金品の類もほぼ割に合わない程度しか持ち合わせていないこの列車では、襲撃者の目的は引き算をしていくと自然と『乗っている乗客』が狙いになっていることはすぐに把握できた。


「下手くそめ」


直後、列車の真上をオートマトンの装備する25mm弾の曳光弾が過ぎたのを見て一人の従者が言うと、直後に13.2mm機関銃を使って照準を合わせられたオートマトンに向けて射撃を行う。


『!?』


撃たれたオートマトンは驚愕をし、的確に固め撃ちをされたことで刺さった徹甲榴弾が腕を破砕。持っていた25mm自動小銃が地面に落ちた。


「上手っ、そんな射撃うまかったの?」

「元々対空戦車の砲手だよ。舐めんな?」


驚く同僚にそう答えると、直後に列車から森に向かって一発の砲弾が飛んでいく。


「ヒュー、綺麗なもんだ」


そして砲弾が着弾をすると、綺麗な爆発の後に近くにいたのであろう重量級サイボーグの兵士が爆発に巻き込まれたのが見えた。

見ていて気持ちの良いものでは無かったが、少なくとも彼らはこの国の軍人としての従軍経験で王宮事変や立憲内戦を生き抜いた歴戦の兵士たちであった。この世界の住人にとって死体とは日常の一部であり、街の外に出て戦闘に巻き込まれることは一種の通過儀礼的要素でもあった。


「残弾も少ないな…」


そこで隠れて列車と共に移動していたスフェーンは残りの残弾数を確認してから少し考える。


「…仕方ない」


そして隠れていた幹から列車に戻りながらルシエルに伝える。


「(ルシエル、戻って向こうの頭叩く)」

『分かりました』


すると聞いていたサダミが顔をやや顰めた。


『え?あれやるの?』

「(じゃないとキリがない)」

『…もうすぐで警察が現着よ?』

「(証拠は残さないわよ)」


そう言うとスフェーンの乗ったオートマトンは格納庫に収容され、その間に彼女は瞳の色を群青色に変えて付近一体のエーテル反応を確認する。


「うわっ、まだ隠れているわよ」

『どれだけ備えているんだ…』


そこで確認できた強いエーテルの反応にサダミは思わず引いてしまった。

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