キレている熊さんに出会った…
いらっしゃいませ~
「毎度ぅ~~ミッツです~スルガ隊長います?」
「旦那!先日はワインごちになりました。とっても美味でしたよ!。ちょっと待ってくださいね。」
分厚いドアを開けて
「隊長ぉ~ミッツの旦那だぁ~~」
「もうちょいだぁ~少し待ってもらってくれ~」
奥からスルガさんの声が。
「了~解!旦那済まない、今、隊長、書類仕事してるんですよ。結構貯めちゃうほうで…」
「なるほど、毎日決まった時間にやればいいのに…」
「そうなんですがねぇ…ほら、うち、不定期、何かあったら駆けつけないといけないんで…」
「そうだったね。治安の担い手だもんな。ご苦労様です。」
隊員さんと雑談しながら待ってると、
「…待たせたなぁ。旦那…」
げっそり。やつれたスルガ氏登場。
「いえ。ちょいと相談事が。」
「…旦那…いってみろ。」
警戒すんなよ…
「熊の獣人のブラウンさんについてですが。」
はぁ…と一息。
「…また面倒なところを。どこで?」
「いえね、うちの雹が昔お世話になったっていうんで。昨日、ちょいと会いに行ったん 「…旦那、普通の話し方でいいぞ。むしろ普通がいい。今の口調じゃ胡散臭い」 …。」
「こほん。昨日伺ったんですよ。そうしたら屯所に保護されてるって話を聞いてまかり越しました。」
「ああ、悪徳商人にはめられてな。今朝がたも、条件の女房も納得して家にいるから出せと。な。確認しようにも診療所が空だし。先生もいない。困ってたとこだ」
「…」
そりゃぁ、うちで保護してるし?でも、言うに事欠いて、嘘並べやがって…
「うん?………旦那。やったか?」
「やった。」
「ふぅー…で?」
「奥方と先生は保護しました。ついでに重傷の子2人。あとは治して帰した。そうそう。うさ耳っ子は先生が養女にするそうです。で、」
欠けた指輪を出す。
「なんだそれは?」
「最初の診療所でつけられたそうです。魔法をはじく効果があった。先生の治療魔法をね。治療の邪魔なので破壊しました。教会の呪物だとおもう。ナバルってのが担当医だそうだ。」
「ほう。たしか、病気を治すのに教会からの紹介でって話だったな。おそらく…」
うんうん。頭の良い人は良いねぇ。
「ええ。ブブリ草中毒でしたね。」
「ほう。で、指輪をはめ、教会の偽鑑定で心臓の病と。」
「で高額な治療費を。ただし奥方の最後まで見る契約に。」
状況確認と、事象、予測を重ねていく。
「メアリー先生が隙を突いて奥方の奪還を成功させるが、場所を追われ、嫌がらせをされると。」
「で、私が昨夜、皆さまを保護。あせ極った屑は隊長に虚偽報告をし、保護してる身柄を不当に得ようとしてる。」
「で、屑が教会関係者を連れてくる…と。今ここってわけだ。」
ジロリと入り口を睨む。そこには商人風の男と聖職者風の男がいた。
「ルイ、ナバルに尋問。多少手荒でもいい。この指輪持っていけ。証拠品だ!自供取れ次第連行!」
「雹、マシューさんに来てもらうように。」
二人が消える。
「スルガ隊長、話良いですかな。今朝も来ましたが、女房も納得しています。出してください。」
「この者の言うことは私が証明しましょう!」
「ほう。あなたは、確か…」
「ええ、この教会で助祭を務めますアリと申します。」
「で、なぜ助祭がこのようなところに?聖王国は一応奴隷制度撤廃に賛成だったはずでは?」
「正しい心の者が教会を頼ったのです。問題でも?」
「あなた達の言葉に嘘偽りはないと。」
「ええ。神に誓って」
「そうそう証言に添付されてた書類に鑑定人は貴殿になってたが…確かに心臓病か?」
「ええ。私の”鑑定”では。」
だまって事の行方を見ていたが…どう見ても悪人としか見えんぞ…。助祭と言ったか?いかにも色欲塗れの坊主だな。
どれ。そんな大層な御仁か?コイツ…”鑑定”
・アリ 一応教会所属 人族 skill 無し。こいつの趣味は金集め。こいつに鑑定はないよ~こんな猿につかえるか。skillに”たかり”称号に”屑”つけちゃれ。
・アリ 屑、詐欺師 屑人族 skill タカリ 神の名をかたり金をせしめる。極悪人
”ぶっぷふぅ!”マジか!
