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スパイス料理の王!そう…カレーだ!

いらっしゃい~ませ!

 雹を加えて3人で移動。セツナっちは鍛冶ギルドに向かったそうだ。

 

 ”がらんからん”

 「まいどぉ~」

 おお!今日も別嬪さんですなぁ!エルザさん!

 このお嬢さんが、マフィア紛いの大店のお嬢様とは…。

  「あら。いらっしゃいませ。」

 「っと、エルザさん、歯ブラシってまだあります?在庫。」

  「20本くらいありますよ。」

 「じゃ、それとぉ、絵本…簡単な読み物は?」

  「う~ん…子供向きってことね?ちょっと待ってね。」

 ぱたぱたと店の奥に。入れ違いで出来た執事殿にもご挨拶。

 「ミツゥーヤさんこんちは」

  「これはこれは。いらっしゃいませ。」

 「少々、相談なんですが、木材を入手したいのですが…何処に行けば購入できるでしょうか?」

  「木材でしょうか。北門近くに加工場が多くありますよ。商業ギルド経由でも買えますよ。大量に要るのであれば、うちの紹介状も出せますが?」

 「ありがとうございます。行ってみます。」

  「では、準備いたしましょう。少々お待ちを。」

 「そうだ。ミツーヤさん、ポット貸してください。お茶淹れます。」

 と、トワ君。そういえば、セツナっちが言ってたな…。

  「ああ、なにやら、お嬢様が無理言って…」

 「これくらいお安い御用ですよ」

 「おっさん、水!」

 「おけ」

 

 結界魔法で空中に浮かぶ水玉。圧を掛けて加熱。

 ミツーヤさんが、茶葉の入った木箱を持って来た。

 「この茶葉…いい香りですね。おっさん、どう?」

 「ふむ。ミツーヤさん作法は?通常通り入れてみよう。」

 葉っぱを入れて暫し。奇麗に膨らみ舞う茶葉。結界が変形し、漏斗のような形状になり、ポットに注ぎ込む。立ち込める、香気…。ふぅ。いい香りだな。

 「おお、いい香り。」

 「うーん、温度を少し低めに。で抽出ちょい長で」

  「そんなに微妙な…」…

 

 「おお!さすがおっさん!うまし!」

 香りが大分膨らんだな。が、この茶葉のポテンシャルはもっと高いだろう。

  「ああ…こんなに違うものか…ドレンのこだわりが理解できる…」

 「茶葉を増やしても良いかもしれんな。ミルクにも負けないと思う。」

 「ミルクティーもいいな!」

 「結界抽出の場合材料入れて煮立てればいいぞ。たぶん」

 「あとでやってみよう!砂糖いっぱいいれて。」

  「いいですなぁ」

  「ちょ、ちょっと…あなた達…何やってんのよ!私のけ者にして!」

 本を抱えてエルザさん登場。依頼主様だ。

 「まぁまぁ。カップは?…一服どうぞ。」

  「もう…ふぅはぁ。いい香りね。んく、…」

 「お気に召しまして?」

  「おいしいわぁ。トワ君、店ださない?」

 「出さないよ。」

  「そう…繁盛間違いなしよ?…本はこんな感じ。植物図鑑もってく?教育にもいいわよ?」

 「じゃぁ、歯ブラシとこの本と図鑑も。図鑑もう一冊あります?」

  「あるわよ。お会計はっと…」

 お茶をもう一杯呼ばれて、店を出た。

 

 「北門かぁ、いつも南門から出て走ってるからなぁ。雹、ジュース飲むか?お茶あんまり好きじゃないだろ?」

  「うん、いがらっぽい…ちょっとちょうだい。」

 「おっさん、街中移動だと時間かかるから…南門出て走るか?」

 「たまにはぶらぶら行くのもいいかもね?いつも走ってるし。」

 「事件に巻き込まれる可能性大だな!テンプレだ!期待大だな!おっさん!」

 いらんわ!ここじゃぁ、無いだろうよ…たぶん…きっと。


 この街、アヌヴィアトはノリナ国の南方を守護する城塞都市。二重の城壁を持つ作りになってる。一般人にはまっすぐ北門に抜ける道はない。中心にある領主城を大きく迂回するような形だ。普段は領主城の城門の跳ね橋は降りており、軍や警備隊は一直線に抜けられる。

 南門から見て西側は貴族街が広がっているので東側を行くことになる。

 おいら達の家は貴族街と繁華街の間の旧貴族街にある。東側はドワーフのおっちゃんがいる職人が多く住むエリア。あの辺りまではいったがその先は未開地だ。大抵のものは南門で揃うので問題なかった。


 「取りあえず歩いていくか…」

 今日は職人街の手前の路地を北進する。なにやら怪しいお店が多くある。性的にではないよ。魔術の触媒や薬といった感じだ…

 「おっさん!これ!キノコ小人?すっげ!」

 ショーウィンドウの中には30センチくらいの…手足の生えたキノコが整然と並べられている…生きてるのか?

