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プロローグ
闇の底より、漆黒の玉が揺らめき、底知れぬ声でささやく。
『——祖は形なきもの。何色にも染まらず、何ものにも捉えられぬもの。』
呼応するように、まばゆい光の玉が拍動し、厳かな声を響かせる。
「——されば祖は移ろいゆくもの。万物の始まりでありながら、留まることを知らぬもの。」
漆黒の玉は、吸い込まれそうな闇を昏く脈打たせた。
『人は傲慢にも、己に都合よき光を【善】と呼び、背く闇を【悪】と断じる。だが、それらは初めから分かたれてなどいない。』
光の玉は、その輝きをいっそう激しく放ち、応じる。
「しかり。善と悪は、一条の糸の表裏。同じ一つの器が、見る者の心の鏡によって姿を変えているに過ぎぬ。」
二つの玉は互いの周囲を巡り、光と影の渦を作り出していく。
『光が強ければ影もまた濃く、影が深ければ光はより際立つ。この円環を、誰が断定し得ようか。』
「誰一人として、正邪の天秤を我が物顔で傾けることなどできはしない。すべてはただ、一つの根源へ還る幻影なのだから。」
漆黒と光の境界が溶け合い、やがて混沌たるひとつの渦となったとき、二つの声が重なって響いた。
『「されば歩むが良い。お前たちが信じる、その信念の果てまで。」』