三人の視線が一斉に。思わず吹き出してしまったぜ!
「し、失礼しました」
楽しまれてますか。神様…いい仕事してんな!おい!…タメ口きいて失礼しました!片膝を突いて祈る。
「旦那、一体…」
「神の声が聞こえたのでしょう。早く釈放を。」
”はぁはぁはぁ””どたどたどた…”
「はぁ、はぁ。お待たせぇ。ふぅ~~~ミッツさん、高くつくわよ~でなによ?」
雹が先に到着。無事、マシューさんを連れ出してきたようだ。
「契約が発生する場合がありますので立ち合いをお願いしたいのです。それと、その商人さんのギルド証の確認をお願いします。」
「なに?いまさらそんなこと。時間の無駄だ!」
「…ふぅん…それはこっちで決めるわ。で、見せて?」
「断る!受付嬢ごときに義務はない!」
「あるわよ…受付嬢でも。じゃぁ、はい。見える?ここの副ギルド長のマシューよ。ギルド員なら名前くらい聞いたことあるでしょ?…もち闇でもね?」
「…マシュー女史…」”ストン”
「うぐぅぅお」
”かいーん”甲高い音と共にナイフが落ちる。
懐から抜いたのか?そのナイフを雹が撃ち落とした?
「現行犯ね。雹君。やっちゃって!」
”ごぐごきぃいぎきぃ”
「うぎゃぁ――――たすじぇて!」
お!おいぃ!『やっちゃって!』じゃないわぁ!
「アリ殿も動くな。共犯の疑いがある動けば斬る。拘束しろ」
「いいわよ、雹君もう一本行っとく?」
”びきぃいいぃぃぃ”
「おうぎぃにぃあーーー!」
あ、あんた!うちの子になにさせとんじゃ!
「はい。背後はだれかな。」
「ひぅひぃう…」
「あら。これ以上雹君にやらせると、ミッツさんから文句が出るから。しょうがないか…”かっ!”だぁあれ?」コロり。
「…ひぎ?」
歯が一本綺麗に抜歯!
…歯茎部?歯茎に埋もれてる部分。長い…な。
葉を抜かれた奴隷商がすがるように助祭に目を向ける。が…
「あら、助祭様も関係が?」
「知らん!そ、そんな男は知らん!」
おいおい。もう知らん!かよ。
「ひでえな。心正しき者って言ってたじゃん。なぁ。旦那ぁ」
「ええ。見捨てるの早すぎ。可哀そうに。さすが屑…」
「さぁ、次はどの歯にしようかなぁ 「言う、言う。俺は闇ギルド、『漆黒の狼』の奴隷商 ギーリギス。教会のシャローイン枢機卿の指令で来た。ディフェンヴァキュアに荷物を運ぶ途中だ。ここでも”集荷”しようと。そのアリも。」 あら、たった一本でこんなに情報売れるなんて。大安売りね。あと10本くらいは売ってくれるかしら?」
と千枚通しみたいなものを奴隷商の歯に当てる。あれで打ち抜いたのか…怖えぇ。逆らわないようにしよう。
「ひぶぃひぃ」
「あんなたちがこの街で好き放題してたことだって知らないと思ってたの?どうせ死刑でしょ。知ってること全部話して楽になっちゃいなよ?」
「メアリーさんに対する因縁に比べりゃ軽い軽い」
「あら、あの方は慈善の士よ?人族、獣人、そのほかの種族分け隔てなく…そう。」
コロ。奥歯って大きいんだな。まじまじとみた。
「?…ふふぃいいいーー」
「マシューさんその辺で。」
「あら。この子の身柄はうちが先に調べるのよ。だから良いのよ。ねぇ?」
「…規定ではそうだが。うちで連行するか?マシュー」
「雹君少しは鬱憤晴れた?まだなら一緒に聞きましょうか。」
「鬱憤は晴れないよ。でも話は聞きたい。父さんもう手は出さないから聞いてきてもいい?手口とか。ブラウンさんの事とか聞きたい。」
「…ああ。お前の好きになさい。後で聞かせてくれるかな。どんなことでも。」
