表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/36

第七話 本気だから

牡丹(ぼたん)さん……」


「誰ですか?」


「村長のお孫さんだ」


「これから経営する会社のことを伝えにきたの。

 聖くんのところと、ライバル会社になりそうだから。

 あたしの会社は農業だけじゃなくて、酪農もする予定よ。

 会社名は、ボタンファームっていうから覚えておいてね」


「決まってよかったな」


「経営が破綻しそうになったら、うちの会社を頼っていいから。

 あら……。手伝いのおばちゃんが老人ホームに行ってから困っていなかったのは、その若い女の子を雇っていたからなの?」


「はじめまして。瀬戸蒔菜と申します」


 深く頭を下げてから、にこっと笑って挨拶をした。

 すると、牡丹さんが私の前に立って顔を覗き込んでくる。


「あなた、聖くんのこと狙ってる?」


「はい……?」


「そんなわけないわよね。……だって、あたしが婚約者だもの」


「えっ!?」


 驚くとともに嫌な気持ちになった私は口元を両手で隠す。


「違う。牡丹さんと結婚しないと何度も言ってるだろ」


 よかった……。婚約したわけではないんだ。


 聖さんがはっきりと断ってくれてほっとする。


「何度断られたって諦めないわよ。

 あたしと結婚しないと、この土地がどうなるか分かって言ってる?」


「くっ……」


「聖くんの土地を買い取られないように、あたしのパパが味方になってくれているでしょ。

 もし、パパが守ってくれなかったら、ここは高速道路の建設予定地になっていた。

 恩があるってことを忘れないでよね」


 そんな話は聞いたことがなかった。


「守ってもらっていることには感謝している。

 でも、結婚の話は別だ」


「一緒よ。この村には、あたしと聖くん以外に若者がいないもの。

 山にいたら出会いがないでしょ?

 婚期を逃さないように言ってるの」


 聖さんは背後に来て、両手を私の肩にのせる。


「若者なら、もうひとりいるぞ。

 俺は、蒔菜のことを大切に想っているから」


 その言葉が嬉しくて口元が緩んでしまう。


「はあ!? 付き合いが長いのはあたしだっていうのに!?」


 牡丹さんは眉根を寄せて腕を組んでいる。


 怒らせてしまったようだ。


「本気だから、牡丹さんと結婚するつもりはない」


「時間をあげるから考え直して。

 ……ねぇ、あなた。どこから来たのか知らないけど、調子に乗らないでくれるかしら」


 嫌味を言いながら鋭い視線を私に向けてきた。


 でも、聖さんのさっきの言葉のおかげで平然を保っていられる。


「東京から来ました」


「都会からこのど田舎に就職しに来たですって?

 不便だし、寒いし、雪がいっぱい降る……。

 厳しい場所だから帰ったほうがいいわよ」


「帰りません。私は自然豊かな場所に住みたくて来たんです」


「変わった人ね。

 聖くん、この女に騙されてるんじゃない?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