22 精霊族の里を目指しているのだが
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<イザベルの街:神殿>
神官長はテツたちの消息を未だ知りえていなかった。
不安さもあるが、ダンジョンに入ったまま連絡がない。
かなりの時間も経過している。
攻略組の冒険者が、テツらしき2人組の冒険者が26階層辺りのボス部屋に消えたという報告を聞いていた。
神官長は、まさかそんな深層まで行っていたのかという驚きと、どうやらそのまま果てたのではないかという考えが行き交っていた。
神官長が部屋の中を行ったり来たりしている。
「・・まさかとは思うが・・いや、しかし・・」
ブツブツとつぶやきながらウロウロしていた。
ドアがノックされる。
「どうぞ」
ドアが開かれると、ノートが入って来た。
「どうしたのです、ノート」
「はい、ブレイザブリクの神官長が間もなく来られると連絡がありました」
その報告を受け、神官長フォルセティは少し驚いたがすぐに返答をする。
「そうですか、わかりました。 粗相のないようにお迎えの用意をお願いします」
「はい」
ノートはそう返事をすると部屋を出て行く。
「さて、私たちの報告を聞いてどう思われるか。 後はマグニ様の判断に委ねるしかないですね」
神官長フォルセティはそうつぶやくと、少し落ち着いたようだった。
しばらくすると、ブレイザブリクの神官長:マグニたちが到着したようだ。
イザベルの神官長:フォルセティは入り口まで出迎えていた。
卵型の銀色の乗り物の入口が縦長の楕円形に開く。
中から、マグニが降りて来る。
「これはこれは、ようこそおいでくださいましたマグニ様」
「うむ。 フォルセティよ、あの神殿騎士の足取りが途絶えたと聞いているが・・」
マグニは開口一番、テツたちのことを聞いていた。
フォルセティは言葉を発するタイミングが遅れる。
マグニを応接室へ案内しながら、ダンジョンまでのいきさつを語った。
・・・
・・
応接室に到着。
中へ神官たちも入って行った。
ノートもフォルセティの付き人として、応接室の中に入って行く。
マグニとフォルセティは向かい合うようにして椅子に腰かけた。
間には白い大きなテーブルがある。
「フォルセティよ、ではあの神殿騎士はダンジョンに入ったまま、未だ出て来ないということか」
「はい、おっしゃる通りです。 おそらくダンジョン内で亡くなったものだと思われますが、何せ階層が階層ですから、近づくこともできません」
「ふむ・・」
マグニは考えていた。
あのボードパネルをみた時には驚いたが、それでもやはり40階層クラスのダンジョンに潜れば当然なのかもしれぬ。
そんなことを考えていた。
「フォルセティ、万が一地上へ帰還したとして、その位置を見失うことはないのか?」
マグニが聞く。
「マグニ様、それはないと思われます。 神殿騎士のライセンスカードには追尾魔法が施されております。 本来は神殿騎士の安全のためですが、見失うことなどありませ・・いや、死霊国家や龍神族のエリアに行くと、その結界によって追尾不可能となりますが、イザベルからはかなり距離がありますし、必ず痕跡が残るものかと思われます」
フォルセティは答えながら、疑問を塗りつぶしていく。
「なるほど・・それよりもだ、光の巫女の捜索なのだが・・」
マグニはそういうと、フォルセティに捜索の範囲拡大と人の派遣を要請した。
また、各国と連携して、といっても魔素の利用で利権を得ている者たちだけだが、より密接に行っていこうと会話していた。
ノートはその内容を静かに壁際で聞いている。
マグニとフォルセティの会談も終わり、それぞれが部屋を出て行く。
「ではフォルセティよ、後はよろしく頼む。 私も神殿に戻り、各位に指示を出しておこう」
「はい、わかりました。 マグニ様もお気をつけて」
フォルセティの言葉を背中で聞き、マグニは銀色の乗り物に乗りイザベルの街を後にした。
◇◇
<テツとルナ>
俺たちはヴァヴェルに見送られながら、精霊族の領域へと向かう。
ヘルヘイムの所から渓谷を抜けて龍神族の里。
そのさらに奥の山のところに精霊族の領域が存在する。
ヴァヴェル自体も直接は会話したことはない。
ただ、その雰囲気を感じることができるという。
直接の会話ではないが、精霊王とは意思疎通ができたということだった。
運が良ければ会うことができるだろうと言ってくれた。
会えなくても、俺たちがどう感じるかだけでも問題に干渉することになるという。
本当に重責なんじゃないのか?