 「おお!不思議植物か!」

  「トワ兄、森にいるよ?」

 「なに!やっぱ胞子飛ばすんか?」

  「うん。」

 「取りつかれたら死んじゃう?もしくはキノコ人になるとか?」

  「死なないよ?いちいち死んでたら冒険者いなくなっちゃうよ?毒とか麻痺?」

 「十分危険じゃん…なぁおっさん。」

 「ふむ。しかし、ロマンが足りんな!っと、そういえば、このまえマンドラゴラ獲ったな…売るか?」

 「エルザさんに見せた方が良くね?」

 だな。

  「父さん、いつも言うロマンてなに?」

 「…心持だ」ぼそリ。

  「?なに? 「なんでもないよ。」 そう?」

 

 「…?おっさん…」

 「どした?トワ君」

 道の真中で急に止まり、神妙な面持ちで。

 「この感じ…クリスタルがあるぞ…下に。」

 クリスタル…かぁ。ここにも。

 「ほう…覗きにいくか?」

  「入り口が解んないよ?父さん?」

 「…絞れそう?」

 「ちょい無理っぽいな。あからさまに”入口”ってないもんな。」

 「こんだけ怪しい店があると…」

 旧市街地というか、古い建物がぐるりと。どの建物も怪しく見えてくる。

 「おっさん魔力放出してみ?」

 「だいじょうぶかな?」

 「出てきたら斬る!」

 「…ちょっとだけよ」

 「…はよ」

 ”ぱっつ!”。

 トワ君の言うソナー的な?が…

 「おいらにゃ、さっぱりわからんな。」

 「俺も。今度スルガ隊長に聞いてみよう。地下道とかあるのか?」

 「機密の範囲かもしれないよ。」

 「ガッツリ吸わせばラインみたいのが繋がるんだが…何か出てきてもね…保留!」

 予測通り、教会のある街には、召喚陣がありそうだ…


 魔術街(仮)を抜けたところに大きな商店があった…そりゃ、あるわなぁ~【ヴァ―トリー商会】

 「エルザさんとこ?」

 「うん。今思えば…ないわけないよなぁ。この街大きいし、国境だし?」

  「見ていくの?」

 「寄ってくか、おっさん。」

 「ああ、折角だしね。」…


 「いらっしゃいませ、お客様は初めてで?大口にも対応させていただきます。何なりとお申し付けください。」

 「ありがとう。香辛料と本を見たいのですが。」

  「ではこちらへ」

 「適当にみてもいいか?」

  「人付けますね。”ちりん”此方のお客様のご案内を」

  「はい」…

 

 「唐辛子か」

  「?ペッパといいます。当店では3種類取り扱いがあります。中でもこれは…触らない方がよろしいかと。」

 取り扱い注意?ハバネロか?種とるか…。

 「一単位はいかほどで、お値段は?」

  「こちらの物は…」

 

 少々お高いが購入。黒糖があったのでブロックみたいのを購入。絵本も3冊購入。その後、商品を物色。そしてなにやら手にしてるトワ君達と合流。

 「じゃぁん!ちょい、カッコいいゴーグル!」

 「…歪みは?」

 「それがないんだよ。クリスタル製だって。」

 「例の人工のか?雹は?」

  「俺はカード。遊び道具」

 「トランプ?…勇者沢山呼ばれてんだ…盲点だったな。色違いでもう2~3個買っていこう。孤児院のも。」

  「うん。」

 優しい子やなァ。父ちゃん嬉しいぞ。

 「武器も良いのあるけど…おっちゃんとこにあるからなぁ。」

 「ははは。グローヴィンさん。トワ君が知らん人の武器持ってたら拗ねるよ。」

 「だといいなぁ」

 お会計を済ませ店をでる。高級なものもあるが、普通の店だ…大店なのに気取ったとこがない。いい店だね。もっともお貴族さんは”呼び出し”なんだろうが…


 北門の繁華街が見えてきた。

 「小腹も減ったな。」

  「うん。」

 「遠慮せずに食えよ。屋台。旨そうな店があれば…ぅうん?この匂い…カレー?トワ!」

 「何だよ、おっさん、急にデカい声…!…お…おお!カレー?」

  「さっきから辛甘い匂いがしてるよ?美味しいの?」

 

 「「…いくか!」ぞ!」


 臭いを辿って一軒の店に到着。

 「間違いないな…」

 「ああ」

  「…トワ兄怖いよ?」

 「懐かしい味なんだよ。雹に合うかわかんないけど…一回入りたいね」

  「うん。」…

 

 「おすすめ3人前肉多めで」

  「はい!」…

 「期待もてますなァ…」

 「ライスが無いのが残念…」…

 

 「おああ、久しぶりだ。さっきも商会で見たんだけど、ウコンなかったんだけどなぁ。」

 

 所謂本場のカレーってやつだ。家庭用ルーとはちがってドロドロ、油っこさは皆無。純粋にスパイスが楽しめる。

 前世界に似た配合に異世界のハーブ、スパイスが入ってる。この干しブドウみたいのもポイント高い。良く研究された一品だ。

 個人的にはシナモンとチリがもう少し欲しいとこだが…野菜沢山スープカレーにしてもいいかもしれないな…でも”母ちゃんカレー”ってルーで作ったやつなんだよね。おふくろ手製のカレーまた食べたいものだ…。

