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第四話 あなたに救われて

 どうやら私が選んだところは、住民が少ない場所だったようだ。


「でも、泊まれるところくらいありますよね?

 それがなかったら、二十四時間営業のファミレスとかカラオケとか……」


「ない。午後七時にはどの店も閉まっている」


 まだ夜になったばかりだというのに、開いている店がないなんて信じられなかった。



「ここから一時間以上掛かるけど、隣の市まで送るか?

 開いている店があるか分からないけどな」


「助かります。ガソリン代は払いますので……」


 リュックから財布を取り出そうとした時、入ってないことに気がついた。


 最後にお金を使ったのは、バスの運賃を準備していた時だ。


 恐らく、財布をバスの座席に置いてきてしまったんだろう。


「お金がないです……」


「詰んだな」


 聖さんは、冷静な口調で言った。


 街に行ってもお金がないから泊まることも、食事をすることもできない。


 まさか、仕事の次にお金を失うなんて……。



「ここはクマやイノシシが出るから危険だ。

 ……うちに来るか?」


「えっ……。それは、ちょっと……」


 知らない男性について行くことも危ない。


「きみが想像しているような無礼なことはしない。

 信じてもらえないと思うけど……」


「そうですね。難しいです」


「田舎は噂がすぐに広まる。悪いことだと特にな。

 きみを放っておくこともできるけど、クマに襲われたらどうなると思う?

 見捨てた俺は悪者になり、ここに住んでいられなくなるだろう。

 俺はこの限界集落でやりたいことがあるから、悪い噂は広めたくないんだ」


 この男性を頼ること以外に手段がない。


 それに、クマやイノシシに襲われるのは嫌だ。


 私は生きるために、聖さんを信じることにした。



 軽トラックに乗って向かった場所は、大きな庭のある古民家だった。


 どうやら一人で住んでいるらしい。


 そこで聖さんは私の分の食事を用意してくれた。


 二人分の家庭料理が古びたちゃぶ台の上に並ぶ。


 縦長い茎のようなものが混ざっている炊き込みご飯、キノコとネギが入った味噌汁、だし巻き卵、野菜の天ぷら。


 見たことがない料理がいくつかあるけど、いい匂いがするし、見た目は美味しそうだ。


「だし巻き卵と天ぷら以外は作り置きしていたもので悪いな」


「そんなことありません。

 助けてくれただけでなく、ご飯もご馳走していただけるなんて、なんてお礼をしたらいいか。

 あの、ご飯に混ざっている黒っぽい茎はなんですか……?」


「それはわらびだ」


「これが、わらび……。

 天ぷらにした野菜は、アスパラガスですか?」


「タラの芽という山菜だ」


「山菜……」

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