20 熱血バカ?
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
感謝です。
まぁ、結果から過程を見れば、よくもまぁあれだけうまく行ったものだと思える事が多々ある。
その渦中にいるときにはわからないが。
何にせよ、俺たちは地上へ戻るだけだ。
「ヴァヴェルさん、こちらこそいろんなことを教えていただき、ありがとうございます。 とにかく、いろんな場所を回り、魔素の循環が整えれば道が開けると理解していいのですか?」
俺は簡単にまとめて聞いてみた。
「えぇ、おっしゃる通りです。 テツ様、ルナ様。 よろしくお願いします」
ヴァヴェルがそう言うと、机の上にパッと食事を出していた。
「これは私どもが人型になった時に食べる食事です。 お口に合うかどうかわかりませんが、これでも私は料理の勉強をしていましてね」
ヴァヴェルがそう言いながら、並んだ料理を順番に小皿に取ってくれていた。
見た目はとてもきれいでおいしそうだ。
どことなく中華風な感じだ。
匂いはとてもいい。
小皿に分けてくれた料理が来た。
ルナは相変わらずマイペースで食べ始めている。
「おぉ、うまいな」
などと言っている。
俺も一口。
!
おいしい。
「ヴァヴェルさん、とてもおいしいです。 人間でもこんなおいしいもの、なかなか作れませんよ。 地上と行き来できるようになったら、是非帝都で食堂を開いてください」
俺は思いつくままに、簡単に口を開いていた。
赤いドラゴンが席を立つ。
「人間! ヴァヴェル様に何と言うことを・・」
「こ、これは申し訳ありません。 口が過ぎました」
俺はすぐに非礼を詫びた。
そりゃそうだ。
一国の長に食堂をしろと言ったのだからな。
赤いドラゴンにも謝罪をした。
赤いドラゴンはフン! と言って席に座り食事をしている。
俺が調子に乗り過ぎたのだ。
反省。
「いえいえ、別に構いませんよ。 でも、そういったことも面白いかもしれませんね」
ヴァヴェルは微笑みながら答えてくれた。
◇◇
<地上:アニム王の居城>
アニム王は、今わかっていることをテツの家族らに報告して居城へ帰って来ていた。
すると、すぐに大広間に駆け込んでくる人がいる。
「アニム様! お聞きしたいことがありますわ」
レアだ。
アニム王の前までスタスタと姿勢よく歩いて来ると、軽く一礼をしてすぐに言葉を発する。
「テツ様が遺跡で消えたというのは本当なのですか? 先ほどウベール様から聞きました」
「うむ。 事実だよ、レア」
「な、なんですってぇ? ど、どういうことでしょうか? まさか、また何かよからぬ事態が発生しているというのですか?」
レアがかなり焦った様子で聞いてくる。
「いや、そうではないのだよ、レア・・」
アニム王は優しく声をかけると、今までと同じような内容を話し始めた。
・・・
・・
「なるほど・・テツ様はどこかわけのわからないところへ行かれたわけではないのですね。 少し安心しましたわ」
「フフフ・・レア、テツのことになると熱くなるね」
「な、何をおっしゃいますの、アニム様。 わ、私はただ、救国の方が不都合なことになっていないかと・・」
レアは何を言っているのか自分でもよくわかっていないのかもしれない。
「あはは・・レア。 とにかくテツのことは大丈夫だと思うよ。 それにルナの分身体も付いているしね」
レアが少し驚く。
「そ、そうでしたわね。 安心というか不安というか・・わかりましたわ。 これにて失礼いたします」
レアはアニム王に頭を下げ、王宮を後にする。
レアもせっかちなところがあったのだな。
アニム王は微笑ましく見送っていた。
◇
レアは王宮を出てスタスタと歩いて行く。
「レア様、これからどこへ行かれるのですか?」
フローラが聞く。
「もちろん、あのハイエルフのところですわ」
ロイヤルガードたちは顔を見合わせて不思議そうな顔をする。
レアはお構いなしにフレイアのカフェを目指していた。
フレイアのカフェに到着。
入り口を少し乱暴に開けて、中へ入って行った。
カラン、カラン、カラン・・。
「いらっしゃいませ~」
フレイアの声が聞こえる。
レアはカウンターにまっすぐに向かって行った。
カウンターにはルナが座り、スイーツを食べている。
「ルナ様、テツ様が古代遺跡のところで消えたということですが、ご存知ですよね」
レアはそういいながら、ルナの横に座った。
