21 朝食
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
感謝です。
「人間・・俺はこのままの姿でも十分に力を発揮できる。 貴様を殺すとヴァヴェル様が悲しまれることだろう。 殺しはしないが、腕の一本くらいは失ってもいいだろう」
赤いドラゴンはそういいながら、右手が怒りで震えていた。
口からも炎のようなものが出ている。
・・・
よくあれで火傷しないな。
俺はそんなことを思っていた。
俺も軽く身体をブルブルと揺すってほぐしてみた。
よし!
まずは赤いドラゴンの動きを見てみよう。
そう思ってジッと見ていると、赤いドラゴンが目を大きくし右拳を握りしめながら言う。
「人間・・やはり舐めているのか? 敢えて先に攻撃させてやろうと言うのだ。 サッサとかかってこい」
・・・
あ、そうですか。
では遠慮なく。
俺は一気に赤いドラゴンに近づく。
ダッ!
赤いドラゴンは反応できていない。
まぁ、かなり気合入れて踏み込んだからな。
少し力を入れて、右手でボディブローを放つ。
ボディに触れた瞬間にわかった。
かなり堅い表層だ。
バジリスクよりも堅い。
「グホォ・・」
赤いドラゴンが前のめりになりながら呻く。
その顔を左掌打で捻りながら打ち抜く。
ドン!
赤いドラゴンは5回転くらいしただろうか。
俺の左掌打が当たった瞬間にグルグルと回って吹き飛んでいた。
・・・
少しして、赤いドラゴンがよろめきながら立ち上がる。
「や、やるじゃねぇか・・お前、本当に人間か?」
赤いドラゴンはニヤッとしながら言う。
こいつ、自分で勝手に盛り上がっているんじゃないだろうな。
俺は少し心配になってきた。
「こ、今度はこちらから行くぞ」
俺は少し驚いていた。
あのダメージ・・といっても、全力ではないが、それでもかなりのダメージのはずだ。
ミノタウロスでも倒れるんじゃないかというくらいの衝撃だったと思う。
その衝撃を耐えて、まだ立ち上がってきているのだから。
赤いドラゴンは右腕に力を溜めているようだ。
ヒィィィン・・・。
甲高い音が聞こえる気がする。
赤いドラゴンの右腕が白く発光していく。
◇
城の窓に人影が見える。
ヴァヴェルが窓から赤いドラゴンとテツの戦いを見ていた。
「あの白い光は・・まさかあいつ・・客人を殺すつもりか?」
ヴァヴェルは少し驚きつつも、その経過が気になり見つめている。
◇
「人間よ・・すまないな。 俺の想像よりも遥かに力があるようだ。 これを使わせてもらう・・ドラゴソード!」
赤いドラゴンはそう言うと、右腕を剣のようにして俺に斬りかかって来た。
俺を真っ二つにしようとしたのか、真上から斬りつける。
俺は横に避ける。
!!
驚いた。
俺がいたところの地面がきれいに裂けている。
すごい威力だろう。
当たれば、確かに無事では済まないかもしれない。
「よく躱したな。 はぁ!!」
赤いドラゴンがそういいながら、水平に斬りつけてくる。
俺も飛燕を抜き、赤いドラゴンの右腕を受けた。
ガキィーーーーン!!
金属のぶつかるような音が響く。
「な、なに?」
赤いドラゴンが驚いているようだ。
「ハッ!」
俺は身体に神光気を纏わせながら、飛燕にも気を通す。
飛燕が白の混じった金色のように光輝き、大きくなっていく。
俺はそのまま一歩踏み出して、赤いドラゴンの腕を斬りつける。
!!
