第12話 神託
※交渉専門官の中村がダンジョンから帰った直後のこと。
中村との交渉が終わり一息ついたが、まだやらないといけないことがあるからのんびりしている場合じゃない。
とはいえ、いくつかの山場は超えてあとはダンジョンを大きくしていくだけだし、そもそも[ガチャ]を一度も回せないポイント分しか貯まっていないので、せいぜいそれを並べる程度しかできないのだが。
「さて、じゃあ机はもういいから入口近くの邪魔にならないところに避けとくか」
「盾にも障害物としても頼りなさすぎますから、意味ないですものね」
せいぜい精神的な余裕が出来るというくらいか。
それがあったお陰で中村とまともに交渉できたのはあるから、十分役立ってはくれたわけだが。
「あの机は今後人類の意見を回収するための設備だな。あとは適当な箱を……」
「どうしたんですか?」
「いや、箱が無いなと思って」
[ガチャ]から出た物を確認した限りでは、人類の意見を書いてもらえそうな〝メモ用紙〟や〝マジックペン〟はあるのだが、そんなものは人類が勝手に用意すればいい。
問題は目安箱になりそうな箱が無いのだ。
「……これでいいか」
「え、それをどうするつもりなんですか?」
取り出したのは〝観葉植物〟。
俺は植木鉢に入ってる土と植物を逆さにして捨てると、その植木鉢をドンっと机の上に出現させた。
「これでよし」
「え~。なんだかみすぼらしいですし、人類側もあれに意見書を入れるって分かってもらえますかね?」
「じゃあ〝看板〟も置くか。あれがどういうつもりで置いてあるかの説明はできるしな」
〔意見書はこちらの植木鉢に〕
「これなら人類側も分かるだろ?」
「分かるでしょうけど、個人的にはすごく嫌ですね」
あるもので何とかしていかなくちゃいけないんだから、わがまま言うんじゃない。
「まあいいです。そんな事よりもようやくまともなダンジョンが創れることの方が大事なのですから」
「1部屋しかない今の現状だとダンジョンだなんて言えないからな」
さて、それじゃあ次は元から置いておいた看板を撤去して、使えるモノ全部使うつもりでダンジョンを構築して――
――ゴォォン、ゴォォン
「な、なんだ!?」
急に鐘のような重厚な音が周囲に響き、慌てて周囲を見渡すも特に何もなかった。
一体何なんだ?
「こ、これは神様からの通達音!」
マルティアが慌てて膝をつき、頭を垂れる。
「神託が……! 間違いなく神様からのメッセージです!」
俺は緊張しながらも耳を澄ませ、次の音を待った。
すると空気が震え、シャンっとベルのような音と共に淡い光の文字が宙に浮かび上がる。
そこには――
〖ダンジョンマスターよ、次なる試練に備えよ〗
と刻まれていた。
それと同時に勝手にスマホが目の前に出現して、今すぐ操作しろと言わんばかりに主張していた。
「一体何なんだ……?」
「何がありましたか!?」
マルティアは頭を上げて膝をつくのを止め、すぐに僕の肩に乗ってきたが、それよりもスマホの方だ。
すぐに画面をタップして操作すると、そこには〖お知らせ〗と記載があった。
……これやっぱりソシャゲだろ。
そう思いながら〖お知らせ〗に何が書いてあるか確認していくと――
「いやああああぁ!!?」
「うるさっ!?」
俺の肩に乗って〖お知らせ〗の内容を一緒に確認していたマルティアが絶叫した。
あまりにもうるさかったので、すぐにマルティアが乗ってる側の耳を塞いだ後マルティアの首を摘まみ上げるが、マルティアは一切抵抗せずされるがままだった。
その表情は真っ白に燃え尽きており、数日前にも浮かべていた絶望顔そのものだった。
まあ気持ちは分からなくもないが。
「なんで……。ようやくこれからダンジョンが創れそうってタイミングでなんで……。ハ、ハハ……」
泣き笑いしているマルティアを横目に俺は改めて〖お知らせ〗を確認することにした。
・ダンジョンランキング開催
・ダンジョンマスター同士の交流プラットフォーム実装
・ダンジョンバトル一カ月後に開催予定
上2つはまあいい。
ダンジョンランキングは月間ごとに順位付けされ、上位だと報酬が貰えるのだが、確認したところぶっちぎりの最下位である俺達には関係ない。
ダンジョンマスター同士の交流プラットフォームも、ダンジョンマスター用のSNSや掲示板が実装された、ってだけで大した話じゃない。
問題はダンジョンバトルが開催されることだ。
一カ月後に行われるダンジョンバトルは強制イベントであり、不参加はどうやら認められない模様。
しかし未だ1部屋しかなく、完全にスタートダッシュに遅れている俺達がダンジョンバトルをやろうものなら敗北は必須。
そりゃマルティアも叫びたくもなるわ。
なんとか人類から破壊されないよう上手く交渉できた矢先、ホッと一息つく間もなく次に備えないといけないのだからやってられない。
「とはいえ、やるしかねえんだよな」
嘆いたところでダンジョンバトルをしなくて済むわけじゃないんだし、手持ちのカードを全て駆使して乗り越えるしかない。
「ただ幸いなのが一カ月後なこと、か」
これがもしも初めにダンジョンを創っていた時みたいに3日後だったら完全に詰んでた。
「ポイントがどれだけ貯まるかと、[ガチャ]運次第だな。ククッ」
「こ、こんな状況なのに、また[ガチャ]を回してた時みたいな嫌な笑顔浮かべてる……」
「泣きわめいて落ち込むよりはマシだろうが」
それじゃあ一先ずは、頭のねじが飛んでる人間が入ってきてダンジョンコアが壊されないよう、少しはダンジョンを大きくしておくかね。




