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真相 Ⅱ

いらっしゃいませ~

 大量の紙束をもって領主館を目指す。

 結局、マドリーノ云々については知ることは出来なかった。

 

 「衛兵隊隊長スルガ及び書記一名。冒険者ギルドのギルド長ロラン参りました。領主様への取次お願いします」

  「聞いています。どうぞこちらへ!」

 

 さあ、本番だ。納得してくれれば良いが……直ぐに領主の部屋に通された。そこにはげっそりとした領主様が。

 「スルガか、ご苦労。おう、ロランも久しいなぁ……王都で活躍してると聞いていたが……」

 「お久しぶりにございます。サーラサ様。此度はギルドの腐敗の内偵調査に来てました……。王都報告中にまた……ここまでとは思っていませんでした。ギルドからの報告などは後程、王都本部より参りましょう」

 「言葉使いも気にするな。誰もおらぬし、些細なことだ。この件に比べれば」

 「「はい」」

 「まずは概要を……」 

 

 ……


 「ふぅ。スルガよ、この報告は本当か……」

 「その前に、単刀直入にお聞きします。マドリーノ様についてです。名鑑にも乗っておらず。申し送りも今までなかったと記憶してます。御認知は?」

 「ああ、父上が商人の娘に産ませた庶子だ。20年くらい前か……婿を迎えるとか?……その時に知った。そのまま商人として生きるとのことだったので父上が屋敷の一つを贈ってそれきりだ」

 「そのようなことが……」

 「他にも7人いる……」

 は、はぁ?

 「そ、そんなに? ……名君と謳われた方でしたが……」

 「ふふふ。それで、甥になるヤザンとやらの評判は?」

 「素行は悪く、短気。乱暴者、今なら納得ですが、他人を下に見る風が……」

 貴族特有といったところ……か

 「ふっ……俺もそうか? スルガ?」

 ……どう答えろと?

 「……領主ですし? 威厳ってことで?」

 「……はっきりせんな」

 「そこは置いておいて、問題になってるのは、妹君が、”領主の妹”として命を下してること。恐らくヤザンを匿っているか、逃がしていること。今現在、行方の知れないギルド代行、所属メンバーが囚われてる。また、口封じの可能性」

 「それで……どういたしましょう?」

 「どう。とは?」

 「このまま、貴族の特権・矜持を行使するか、ヤザン、母親を……一族に罪を問うか」

 「ふぅむ……平民の言うことなど……ということか」

 「ええ」

 「その子は元気なのであろう?」

 「ええ。恐らくは勇者の超魔法で」

 「……本当は死んでいてもおかしくない怪我だったよ。診療所の先生の腕がよかった」

 「ふぅ……いっそのこと、 「領主様その先は……」 解っている。解ってはいるがな……面倒な」

 気持ちも解る。解るがどのみち、そんな権力をはき違えた屑。放っておいても家の為にはならんだろうさ。

 「あんまり無理なことはお控えください。この国に居られなくなっても問題ないし。人質を取ろうにも、そこまでのつながりのある者もいない。獣人の子供を壁代わりに並べますか? それこそ他の国からいい笑いものですよ。そしてその後は報復あるのみ。”勇者様"対”人類国家”の戦端を開きますか? 触らなければ何の問題もない気の良い奴らなんですよ。ほんとに」

 「ヤザンという甥の話も聞いておかねばな。スルガ、中央の衛兵長とともに連行してこい。マドリーノもついでにな。後、馬車の事件の貴族については……保留だ」

 「はっ!」

 

 …… 


 ……というわけだ」

 「……」

 中央部衛兵隊長、名はキャラル。若く綺麗な金髪の誰が見ても振り返るほどの美人さんだ。その年齢、女性、特に実績も無く隊長職に……その点で色々噂は囁かれるがな。それに……