斬りつけて行く途中で黒い影が見えた。
急いで斬撃を中断。
「ック!!」
ヴァヴェルが赤いドラゴンの横に立っていた。
「テツ様、そこまでにしていただけませんか?」
落ち着いた声で言う。
俺たちは別に戦闘をしているわけでもなく、殺し合いでもない。
俺はすぐに神光気を解き、飛燕を収納。
赤いドラゴンの右腕の1/3ほどまで、飛燕による傷が入っていたようだ。
ヴァヴェルが止めなければ、そのまま赤いドラゴンの腕が吹き飛んでいただろう。
ヴァヴェルが回復魔法を赤いドラゴンにかけていた。
「ヴァ、ヴァヴェル様・・」
赤いドラゴンは驚いた顔でヴァヴェルを見る。
そして自分の腕を見て驚いていた。
「え、ま、まさか、私のドラゴソードを突き抜いていたなんて・・」
ヴァヴェルは静かに言う。
「愚か者が・・だからまだ名前をもらえないのですよ」
赤いドラゴンはショボンとして、下を向く。
わかりやすい奴だな。
その後、ヴァヴェルが丁寧に俺にお詫びをしてきた。
俺はそんなことをしなくてもいいと言ったが、赤いドラゴンの頭をねじ伏せて地面に押し付ける。
案外ヴァヴェルって怖いな。
ヴァヴェルも改めて思ったようだ。
クイーンバハムート様の友人と言うのも本当のようだと。
俺はヴァヴェルたちに見送られながら部屋に帰って行く。
そのまま身体を魔法できれいにして、ベッドに横になった。
すぐに眠ることができた。
まさか、あの赤いドラゴン、俺が眠りやすくするために動いてくれたのかな?
そんなことが一瞬頭に浮かんだが、すぐに薄れていく。
・・・
・・
どうやら朝になっていたようだ。
完全に熟睡したらしい。
俺は部屋を出て、通路を歩いて行く。
誰もいない。
人がいない居城っていうのも、何か寂しいな。
俺の歩く足音だけが響く。
しばらく歩いて行くと、話し声が聞こえて来た。
その方向へ歩いて行くと、ルナとヴァヴェル、そして赤いドラゴンが食卓を囲んで話していた。
俺の姿に気づいたルナが言う。
「おう、テツ。 よく眠れたようだな」
赤いドラゴンが立ち上がって、
「テツ様。 昨日は大変失礼いたしました。 まさか私のドラゴソードをものともしないとは・・恐れ入りました」
そう言いながら、机に頭がぶつかるんじゃないかと思うほどお辞儀をしている。
「い、いえ・・俺の方こそ飛燕、刀で傷つけてしまってすみません」
俺もすぐに返答。
ヴァヴェルが笑いながら言う。
「まぁ、この者にとっては良い経験になったことでしょう。 それよりもテツ様、食事がまだでしょう」
ヴァヴェルが魔法で食卓の上にパッと食事を出してくれた。
!
マジか?
俺の頭の中を読めるのか?
食卓には、コーヒーとフレンチトースト。
ハムを焼いたようなもの。
サラダがきれいに並んでいた。
「ヴァヴェルさん・・これは・・」
俺は思わず言葉を出した。
「はい、テツ様の気からイメージをしましたら、こういった朝食が出来上がりました。 お気に召しませんか?」
ヴァヴェルが心配そうな顔で俺を見る。
「い、いえいえ。 むしろ反対です。 よくぞ、これほどおいしそうなものを・・ありがとうございます。 そしていただきます!」
俺はたまらずがっついていたようだ。
ルナたちは食後のティータイム。
・・・
・・
朝から久々に最高のものを食べさせてもらった感じだ。
ありがとうございます。
ヴァヴェルがルナにも言っていたようだが、俺たちは精霊族の領域に向かうといいらしい。
ヘルヘイムの死霊国家を盾にして、龍神族と精霊族が保護されているような形になっているという。
死霊国家を通過しなければ、この二つの種族に会うことはできない。
まぁ、そんなことをする人間は存在しないようだが。
精霊族との意思疎通は難しいかもしれないが、それでもその雰囲気を感じ取ってくれるだけでもいいという。
そして、人間の国を巡り俺とルナが答えを出せば、それがこの世界にとっての答えになると言う。
それが正解かどうかはわからないが。
人間目線、龍神族目線、精霊族目線、ヘルヘイムなどの夜の神目線、いろいろある。
すべてが満足できるものはないだろうという。
それでも今のままでは自然と滅びゆく種族が出て来る。
そうなれば、世界バランス自体が怪しくなる。
そう言った意味で、部外者の俺とルナの行動が鍵になるらしい。
・・・
俺はそんな説明を聞きながら、無茶苦茶重いんじゃないのかと感じていた。
だが、ヴァヴェルが言うには、そんなに考えて行動するものでもないと言う。
「むしろ、テツ様やルナ様が自然に振舞うことが良い結果を得られると思います。 それこそがこの世界の神々が望んでおられることでしょう」
ヴァヴェルは微笑みながら俺たちを見る。
◇◇
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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