「・・これがなかなか・・うまいな・・」
ルナはもぐもぐとスイーツを食べながらチラっとレアを見た。
レアのロイヤルガード達も入って来た。
カフェの中にはルナしかいないようだ。
ロイヤルガードたちはお互いに顔を見合わせてうなずいていた。
なるほど、ルナ様に会いに来られたのだ。
「ルナ様は随分と落ち着いておられますね。 それにハイエルフのあなたも・・」
レアが少しキッとなりながら言う。
フレイアは微笑みながら、レアにハーブティを差し出した。
「レア様、どうぞ」
「どうもありがとう」
レアは一口飲む。
ロイヤルガード達にも同じように飲み物をフレイアは提供していた。
ルナがゆっくりとレアの方を見ながら言う。
「レレよ、アニムも言っておったであろう。 心配することはないと」
「レアです! って、そんなことよりもルナ様・・テツ様ですが、いつお戻りになるかわからないのですよ。 こちらからどうにかアクセスできないものでしょうか?」
「レレよ、余計なことはしない方が良いと思うぞ。 あの遺跡から飛んだ空間の意思なのだ。 そのうち帰って来るだろう」
「ふぅ・・お二人とも、本当に信頼されておりますのね」
レアはそう言いながら、ハーブティを飲んでいた。
◇◇
<テツたちのところ>
会食も終わり、ヴァヴェルが言う。
「まぁ、それほど急がれるようなこともないと思います。 今日はこちらでお休みいただければと思いますが、いかがですか?」
丁寧に、俺とルナに聞いてきた。
「うむ。 よろしく頼む」
ルナが勝手に返事をする。
俺は赤いドラゴンにあまり良い印象を持たれていないようだ。
俺をなんだこいつという目で見ている。
まぁ、自分たちの長を軽く扱われたのだから、そういうものだろう。
ヴァヴェルって教祖なのか?
少なくとも赤いドラゴンは崇拝しているのだろう。
俺にはない感覚だが。
ルナと俺は席を立ち、ヴァヴェルに休める部屋へと案内された。
龍神族の里は広くない。
個体数も今ここにいるのはヴァヴェルと赤いドラゴン、それに青いドラゴンがいるようだ。
ドラゴンはそれぞれが単体で動いているらしい。
青いドラゴンもエリアのどこかにいるのだろうが、いつ帰って来るのかはわからないという。
ヴァヴェルが立ち止まり、
「こことここをお使いください。 では、私はこれで」
そういうと、丁寧に挨拶して去っていった。
「ではルナさん、また」
俺はそういうと、部屋に入って行く。
「おう」
ルナも返事と共に部屋に消えた。
俺は少し疲れた感じがしていた。
何だか大きな波はないが、ダラダラと物語が進行していく感じだ。
知らない間に体力を削られているような感覚を持っていた。
しんどいな・・そう思って、ベッドに横になる。
部屋はそれほど広くはないが、清潔さを感じさせる部屋だった。
コンコン・・。
部屋をノックする音が聞こえる。
誰だ、ルナさんか?
俺はそう思いながらドアを開ける。
赤いドラゴンが立っていた。
「おい、人間。 少し話がしたい」
赤いドラゴンがそう言って俺を見ていた。
俺はうなずきながら部屋を出る。
赤いドラゴンは俺を引き連れて歩いて行く。
沈黙のまま歩く。
城の中庭だろうか、きれいな広場に出て来た。
赤いドラゴンはそこで立ち止まる。
そして、俺に背中を向けたまま言う。
「人間、俺はお前の失言が許せない。 だが、ヴァヴェル様は寛大なお方だ。 お前を傷つけたりすると快くは思われないだろう。 だから俺と立ち会え」
「は?」
俺は思わず、え? となった。
「俺と立ち会って、俺をスッキリさせろ」
・・・
おいおい、これって熱血バカのやることじゃないのか?
この赤いドラゴンってスポ根塊じゃないだろうな。
俺は少し心配になる。
だが、せっかくここまでお膳立てしてくれているのに、断ることはできないだろう。
俺は言葉を発したが、その言葉が逆に赤いドラゴンを怒らせたようだ。
「わかったが、どうすればいいんだ? お前を倒せばいいのか?」
「き、貴様・・たかが人間の分際で龍族である我を倒すなどと・・身の程を知れよ」
赤いドラゴンは完全に怒っているようだ。
ちょっと怖いな。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
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