  「はぁ、スルガさん! そんな、めんどくせー事に首突っ込んで、早死にすんぞ」

 ……これさえ、なければ……ね。

 「お前も、話し方直せよ……美人さんが台無しだぞ? しょうがないだろう。街の治安維持のためだ」

  「すんません、善処しますよ。しかし……ギルドもどうしようもねえぇな。あれだけ自治、自治騒いでんのに」

 「ところで、ギンビス子爵ってどんな奴だ?」

  「ああ、例の馬車の件のです? 別段悪い噂は聞こえてきませんが?」

 「その割に、獣人一家ひき殺しておいて何もなし。は無いだろうが」

  「獣人だから。かねぇ。事情聞きにいきます?」

 「それ何処じゃない。ヤザンの件が先だ」

  「へいへい。そのニコってのが死んでりゃ 「お前も獣人差別派か?」 ……特にないですが……。どちらかと言えばそうでしょうね。国だってそうでしょうに? 小国群の人族国家だって?」

 「……そうか。じゃ! 急ぐぞ!」

  「何もスルガさんが出張らなくとも。アタシがちょこちょこって行ってきますよ?」

 「領主殿、直々の命だ。兵を借りるぞ!」

  「へいへい」

 

 ……

 

 ヤザンが潜伏してると思われる商会に到着した。商会と言っても普通の屋敷で本店業務? 事務仕事が主なのだろう。

  

 「隊長! 配備につきました!」

 「うむ。警備隊のスルガだ。領主の命により、ヤザンの捕縛に参った!」

  「あのぉ。スルガさぁ~ん。私の隊なんですけどぉ~」

  「は、はい。ヤザン様でしょうか? 此方には……」

 「大人しく従え。家探しの許可も得ている。こっちで勝手にやらせてもらうが?」

  「……少々お待ちを」

 「構わん! 踏み込め!」

  「スルガさん?」

 「良い。構わん! 行け!」

  「はぁ。踏み込め! 1隊は周囲の閉鎖を」

  「はっ!」

  「な何を! お、お止めください! お止め下さいまし!」

 「おい! 貴様! 【冒険者ギルド】のギルド長代行はどこにいる? 名に誓い吐け! 吐かずに此処で見つかれば死罪だ!」

  「そ、そんな横暴な!」

 「なら良い! 後で会おう!」

  「お。お待ちください! ……こちらです」

 「キャラル達は引き続きヤザンの確保を。そこの二人! ついてこい!」

 衛兵二人を呼ぶ。

 

 「こ、こちらです」

 屋敷の横にある小屋、男が床板を外すと階段が現れる

 「先に行け」

  「私は従います。ですから罪のほどは」

 「考慮する」

  「こ、こちらです!」

 

 階段を降りると、木の扉が3つ。その一つの扉を叩く使用人。

  ”こんこん”

 『なんですか? 食事にはまだ早いようですが?』

 ”がちゃり””ぎぃ”

 細く開けられた戸の隙間から覗くのは何時も偉そうにしていた、ギルドの要職にあった者。

 「冒険者ギルドの代行ロッテだな。拘束する!」

  「ひぃ! す、スルガ隊長? な、なぜ!」

 「拘束せよ!」

  「わ、私はぁ”ぐい”あぐ、う、う~」

 「ヤザンのパーティーメンバーは?」

  「……」

 口を割らぬか……詰所で聞きだすか。使用人に目を向ける。

  「わ、私は存じません! ここにはロッテ様お一人でした! 本当です!」

 「わかった。調書を取りたい。貴様も出頭せよ」

  「……はい」

 「ここのほかに隠れられそうな場所はあるか?」

  「そうですね……母屋の地下倉庫くらいでしょうか?」

 「案内は?」

  「はい! さ、させていただきます!」

 ……

 

 