 

 「薬屋とかにあるかもね?漢方だっけか。本来薬って聞いたぞ?おっさん。魚介カレーもあればいいんだけどなぁ」

 「渋いね。雹はどう?」

  「口がぴりぴりする。鼻もむずっむず。でも、美味しいよ。」

 「ビルッグにも…セツナっち暴れるな…トワ君鍋ある?中くらいの。」

 「これでいい?」

 「おけ…すいません、この鍋一杯売っていただけませんか?家に残した家族に食わせたくって…」

 快く売ってくれた。お土産も購入したし。良し!堪能しよう。

 まんぞく、まんぞく。付いてきたナンも旨かったよお代わりした。オミヤにもしたさぁ。

 ご馳走さま!またきます!

 

 …


 「父さん、”洗浄”かけて。体に臭いがしみ込んだみたいで…気持ち悪い…」

 店を出てすぐに、不快を訴える雹。おいらなら、カレーの海で泳ぐのも本望だが…

 「そんなにか?」

 「…いいじゃん?いい匂いだし。」

  「気持ち悪い…」

 「おっけ~”洗浄”!」

  「ありがとう!すっきりした!」

 「獣人には刺激が強いのかな?」

  「いろいろ混ざりすぎてて。刺激も多いし…臭い。」

 「…おチビには早いか…」

  「うん。やめた方が良いと思う。父さんもトワ兄も誰も寄ってこないかもよ?」

 「それはいかんな!洗浄!おまけにトワ君も!」

 「…おっさん」

 「ふん!一家団欒には必要なことだ!」

 「…いいけど」

 何よ…その目は…。


 …こっちかな…

 「雹、おっさんが自信満々で歩いていくときは”はずれ!”だ。たぶん逆方向…あっちに木材店がある。だが、事件にぶち当たるので、ある意味”当たり”だ。テンプレ、フラグなんでもござれ!」

 うっさいわ!あっとる…よ?

  「そうなの?止めないの?トワ兄?」

 「”当たり”だぞ?面白いじゃん。」

  「…トワ兄…」

 面白くないわ!ふん!ほざいているがいい!こっちに店はある!…と思う…。

 「ほら、だんだん妖しくなってきた…色街か?」

 …うっさい、うっさい!

 「…ふむ。どこかで間違えたようだ…」

 「最初からだよ。くくく」

 うっさいわぁ!泣くぞ!…しかし…おいら、方向には自信があったんだが…転移のおかげで方向軸がズレたのか?いや、神様が悪戯してるに違いない!

 

 「お~旦那ぁ。昼間っからお盛んでぇ~俺らたちもまぜてくれよう」

  「「ふへへへ」」”わははは。”

 「ほらな!みろ!雹!これがテンプレだ!」

  「トワ兄…」

 う、うっさいわ…この…この、こ汚いヤツのせいで!

 「臭せえんだよ!さっさとどっか行きやがれ!ぶっ殺すぞ!はげ!」

 「おっさ~んテンプレ乙!」

  「はぁあ?ジジィの分際で…有り金全部おいてけやぁ」

 「ふざけんな屑、ぶっ殺す!」

  「「じじぃぃ!」」

 「抜いたら…マジ死ぬぞ!」

 「おっさん、かっこ良いぃ~!手伝う?」

 「うっさいわ!引っ込んどれ!どうすんだ屑共!」

  「素手のじじぃの分際いで!やっちまえ。」

 ナイフを抜く屑共!キサマラのせいでぇ!

 「混ぜてやるよ…太陽の槍!極小!必殺!菊座崩壊!」

 小さい槍が地面から屑共の尻へ!”びじゅ””ぶおぉう”

 「「「へぢやああああぁぁーーあが」」尻がぁ!」

 尻から大量出ケツ、尻だけに。ぷぷ。

 「ふっ、貴様らの尻は死んだ…早く治療院行かねーと…ほんとにあの世だぞ、屑共。」

  「ジジィぃ…ぶっ殺す」

  「や、やっちまえ!…いてて…」

 「ホントに死にたいのか?」

 収納から槍をだす。

  「き、きたねーぞ」

 「はぁ?これだから、屑は…きたねぇ~のは貴様らだ!良いから来いよ。死ね、屑」

  「お、覚えてろよ~!」

 「貴様らもクソするたびに痛みと共に思い出せ!屑!」

 尻を押さえながら逃げ行く男たちの背に向かい吠える。

  「父さん…」

 「おっさん、ガキの喧嘩だな!にしてもえげつなぁ~」

 「うっさいわ。」

 

 …色街ラッキースケベのテンプレじゃなく、臭屑だった。

 …ちょっと大人気なかったなぁ…反省。教育的に良くないので、さらに反省。

 その場で反転、木材屋を目指す!


本日もお付き合いありがとうございました。またのご来店お待ちしています。

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