第77話 意見が通るダンジョン
俺は配信者達を引き連れて、3階層へと最短ルートで向かう。
2階層は罠があるが、一見遠回りな道を選ぶと罠に引っかかることなくスムーズに3階層へと辿り着けるので、それほど時間はかからない。
「このルート教えてもらっても良かったんですか?」
「問題ない。2階層前の〝看板〟にもチュートリアルだと書いてあるような、ただの練習場所だしな」
〔チュートリアル:罠に気を付けよう
※この階層では魔物は出ません
ダンジョンには罠が複数設置してありますので、どんな罠が仕掛けられているか体感してみましょう
殺傷能力の高い罠は設置していませんので安心してください〕
もしも敵を排除したり足止めするための階層なら、殺傷能力の高い罠だって設置するさ。
「あの〝看板〟に魔物は出ないと書いてあるせいで、サキュバスさんとエルフさんが一緒に来れないのは残念ですね。
道中でもっとお話を聞きたかったのに」
ある男がそう言うと、男だけでなく女も揃って頷いていた。
さすが配信者。単純な性欲ではなく、取れ高になりそうなものは逃したくなかったということか。
「あいつらは2階層には入れないから、強制転移で移動させられることになる以上仕方ない」
強制転移は移動時間の短縮というメリットが一応あるが、2階層の広さなど高が知れているし、その階層に魔物が配置できないというデメリットの方が大きいだろうから、チュートリアルじゃなかったらこんな階層創らないな。
「えっと、ダンジョン運営に口出しするのは差し出がましいことかもしれませんが、この2階層にも魔物を配置してもよくありませんか?」
「なんでだ?」
「この階層はダンジョンの罠を体験させるものですが、本来のダンジョンなら罠と魔物が同じ場所にないとは限りませんよね?」
「確かにそうだが、それでもいいのか?」
一応罠に慣れるための階層のつもりなんだが。
「正直あまり取れ高がない――ん゛ん゛っ、ではなく、罠と魔物の警戒を一緒にやれる方が練習になると思うんですよ」
「そっちが本音か」
「あ、あはは……」
取れ高はともかく、その意見は確かに貴重だ。
そもそも普通のダンジョンは俺のダンジョンの1、2階層のような空間が大半であることを考えると、ここで戦闘訓練も行えた方がいいだろう。
「ふむ。なら2階層にも多少魔物を配置するようにするか」
「え、ホントにするんですか!?」
「ダメなのか?」
「いえ、そんな事はありませんけど、まさか意見を聞いてくださるとは思わなかったので」
・配信者の一言で環境変わるの!?
・意見が通るダンジョンとか優しすぎん?
・考えが柔軟すぎて驚いた……!
しのぽんと他の配信者達が驚いており、それぞれが手に持っているスマホに映るリスナーからのコメントも、総じて驚愕しているようだ。
「別に驚く事じゃないだろ。そもそも1階層の魔物部屋と2階層は、国から要望を受けて訓練に使える空間にしてほしいと言われたから、そういう空間を創ったんだからな」
・言われてみれば確かに
・でも個人の意見も聞いてもらえるとは思わなかった
・ならワンチャン、女の子の魔物だけが出る階層も創ってもらえないか!?
・ガタッ!
・ガタッ!
「リスナーからこんな意見も出てますが……」
「それは無理」
・(´・ω・`)そんなー
・(´・ω・`)そんなー
・(´・ω・`)そんなー
リスナーの一体感がすごいな。
「国の人間にも言ったが、俺がダンジョンの改造をするのに必要な魔物やアイテムの類いは、全部ランダムで手に入る仕様なせいで、そんなに思い通りのダンジョンは創れないんだよ。
それにお前らがいう女の子の魔物だけっていうのは、エルフのリィフェリアとかサキュバスのルナのことだろ? ゴブリンやコボルトの雌でもいいなら配置できるが」
・それは求めてないです
・いや、それはそれで……
・えっ!?
一部性癖がこじれているのもいたが、大半はそれは違うという反応だった。
「1階層の〝酒場〟に派遣してるんだから、それで我慢してくれ」
リィフェリアやルナ以外にも、中性的なホムンクルスのイーヴやモフモフ担当ワーキャットシーフのタマなども日替わりで〝酒場〟に顔を出しているので、このお陰か結構人が来るんだよな。
「とりあえず2階層はこの後にでも改装して、ほんの少し魔物が出現するようにしておくことにするから」
・ワクワク
・より訓練が本格的になったな
・ここで死んでしまうようなら、さすがにダンジョンを潜るのは諦めるべき
リスナー達の反応を見る限り、魔物が出るようにしても問題はなさそうだ。
「さて、それじゃあお待ちかねの3階層だ」
「「「おおっ!」」」
配信者達と話しながら辿り着いた3階層の光景に、全員がいいリアクションをしてくれた。
3階層前にある〝看板〟のせいで大半が引き返すが、ここから3階層がどういう場所なのか多少は撮影できるので知っているはずなので、わざとそういう反応をしてリスナーを楽しませているのだろう。
だから驚くのはここからだ。
「この階層では非常に倒しやすい魔物しかいないから、カメラ片手に戦っても大して怪我はしないはずだぞ」
「え、それってつまり、魔石が取り放題ということですか!?」
「ああ、そうだ」
「「「マジか……!」」」
分かりやすい金策に全員が目を輝かせていた。