 「ヤザンをだせ!」

  「居ないといっておる!」

 屋敷の入り口、未だ、踏み込まず、口論中のキャラル。その相手……

 「あなたがマドリーノさんで?」

  「平民が……わらわに物申すか! サーラサ殿が黙ってはおらぬぞ!」

 間違いなさそうだな……

 「……あなたも平民だろうに。その、領主様が呼んでるんだよ。とっととヤザンをだせ」

  「……」

 「地下の入り口は」

  「はい、こっちです」

  「! お前!」

 「キャラル、ご婦人を領主様の元に案内せよ。暴れるのなら拘束しても構わん。抵抗するヤツもついでだ。当主も事情聴取のため同行させよ!」

  「私が隊長なのにぃ!」

  「隊長ポンコツだから……」

  「そこ! はぁ、確かにスルガさんかっこええよ?」

 「無駄口はあとだ! さっさと終わらせるぞ!」

  「スルガ隊長! 教会の者が話があると!」

 「通せ!」

 ここで坊主? 一体何の用だ? それに、時間も大して経っていない……

 

 「これはどういう事でございましょう? 今回の捜索、あまりにも強引、我が聖王国から 「拘束せよ! 他国の間者のようだ!」 ……な、何をいって!」

  「お、横暴ですぞ!」

  「貴殿は神を恐れぬのか!」

 枢機卿と、取り巻きの坊主共……相変わらずの傲慢ぶりだ! 

 「ここはノリナ国だ。この国の法を貴様は蔑ろに? 聖王国からの抗議? 脅迫してるつもりか? さっさと拘束して連行しろ!」

  「す、スルガさん?」

  「ほ、本気でしょうか?」

 「なんだ、貴様ら、キャラルまで……。そこの。俺の責任だ! 良いから拘束せよ! せぬのなら、命令不履行だ!」

  「……はっ!」

 

 「さて、地下へ案内してもらおうか」

  「こ、こちらです!」


 ”ごぐん!”

 石の壁が反転する。その隙間を抜け地下へ続く階段へ。

 うん? ……この臭い。腐肉の……まさか。……階段を降り、鉄扉を開け……

 ”うぐぅ”

 ものすごい腐臭……卒倒しそうだ……

 ”おげぇぇぇ

 ”案内の男と衛兵が戻している……おい! あっちでやれよ……

 

 「”っぷ”待機! 動くな! 俺が行く……!? こ、これは……なんだ?」

 重い足を引き摺り部屋に入る。

 

 中央に巨大な黄色い水晶? クリスタル柱? 大きな結晶が。

 それを中心に光り輝く文様。魔法陣? その周囲におびただしい死体……人族、獣人、男女。どれもまだ幼い子供たちだ。小さな白骨……干からびてミイラになってる者……なんだ? ……これは?

 

 「総員退避! 此処はこのまま封鎖する! 一切、指をふれるな、物に触るな! 速やかに退避せよ!」

 ”ぐごごごん”

 鉄の扉を閉める。ふぅ……。こ、これは? 何らかの儀式? ……それで、坊主か!

 「ここに24時間歩哨を立てよ! 三人一組だ!」

  「は、はっ!」


 ったく! なにがなんなんだ? とりあえず手駒だ。それと”勇者”の力を……これは人の手に余る。……先ずは書状を。

 

 「伝令! これを南門屯所へ! 次の伝令! これを領主へ! キャラル達はそいつらを領主館に連行。接触なきようバラバラに拘束しておけ! この書状をロランへ!」

  「領主に二通?」

 「信用できんのでな」

  「……先輩ぃ」

 「特に坊主共を厳重に。絶対に猿轡を外すな! 外した奴は極刑だ。たとえ、キャラルお前でも! 行け!」

 バラバラと散る、中央衛兵隊。

 

 さて、と……

 野次馬に集まった者達を、ぐるり見回す。

 「そこの、この書状を領主館に持っていけ。渡せば、駄賃で小金貨がもらえるようにしてある。どうだ?行くか?」

  「へ? ヘイ! 旦那ぁ! 足には自信があるんで。お任せ下せぇ!」

 「よし! 頼んだ!」

 さらにもう一人に書状を託す。

 「うん? 坊主、お前も行きたそうだな、行くか?」

  「はい!」

 「よし! 行け!」

 

 どうなるのか……。全く先が見えない…。キャラル達も何処まで信用できるのか……

 

 はぁ……旦那ぁ、手ぇ貸してくんないかなぁ~。俺じゃ何かが足りないんだよぉ……。


本日もお付き合いありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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