第4話 [称号]
「[称号]って滅多に手に入るものじゃないんじゃないのか? 5つもすでにあるんだが」
「そんな馬鹿な!? 1年運営してようやく1つしか手に入らないダンジョンマスターもいるって聞いてたんですけど!?」
それがすでに5つか。
「……ん、あれ? これ、5つじゃなくて4つじゃないですか。いえ、それでも十分おかしいんですけど」
「は?」
マルティアがそう言うので、俺はスマホを改めて確認する。
……1、2、3、4、5。間違いなく5つだよな。
老眼にでもなって数え間違えるとかいうような年じゃないし、体が衰えてるわけでもない。
しかしマルティアの様子を見る限り本気で4つだと思っているようだが、一体なぜ?
「何をしているのですか? とにかく[称号]を確認しましょう。[称号]を得る事で何かしらの特典が得られてるはずです」
マルティアにせかされたから、取り敢えず[称号]の確認をすることにした。
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〈浪費こそ甘美なる幸福〉:ポイントが99以下になるまで消費する行動をする際、幸運値が大幅に上昇する
〈欲望の召喚士〉:[ガチャ]を回すたびにゲージが増え、MAXになるとSR以上が確定で入手できる
〈ダンジョン無計画建築士〉:2つ以上の施設を同時に設置する際、その施設の間に一定数の〝通路〟(罠設置不可)を0ポイントで設置できる
〈妖精泣かせ〉:妖精の感情変動で運の振れ幅を大きくする ※ただしこの[称号]は妖精には感知できず、それを伝えた段階で消失する
〈運頼みの支配者〉:ポイントを使ってアイテムやダンジョン施設を入手する際の消費ポイントが30倍になるが、[ガチャ]によるレア度の高いモノの出現率が上昇する
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「ひぎぃいいいいい!?」
マルティアの引きつるような悲鳴が耳元で響いたから、思わず顔をしかめてしまった。
まあ気持ちは分からなくもない。
マルティアが[称号]の数を数え間違えた理由が〈妖精泣かせ〉にあることが分かったが、それはいい。
それよりも――
「今後は[ガチャ]で全部手に入れろってことだな」
「ひゃぇ~……」
俺は[ガチャ]でしかアイテムなどを手に入れられないと言っても過言ではない状況になってしまったようだ。
そんなマルティアにとっては過酷すぎる現実を叩きつけられたせいで、こんなにも絶望的な表情になったのだろう。
こんな表情になったカワウソのぬいぐるみを見たのは初めてだな。
そんなぬいぐるみを売ってる店なんて、ほぼないだろうから当たり前だろうが。
「〈浪費こそ甘美なる幸福〉、〈ダンジョン無計画建築士〉はまあ悪くない。幸運値とか言われてもピンと来ないが幸運になるなら良い事だし、ポイントを使わずに〝通路〟の設置ができるのはありがたい」
〝通路〟は残念ながら直線でしか配置できないから単純な構造になってしまうが、それでも〝部屋〟と〝部屋〟の間には〝通路〟が必須らしいので、これで[ガチャ]で〝部屋〟ばかりが被っても設置できないということはないな。
「で、問題の他の[称号]か」
〈妖精泣かせ〉は運の振れ幅を大きくするから悪くもなるが、[ガチャ]ならいらないNで同じのが何個も被るのがせいぜいであり、運が良ければUR、LRを狙えるのなら悪くない。
ただマルティアに伝えられない以上、この[称号]を無理やり活用しようと酷い目に遭わせて感情を揺さぶろうとしようものなら、下手すれば関係性が悪くなる[称号]だな。
「〈欲望の召喚士〉に〈運頼みの支配者〉、ね」
〈欲望の召喚士〉の効果か、[ガチャ]を見るとそこには先ほどまでなかった10マスのゲージが存在していた。
いや、これただの最低保証!!
昨今のソシャゲのガチャなら大抵ついてるやつだろ!
「しかしダンジョンの[ガチャ]には初め最低保証がなかったことを考えると、最初の闇を感じる[ガチャ]からは[称号]のお陰でかなりマシになったな」
先ほど100連回して1個しかSRが出なかったから、今後はそこまで渋くないのはありがたい。
今後[ガチャ]を回さなければそんな心配はないのだが、2つの事情が俺にそれを許さない。
1つは当然【挑戦・賭博願望】。
これのせいで[ガチャ]を回さないという選択肢は俺の中にはない。
もう1つが[称号]、〈運頼みの支配者〉。
「メリットはあるがデメリットがデカすぎるな」
メリットは単純にN、R、SR、UR、LRとSR以上の排出率が渋いのは先ほどの[ガチャ]で証明されているが、次からはSR以上が出やすくなるのだろう。
具体的な排出率が分からないから、この[称号]でどれだけマシになるかは未知数だが悪くない。
問題はデメリットとして、ポイントで交換できるダンジョン施設やアイテムなどの必要ポイントが30倍になってること。
〝部屋〟は普通なら30Pで交換できるのに、俺はそれを900Pで交換しないといけない。
[ガチャ]9回分と考えると非常に勿体ないな。
しかもこれ、まだ安い部類のモノだからまだ何とか交換できそうって思うだけで、他にも色々交換で賄おうとしたら、1万ポイントあっても今回[ガチャ]で出てきたものよりショボいダンジョンになってしまうだろう。
「神様。これは私に対する試練なのですか……」
シクシク泣き出すマルティアを横目に、とりあえずやるしかないと凹むマルティアから情報を引き出して、どうやって生き残るのかを改めて考えていった。
そうしてあっという間に時は流れ、3日経ち、俺のダンジョンを解放する時がきた。




