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第二十話 それは偶然に……

「村長はウリ坊と犬を間違えたショックで熱を出していたと聞きます。

 だから、答えられなかったとか」


「その噂、どこから聞いたのよ!?

 ウリ坊が可愛かったせいで、あたしも犬かと思っていたの!」


 ここで笑ってしまったら、また責められてしまうかもしれない。


 お盆に置いた湯呑にお茶を注ぐことに集中しよう。


 話を変えるためなのか、牡丹さんはごほんっと咳払いをした。


「パパの返事は……、“いいんじゃないか”ですって。

 そういうことで、蒔菜さんには出て行ってもらうから」


「……嘘ですよね」


 急須を置いてから両手でお盆を持ち、牡丹さんの方を振り向く。


 確かめるために目を合わせてみると、慌てるように視線を逸らされた。


 でも、すぐに真面目な顔をして私を見てくる。


「本当のことを言っているから。

 あと、聖くんの持っている土地を買い取ろうと思っているの。

 ボタンファームの果樹園にするつもりよ」


「聖さんの家がなくなってしまうんですか……?

 村長が守ってくれたっていうのに?」


「それとこれは別の話よ。

 悪い話じゃないわ。山や畑の管理が今以上にしっかりできるもの。

 あたしの会社が土地を所有することによって、聖くんの思い出の場所を守っていける。

 ひとりで暮らしていると、いつ、どうなるか分からないじゃない?」


「私も住んでいますよ」


「さっき引っ越せって言ったでしょ。

 答えは日曜日に聞きに行くから。

 この話を聖くんに伝えておいて」


「…………」


 牡丹さんはソファから立ち上がって、玄関に向かって歩いていく。


 私は両手でお盆を持ちながら見ていることしかできなかった。


「やばっ。じゃがいもが落ちた。

 聖に怒られちゃうな」


 ドアが開いた時、玲司さんの声が聞こえてきた。


 きっと、農家さんが持ってきた野菜を運んでいるんだろう。


 玄関を出る前に牡丹さんは振り返り、不気味な笑みを私に見せてくる。


「今すぐに引っ越し先を決めることね。

 ……って、ぎゃああああ!!」


 そして、外に一歩踏み出したあとに盛大に転倒して悲鳴を上げた。


 派手な服が泥で汚れて、整っていた髪がくしゃくしゃになっている。


「いたたた……。最悪だわ……。

 誰よ!? こんなところに芋を置いたやつは!」


 地面を見るとじゃがいもが一個だけ転がっていた。


 どうやら牡丹さんはそれを踏んだみたいだ。


「ごめんね。ダンボールに穴が開いていたもので……」


 玲司さんがやってきて牡丹さんに頭を下げる。


「有り得ないわ。

 こんなミスをする従業員なんてクビにしろって聖くんに言うから」


「きみも有り得ないよ。

 ……出されたお茶くらい飲んでいきな」


 謝った時の玲司さんの顔は明るかったのに、急に冷たい表情をする。


 普段より声が低くて迫力があった。


 それが怖かったのか、牡丹さんの顔から怒りが消える。


「何なのよ……。

 ……あなたの顔、ある有名人にすごく似てるわね」

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