「うん。父さんの子として恥じないようにする。さぁマシューさん行こう。」
「ちょいまて。今から面白い見世物みてから行け!。マシューさんこれが何だか?」
紙を渡す。
「?教会発行の鑑定用紙じゃない。どうして?」
「そこのアリに使用してください」
「旦那?」
「ミッツさん?}
「私は聖職者だぞ!やましいことなどない!良かろう貸してみよ!」
”ぴかぁ。”
「な!んな?な!」
さっ、とマシューさんが取り上げる…
「見せて見な…ぶふぁぁははははぁ!まじ?こ、これ本当?す、凄すぎる!神様の存在を今!一番近く感じたわ!」
「ん?どれどれ…”ぶっふぁ!”屑”称号が屑か!詐欺師って!神は見ていてくれたな!よかったなぁ!おい!」
”ばしばし!”と屑の肩をたたくスルガさん。
「隊長、俺たちにも…ぶははははは~」
「いい証明書だ。調書に添付しておこう。なぁ屑殿。」
顔を赤くしたり青くしたり…そこへ、
「隊長!ナバルが自供しました。そこの助祭と司祭の指示だそうです。」
拘束され鼻の潰れた男が入ってきた。すれ違うように雹とマシューさんと衛兵に挟まれて奴隷商人が出ていく。
「ミッツさんごめんなさい。雹君は預かるわね。ちゃんと返すから心配しないで」
「…はい。彼が決めたことです。よろしくお願いします」…
「にしてもマシュー女史すごい迫力でしたね。隊長」
と文官君。同感。
「うむ。この街が好きだからなぁ彼女。まさか拷問をはじめるとは」
「ええ。びっくりしましたね。マシューさん。ふだんは明るいお嬢さんなのに。流石ギルドでも一目置かれてる人物だね。あんなにすっぽ~んって抜けるものか?歯って?」
「ああ…怖えな。逆からわんようにしよ。」
「「同感」」
「で、屑さんの方は?」
「ああ、ナバルも吐いたし、牢屋行きだな。なぁ”屑”どの」
「教会に使いを!迎えを!」
「いいのか?鑑定書見せるぞ?良くて破門、わるけりゃ、神敵、火あぶりだが?」
「…違う紙なら…」
「じゃ、教会のやつに新しい紙2~3枚持ってこいって伝令出すが、いいか?」
「…!ま、待て!」
「大人しく牢屋に入って裁判を待つか…どうせ死罪だ。ぶちまけたほうが神様もちょっとは気分をお直しくださるかも知れんぞ?。好きな方を選びな。」
…ないな。今頃、爆笑なされているはず。
「…あ…ああ…」
「さて、ブラウンさんの身柄は頂いても?」
「ああ、契約は無効、証文も無効。逆に補償金求めてもいいな。女房に毒もられたんだ。奴隷商の財産は商業ギルドで清算されてこっちに来る。半分か1/3がブラウンに入る。」
「?残りは?」
「罰金とかうたって領主がガメる。」
「屑だな」
「まぁ仕方のないことでもあるんだ。この事件で活躍したってことで俺らに報奨金出したり、今回は損失ないからいいがポーションやら武器の備品、死人がでれば…補償やなんかで大変だ。」
「なるほど。事件単位の清算になると…」
「ああ、ほかの隊への発破になるしな。」
「ふむ。むしろ意外にいいのかな制度的に…」
「まぁ、問題もあるっちゃあるが、まぁ概ね良好だな。」
「で、”屑”殿いかがする?」
「…」
「だんまりか。ブラウン出してきて、こいつ入れておけ。一発くらい…だめだ。触らせないようにつれてこい」
「別に一発殴るぐらいいいじゃん。思い切り。」
「ダメだ…頭が消し飛ぶ…」
「…へ?まじ?」
「ああ。今来る…」…
「隊長世話になったようだな…礼を言う。」
”ずずぅぉおおーーーん。”
って感じのでかいおっさん。
ムッキムキだ。頭の上の丸いお耳がとってもキュート!
