第122話 交流場
カグラは興味深そうに周囲を見渡しながらこちらへと近づいてきた。
そうなる気持ちもよく分かる。
俺もここに入った時には、まさかこんな空間が生まれると思わなかったんだから、初期のダンジョンコアと同じ内装であっても見渡してしまう。
先程リオンとダンジョンコアを連結した際、この共同空間が生まれた。
具体的には、自身のダンジョンコア内の何も無かった場所に、突然無機質な扉が現れたのだ。
その扉から中に入ると、この共同空間があったというわけである。
この場所では互いに危害を加えることができず、自分のダンジョンコア内に繋がる扉以外の扉を通ることができない仕様だった。
そのため仮に裏切者がいたとしても、少なくともこの共同空間で殺されることもなければ、勝手に自身のダンジョンコア内に侵入されて荒らされるという心配はない。
「こうして直接会うのは初めてね」
「ああそうだな。それにしても俺が言うのもなんだが、よくダンジョンコア連結をする気になったな。
ここでは直接危害を加えられることは無いとはいえ、何があるか分からないっていうのに」
しかもこっちは成人男性であり異性だ。もっと警戒してもいいと思うんだが。
「そんな自分を卑下するような事言わないでほしいわね。私はナオトさんの事を信用してるし、頼りにしているわ。
以前他のダンジョンマスターに隷属していたところを救ってもらったし、今回のイベントでは重要なアドバイスをもらったもの。
そんな相手を今更疑ったりも警戒したりもしないわよ」
「そうか」
面と向かって信用していると言われるのは思いの外照れるな。
ダンジョンマスターになる前には、こんな言葉をかけられた覚えもないから余計にだ。
そんな風に言われたら下手に信用を損ねるようなことはできないし、俺としてももっと頼りにしてもらえるよう頑張りたいと思ってしまう。
「それで、その子はやっぱり今回のイベントで隷属したダンジョンマスターってことでいいのよね?」
「ああ。俺はイベントの順位が37位だったから、その特典でな」
「嘘でしょ? 中間発表では4000番台だったはずなのに、何をやったらその順位になったのよ?」
「判定外行動ボーナスとアワードボーナスのせいだな」
お陰ではなくせいである。
望んでこの順位になったわけではないのだから。
俺が〝希釈の錬金窯〟で〝ポーション(弱)〟を13万6068本用意して人間達に渡したのと、【誘引者アワード】によって10万点手に入れたことを話すと、呆れた表情でこちらを見られた。
「そんなにも〝ポーション(弱)〟を配るのなんて、ナオトさんしか無理ね。私が配った数は600本だけど、それでもイベント中に得た負の感情エネルギーによるポイントの三分の一を消費してようやくなのよ」
「〝希釈の錬金窯〟と〝エリクサー〟のお陰だな」
「すごい大胆な使い方よね。私だったら〝エリクサー〟を手に入れて、そんな行動取れる自信はないわ」
「どうせ人間に渡すしか使い道ないのにか?」
「交換に使えるなら持っておくと思うわ」
〝エリクサー〟並のアイテムが手に入るかもしれないと思うと、そう簡単に手放せるものじゃないという気持ちは理解できる。
それはさておき、今後の事だ。
俺はこの何もない空間に〝中古住宅〟を出現させて、ここで話し合いをしようと提案する。
この空間でも日用品の類いなら出現させられるようだ。
「うわっ……こんなのポンっと出すなんて、ポイントは大丈夫なの?」
「今回のイベントで順位が上だったから、相応のポイントがイベント特典で貰えてるから心配しなくていいぞ。
それにこれは[ガチャ]で出たハズレアイテムだから尚更な」
「これでハズレなのね……」
これ、Rだからな。
Rの日用品の中ではそこそこいい代物ではあるが、俺が普段生活している〝古民家〟よりこじんまりしていて家具などは一切ないから、完全にガワだけなんだよ。
〝古民家〟はそのまま住める程度に最低限物が揃ってたからこそ、SRだったんだろう。
俺は家に入ると適当に机と椅子を設置して、話し合いができる場所を用意する。
「ところでこの子、さっきから一切喋らないんだけど何でなの?」
『すまない。この子は基本無口なのだ』
「声渋」
その後、リオンの腕に抱えられているカルヴァは、リオンと自身の自己紹介をカグラにした。
『リオン共々よろしくお願いする』
「ええ、よろしく」
カグラは割とあっさりとリオン達を受け入れると、俺の方を向いた。
「無いとは思うけど、言う事聞かせられるからって、こんな幼い子に手を出しちゃダメよ」
「出さねえよ」
俺を何だと思ってるんだ。
ロリコンじゃねえんだよ。
「とにかく、これで俺達は完全に協力関係になった。もしも困ったことがあったらお互いに出来る範囲で助け合おう」
「分かったわ」
「………(コクコク)」
カグラとリオンが共に頷いたのを見て、机に[ガチャ]や〝おつまみガチャ〟で手に入れたいくつもの料理や飲み物を取り出していく。
「これは?」
「せっかくだし、完全な協力関係になった記念にパーティーでもしようと思ったんだが嫌か?」
「それは嬉しいけど、ナオトさんにばかり負担をかけてるじゃない」
「そんな負担でもないぞ。[ガチャ]で余りまくってる料理や、実質タダで手に入った料理ばかりだし。
だからそんな事気にせず、パーッと楽しんでくれればいいぞ」
「そう? それじゃあお言葉に甘えて」
カグラは納得し、リオンは机の上いっぱいに並べられてる料理に目を輝かせていた。
「それじゃあ、これからも大変なことがあると思うが、お互い協力して生き残っていこう。乾杯!」
「「乾杯!(……!)」」
俺達はこうして親睦を深め、互いに助け合う仲間へとなっていった。




