第131話 配信(3)
「そういえば今更だが、お前らよくここに来れたな。人の被害もあるだろうが、何より魔物達が人工物を破壊しまくったから、その復興に忙しいんじゃないのか?」
「あれ? マスターさんは知らないんですか?
あの試練が終わった後、天の声が『特例により壊れた建造物等の復元が行われる』とか言って、物は全部修復されたんですよ」
「へえ、そうなのか。俺のダンジョンの近くにある建物にあったパソコンは軒並み破壊したが、それも復元されたんだな」
俺達ダンジョンマスターには魔物が復活するようにしてくれたし、人間側にはそういう補償を与えたということなのか。
まさかとは思うが、仕事場やパソコンなどの仕事道具が無くなれば職を失い、生活の糧を得るためにダンジョンに潜らせることができると目論んだはいいが、思いの外人工物の破壊による被害が想定よりも大きすぎて、壊れた物を復元しないと人間達がダンジョンに入る余裕すらなくなったから仕方なく特例が行われた、ってことはないよな?
・なんかとんでもない事言ってる!?
・復元されてなかったら無職になるところだった……
・無職の方がまだマシな気がする。復旧に何日何週間会社に泊まり込みになるか分かったもんじゃないぞ!
「な、なんでそんな事したんですか!?」
「ダンジョンマスター側の試練、といったところか。魔物がダンジョン外で◆♪〇▼〇□$▲%」
「あの、途中から何を言っているのか聞き取れませんでしたわ」
・『魔物がダンジョン外で』まで聞こえた
・魔物をいかに制御するかの試練、とか?
・人を攻撃させないために、代替行動として物を破壊させてたってこと?
試練の前と同じで、イベントの内容とかあまり詳しい説明はできないか。
だが伝わった範囲で勝手に推測してくれており、それがそんなに的外れでもないので問題はないな。
「悪いな。こちらの事情は説明できないようだ」
「それはもう仕方ないんじゃないですか。どう頑張っても伝えられないんですから」
「そう言ってくれると助かる」
イベントの話の後、他にも色々話していたら配信時間がそこそこ経ち、ある程度悪感情を減らすという目的も達成したので、そろそろ終わりにしようというところで、スパチャでこのコメントがとんできた。
・¥50000 ナオト(仮)以外のダンジョンマスターを倒すのに協力してくれませんか?
スパチャで投げられる最大限度額で来たコメントであるし、何より内容が他のダンジョンマスターのこととなると無視するわけにはいかない。
「ス、スパチャありがとうございます。……マスター様、他のダンジョンマスターを倒す協力ってできるんですか?」
「協力って言われてもな。すでに俺のダンジョンの1~4階層を、ダンジョンに慣れるための場所として提供してるんだが」
「1階層でジョブを得て、2階層でダンジョンの歩き方、3、4階層で魔物を倒して強くなれるようにしてくれてるよね!」
「ですが、この方はそう言う事を言いたいわけではないですよね。
武器やアイテムなどの支援、さらには他のダンジョンにマスター様が攻撃できないか、と言ったところですか」
・ナオト(仮)がそこまでしてくれたら確かにありがたいけど……
・欲張りすぎて草
・今でもかなり人類のために色々してくれてるけど、全面協力してくれるならこれほど心強いことはないのは確か
ハッキリ言って出来なくはない。
[ガチャ]で手に入れた〝宝箱用アイテム〟がかなりあるし、〝希釈の錬金窯〟にR以上の物を投入すれば数も増やせるのだから、武器やアイテムの支援は一応やれる。
だが、下手にそんな事をすれば人類が俺に対してタダで物を要求しだして、せっかくの〝商人の間〟が機能しなくなってしまう。
その上、仮に一度でもそんな事をしだしたら、間違いなく人間は調子にのってもっと寄こせと言うだろうし、それを断ったら『やっぱりダンジョンマスターは人類の敵なんだ』とか言ってくるに決まってる。
「さすがに無償で協力は無理だな。そんな事をすれば俺のダンジョンが干上がって、ダンジョンマスターにとっての試練が来た時に生き残れなくなってしまう」
試練というかイベントなのだが、ここは分かりやすく試練と言っておこう。
「先日の人類にとっての試練もさっき言った通りダンジョンマスターにとっても試練だったんだが、それ以外だと1年ほど前だな。
日本だけで1万ものダンジョンがあったのは知ってるか?」
「え、そんなにあったんですか?」
「今はその半分ほどになってるが、試練を越えられなかったダンジョンマスターが滅びたんだ」
ダンジョンバトルによるダンジョンマスター同士の戦いの結果だが、それを話すと何それ? となって話が進まないので割愛。
「今回の試練はそういった危険はなかったが、代わりに%〇▼♪◆$▲〇□」
「あ、あの、代わりにから先が聞こえなかったです」
「そうか。これも伝えられないのか」
・代わりに一体何があったんだ……
・ナオト(仮)の様子を見る限りそれはまぬがれたっぽいが
・滅ぼされる代わりとなると、かなりヤバそうなペナルティがありそう
他のダンジョンマスターに隷属させられることになる、って言うこともできないようだが、深刻な何かが起こると伝わったならいいな。
「とにかくそういう訳だ。あまり力になれなくてスマンな」
「いえ。マスター様には十分助けられていますよ。対価を払えばポーションをくださるだけでも、私にとっては大変ありがたいことでしたし」
・そうだよな。そこまでしてもらってるだけでも十分ありがたいことだよ
・これ以上はただのタカリか
・強くなる場所を提供してくれて、アイテムの交換もできるしな
・え、ここはナオトが身を切る思いで動くべきだろ
一部のリスナー以外は夕莉の実感のこもった言葉に共感して、これ以上の協力を求めるのは違うよね、という感じになっているな。
夕莉の発言を聞いてなお、自分本位の発言しかできない一部のリスナーは頭おかしいだろ。
「俺からできることは、人間に協力的になったダンジョンを紹介することくらいか」
俺は配信の〆にリオンのスライムしかいないダンジョンを紹介して、配信は終了した。