なんか妙な不安が沸き起こるのだが。
俺たちがこちらに来て、どれだけの時間が過ぎたのかよくわからない。
長いようでもありそれほどでもないような感じもする。
きちんと昼と夜は繰り返されている。
そして、考えようによっては単に歩いてブラブラしているだけのような感じもする。
いったい何のために・・いや、なぜ俺たちを呼んだのだろう?
そんな疑問が浮かぶが、考えてわかるのなら既に解決しているだろう。
なるようにしかならないな。
俺はそう思うと、精霊族の山を目指して歩いて行く。
ルナは相変わらず鼻歌気分で散歩だ。
精霊族の山に向かっているが、なかなか到着できそうにない。
というのは、なぜか山との距離が縮まらない。
ずっと同じ大きさのまま、山が存在している。
ルナも気づいたようだ。
「ふむ。 迷子にさせられているな」
ルナが言う。
「ま、迷子ですか?」
「うむ。 結界というほどではないが、歩いていると知らない間に同じところをグルグルと回されている感じだな」
ルナが説明してくれる。
「・・ということは、俺たちは何かの罠にひっかかっているのですか?」
「罠というほどのものではない。 ワシも気づかない、いや気づけないくらい軽いものだ。 だからこそ引っかかってしまったようだ」
ルナが苦笑する。
俺たちは、ヴァヴェルのところを出て、かなり歩いたような気がしていた。
だが、一向に山との距離が縮まらないことに気づいたところだった。
「ルナさん、どうすれば抜けれるのでしょうか?」
俺は聞いてみた。
「簡単だな。 一気に駆け抜けるか、戻るかだな」
「駆け抜ける?」
俺は驚いた。
普通、術にハマっていたら何か対処しないといけないのではないのか?
「ルナさん、駆け抜けるといっても、また同じところを回されるのではないのですか?」
俺は当然の疑問をぶつける。
「いや、こんな稚拙な術は、その効果がでる前にその効力範囲を突破すればいいだけだ。 むしろ原因を見つけようとすると余計にハマってしまうぞ」
ルナは言う。
俺はわかったような、わらないような。
とにかく、影響が出る前にその影響下から脱出しろということみたいだ。
「では、ルナさん、行きますか」
俺はルナを見てそう言葉を投げかけた。
ルナはジッと俺を見ている。
「テツよ。 お前は女の扱い方を知らんのか? ワシは1/10の身体だぞ。 全力で走れるお前とは違う。 おぶっていけ」
・・・
ルナさん、結局そこか。
楽したいだけじゃないだろうな。
俺はそう思うが、別にルナを背負ったくらいでは、移動能力が変わるわけではない。
「わかりましたよ、ルナさん。 では、どうぞ」
俺はそう言って片膝をつき、背中を提供。
「うむ。 素直なのは良いことだ」
ルナが俺の背中に身体を預ける。
「よし、テツよ。 あの山まで全力で走れ!」
・・・
あの・・馬じゃないのですけど。
俺はそう思うが、いいなりだ。
しかし、役得。
俺の背中のボリュームは気分を高揚させる。
俺は一気に駆け出す。
ほんの数十秒ほどだろうか。
かなりの速度で走った。
ルナを背負っているので、風魔法もかけている。
たったその時間を走っただけで、一気に山が近づいてきた。
というか、目の前に山があった。
白く薄い霧がかかっている。
春のような雰囲気を持った山だ。
桃源郷か?
俺はゆっくりと山の中へ入って行く。
すると、いきなり何かが飛んできた。
!
矢だ。
2本飛んできた。
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