す、すげえ!萌え要素ある…のか?いや、たしか、前世界で筋肉ムキムキがブームだとか…
「いや、ほとんどがこの旦那がやっちまった。ブラウン、ミッツ殿だ。」
「ぶ、ブラウンさん初めましてミッツです」
「世話になった!ブラウンだ」
…お耳が可愛い…ぴこぴこしてる。上腕筋もピコピコしてるが…可愛くない!
「?世話になってなんだが…面識あるか?」
「…無いですよ。うちの息子が以前世話になったと。」
「人族の子供なんか世話したか?」
「いえ、当時レッグってよばれてた、ユキヒョウの子ですよ。養子になってくれまして。」
「ユキヒョウ?豹人族の…あの子か。危うかったのは覚えているが…」
「ええ。何とか生活が安定してきたので彼なりに恩返しのつもりで寄ったら知らない人。奥様も病気、貴方は屯所。もうびっくりですね。」
「…面目ない。」
「で、あの奴隷商や教会の屑を追い込んで釈放ってわけです。少ないですが慰謝料もでるそうです。」
「…ありがたい。なにより自由だ。レッグは?礼を言いたいのだが…」
「今は私の息子”雹”と名乗っております。奴隷商の尋問に付き合っております。お怒りはあるでしょうが、今頃、精神的、肉体的に痛めつけられてるでしょう。なにより連行前に雹が奴の両の腕を粉砕しました。これで溜飲がいくぶんか下げられれば良いかと。」
「旦那がその喋りをすると威厳というか 「はったりですよ」 …台無しだな!」
”ははははは。”
「ところでブラウンさんはお仕事は何を?肉体労働だと思うけど…」
「…裁縫匠だ」へ?
「?サイを放おる?」
「サイが何やら知らんが投げてどうする?にしてもブラウンおまえ!服屋なのか!しかも裁縫匠って裁縫師の上じゃん、ぷはははは」
「笑うなスルガ!この肉体があれば、ドラゴンの革でも、ベへモスの革でも縫える!」
”ぐごぎゅぅ”
と、サイドチェストをかます大熊。おもしれーおっさんだ!
「なぜこの街で日雇いに?」
「地元で店を持ってはいたが、獣人排斥にあってなぁ。布地、革全て燃やされてしまったんだ。土地売って補填はしたが…もう店は無理と流れてここにってわけさ。」
「どこもかしこも…大熊おっさん、うちで働かね?講師として裁縫教えたり、おいら達の服作ったり。安定したらギルドに流してもいい。家族の一人がドワーフや獣人の革職人をまとめてブランドを立ち上げる。今はバッグだけだが、ゆくゆくはファッション、服にも行くはずだ。そんなのを手助けしてくれれば助かる。当分は作業場だが進呈しよう。どうだ?」
「夢のような条件だが…」
疑いたくもなるわな。ハメられたばかりだし。
「まぁ疑うのも無理はない。当分は食事の面倒もみるよ。やりたいことをすればいいさ。ブランドの方は話を聞くだけでも職人なら燃えるぞ。思想に共感できれば一緒に仕事すりゃいいさ。」
「ほう。ぜひとも世話になりたいが…妻も世話になったようだな感謝する」
「おいらよりメアリー先生だな。あの先生は無理しすぎだ。取りあえずうちに行こう。おいら達ちょっと立て込んでてそれが終わるまではゆっくりしてほしい。奥方もまだまだ本調子じゃないからね。」
「甘えさせていただくよ」
なんとまぁ。都合よく服屋、しかもかなり凄腕の職人をゲットできた。大熊だけど。まぁ。お耳が可愛いから?いいか。…いいのか?誰得だ?
本日もお付き合いありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




