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運で決まる。ガチャつく現代ダンジョン  作者: 甘井雨玉
1章

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第1話 始まり


「――っ! ―――――!」


 ――スゥスゥ


「おき―っ! おき――い!」


 ん、んん? なんだ、うるさいなぁ。

 昨日は休日出勤でしかも夜遅くまで仕事だったんだから、ゆっくり寝かせて――


「起きてっ! 起きてくださーい!」

「うおっ!?」


 耳元の痛いくらいの騒音に思わず目を開けると、そこにはカワウソをデフォルメした何かが目の前にいた。


「……こんなファンシーなぬいぐるみを買った覚えはないんだが?」

「誰がぬいぐるみですか」

「シャ、シャァベッタァァァァァァ!?」


 あまりにも自然に話してきたそれに思わず後ずさり――あれ? ベッドは?

 というか、何もないんだが!?


 俺は周囲を慌てて確かめると、そこは真っ白な空間。

 机やベッドなどの家具はなく、新しく買い替えたばかりのゲーミングPCもない。


「拉致されたのか!?」

「これが普通の拉致だと思うのですか?」


 そう言われて俺は冷静になって今の状況を確認する。拘束されずに変な空間にいて、変なカワウソのぬいぐるみが目の前にいる。

 あ、なるほど。


「夢か」

「寝ないでください!」


 床に横たわった瞬間、ペシンと痛くもない攻撃をぬいぐるみにされた。


「痛くないし、やっぱり夢か」

「ああ、もう! 夢とか思ったままでいいから私の話を聞いてください!」

「うるさい……」


 出来れば無視して夢の中でまたひと眠りしたいところだけど、耳元でギャンギャン言われてたら寝る事もできないじゃないか。

 仕方なく俺は体を起こすと、ぬいぐるみは満足そうに頷いていた。


「ようやく説明できますね」

「説明って何のだ?」

「はい。あなたはダンジョンマスターに選ばれました。そのためあなたにダンジョンの創り方を説明したいと思います」

「は?」


 ダンジョンマスターに選ばれたとか、なんて荒唐無稽な夢なんだ。

 でもちょっと面白そうだし話を聞いてみるか。


「まず自己紹介から始めましょう。私はマルティア。ダンジョンマスターのサポート妖精です」

「サポート妖精?」

「ええ。あなたがつつがなくダンジョンを運営できるように派遣された、秘書のようなものだと思ってください」


 ソシャゲで言うところのナビゲーターってところね。

 チュートリアルで説明してくれる、よくある都合のいいキャラと。


「なにか失礼な事考えてませんか?」

「気にしないで続きの説明してくれるか?」

「むむっ、納得いきませんがやる気があるのは嬉しいので了解しました」


 ちょっと不満そうな表情をしながらも、マルティアはどうやってダンジョンを創っていくのか教えてくれた。

 スマホで。


 ……なんで近未来的な感じで、空中にホログラムとか半透明のスクリーンが出て来たりするんじゃないんだろ?

 俺の夢だから自分がリアルに想像できるものになってるんだろうか?


 まあいい。

 マルティアが説明してくれたけど、よくあるソシャゲと同じ操作方法だったからすごく馴染みやすく、どうすればダンジョンを創れるのか頭にスッと入ってくるな。


 それにしてもソシャゲか。

 親に形に残らないデータにお金を使うだなんて馬鹿らしいと言われ続けたせいか、自分で金を稼ぐようになっても課金とかほぼした事ないんだよなぁ。


 そんな事をマルティアの説明を聞きながら思ってた時だった。


「……ん? [ガチャ]?」


 スマホのホーム画面に、[建設][ポイント交換][侵入者ログ]と色々ある中で、ふとそれが目に入った。


「ああ、それは止めた方がいいですよ。魔物からダンジョン施設、日用品まで幅広く沢山のアイテムが出て来ますが、排出率が酷すぎてベテランのダンジョンマスターが極まれに気まぐれにしか回しません。

 レアリティが下からN(ノーマル)R(レア)SR(エスレア)UR(ウルレア)LR(レジェンドレア)とあるんですが、ほぼNしか出なくて、たまにRが出る程度で、最低保証もないんですよ。

 聞いた話じゃLRで特殊な設備が出て、人間から負の感情エネルギーが集めやすくなってポイントがウハウハになった、ってのがあるらしいですけど、そんなの宝くじで1等を当てるようなものですから、気にしない方がいいです」


 なるほど。

 確かにそれなら誰も回さないな。

 昔のソシャゲでもそこまで排出率は酷くないし、昨今のなら最低保証くらいはあるというのに、ここまで射幸心をそそられないガチャも珍しい。










 だからこそ回したい。




 こんなまるで金をドブに捨てる様な行為に全財産を突っ込み、一発逆転を狙って勝ちたい欲求が、不思議と俺の心の奥底から湧いてきた。


「あっ、何故[ガチャ]を選択するのですか!? 言いましたよね! ロクなモノが出て来ないって!」

「確かにLRなら宝くじ1等ならだいたい2,000万分の1だから0.000005%の確率だ。だけど単純に当たるか当たらないかは半々の確率。つまり五分だ」

「んなわけねえです! どんな確率の考え方ですか。絶対に止めてください!」

「口ではそう言うけど物理的には止めないならOK?」

「サポート妖精にはダンジョン創造関連において物理的介入が許されてないから、無理やり止められないだけです!」

「そっか。でも悪いな。ダメだって言われても、何故か回したくて仕方ないんだ」


 俺がそう言うとマルティアはハッとした表情を浮かべた。


「ま、まさかこの人……………はぁ!? 【挑戦・賭博願望】持ち!?

 真面目でコツコツ無難に生きてる人間を選んだのに、心の奥底ではそんな願望を抱えてただなんて……!」


 何か操作して調べた後驚いていたけど、止められないなら都合がいい。

 配布されてるポイントは1万。[ガチャ]は1回100ポイント。

 つまり100回まわせるな。


「やめて! そんなのにポイントを使わないで!」

「どうせ夢だし、思い切って行こうぜ!」

「いやーーーーー!!!!!」



「ゴ、ゴミばかり……。終わった、何もかも……」


 マルティアが床に膝を突いて嘆いていた。

 それもそうだろう。


 俺が[ガチャ]を回した結果、N78個、R21個、SR1個という結果になったのだから。


 SRが出てるからいいじゃん、とはならない。

 何故ならこのSR、〝抹茶パフェ食べ放題チケット〟なのだ。

 ダンジョンを創る上でどう使えと?


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