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診療所のメアリー先生

いらっしゃいませ~本日二本目。

 盗人商店のオヤジに教わった道をずんどこ歩いていく。

 オヤジの言う通り、奥まった、壁の近くにある診療所へ到着した。

 周りも診療所もボロボロだな。どこもかしこも何とか風雨をしのげる建屋…不法移民が多くいると言うが…衛生状態を保つのだって…開け放たれた野戦病院よりひどい有様だ。

 

 「すいませ~ん」

 「はい、はい。お待ちくださいな」

 出てきたのは羊角族…獣人族のご婦人だった。

 「ここは診療所ですか?」

 「…はい。こんな様ですが…。なにか御用でしょうか?」

 気に障ったかな。ちと失礼だったな。

 「こちらに、え~とブラウンさんの奥様がいると聞きまして。お見舞いに…」

 「あんた、あの商人の手下だねぇ!さっさとおかえり!」

 「「???」」

 なんですと?

 「さっさと帰らないとたたき出すよ!」

 近くにあった箒をひっつかみ、振りかぶる、ご婦人。

 「あの、話が見えないのですが…」

  「め、メアリー先生!お、俺です!」

 「うん?…!…レッグ君?レッグ君じゃないのさ!死んじまったって聞いてたのよぉ。ああ、大きくなって。良かったわ…ルルちゃん達は元気?しっかり食べてるようね…良かった…」

  「お久しぶりです…ルルの病気の時はお世話になりました。でも、以前はもっと街中にあったのに…」

 「…」

 レッグ…雹だが、彼の安否確認が出来てホッとするも…悔しそうな表情に変わる。

 苦虫をかみしめてるように。おいらを見る目…人族…教会絡みか?

  「先生、大丈夫だよ。この人は俺…僕の父さんなんだ。僕たちを養子に。」

 「え?ええ…?人族でしょ!そんな…」

 「ミッツと申します。運輸業を営んでます。一応商人になります。前に家の子たちが世話になったようで…ありがとうございました。良かったら話だけでも。」

 「さ、先ほどは失礼しました…私はメアリーと申します。…ここで診療所を開いてます…何もありませんが、中へ」

 「お邪魔します…」「…」


 …。

 

 「で、レッグ君、マーレさんのお見舞い?」

  「うん。ブラウンさんの事聞いて…」

 「そう。その奴隷商が彼女を渡せって毎日のように押しかけて来るのさ…動かしたくないのにね…一緒に連れて出発したいようなの。

 スルガ隊長も粘ってるけどねぇ…いつまでもつか…ブラウンさん屈強で力持ちでしょ。だから、狙われたんだわね」

 「狙う?」

 「ああ、ディフェンが買い付けるそうな。あすこは、ドラセリアと接してたから表立って獣人を使ってなかったんだけどねぇ。勇者召喚に失敗したとかで…奴隷に鉱山を…て訳さね。」

 「借金奴隷は鉱山は…まぁ、あの国か…」

 「そう、国境越えちまえばね。本来、借金奴隷は国境越えられないはずなんだけどねぇ。…ゼクス教会が援助してるのさ…」

 「くそがぁ。胸くそ悪い。また教会か!」ムカ!

 「…れ、レッグ君?」

  「父さんは大の教会嫌いなんですよ。父さん落ち着いてください。」

 「むぅ、雹。わかった。」

 「ひょう?」

  「ええ。名付けてもらったんです。レッグって足が速いチビの呼び名でしたから。」

 「そう雹君ね。」

 「それで、マーレさんの容態は?」

 「毒物…中毒なんだが…特定がねぇ…」

 「診ましょう。私、”鑑定”もちです。」

 「!”鑑定”!助かる!お願いします!」


 …粗末なベッドの上に痩せた熊人族の夫人が…。衛生状況は…仕方なし。だなぁ。場所が場所だ。

 「洗浄…」

 あたりが清爽に。

 「鑑定!」


 ・熊人族 マーレ  状態、衰弱。ブブリ草中毒。解毒の魔法で解除可能。ブブリ草とは! ぶぶっと屁が出てくさぁ~って…スミマセン。ホントスミマセン。


 神様!どうか!謝らないでください、笑えませんが…

 片膝を突き祈る…

  

 「と、父さん…そんなに悪いの?」

 「…いや、大丈夫だ。解毒の魔法で解除可能だそうだ。先生は使えますか?」

 神様が下らないこと言って卑屈に謝っていたなんて…言えない…

 

 「んん~。おかしいねぇ。”解毒”の魔法なら、何度もかけたんだがね…」

 「もう一回お願いできますか?私が少々強めに魔力で補助します。解毒できたら、そのまま回復を。」

  「先生、びっくりしないでね」

 フラグ立てんな!雹。

 「では、行きますよ~プチ”充填”!」

 「…ええ、お願いしま…すうぅはぁああぁ!」

 「今です、さあ、」

 「は、はい!…身体を蝕む穢れを祓いたまえ。キュアポイズン」

 ”ぴかぁ””ボン”

 先生とご婦人が光に包まれると同時に、ご婦人の指にあった?指輪が吹っ飛んだ。

 「!効いたわ!心中より溢れる命のほとばしりよ。神聖なる、癒しの波動をもって傷をいやし、心やすらかに。ヒールライト!」

 ”ぴかぁ!”再び光に包まれる。

 てか、やっぱ、詠唱あった方がいいなぁ。カッコいいじゃん。

 「ふぅ。き、効いたよ!効いた。」

 「お見事。この指輪が阻害してたようですね。」

 「はて?こんなものあったかねぇ…?」

 「いただいても?」

 「ええ、ご助力ありがとうございました。大分安定しました。今日中には目を覚ますと思います。」

 「お気になさらず。」

 「…」

  「先生?どうしたの?」

 「ミッツさん…不躾ですが…その奇跡、他のものに施すことはできないでしょうか。」

 「ここには何人いますか?」

 「獣人が後8人います。そのうち二人はもう…」

 「こんな小さいとこに8人?…では、重篤な方から見ていきましょ。」


 「この子は馬車に轢かれてしまい…何とか傷を塞ぎ、形成したのですが…内臓にもダメージが多く、こっち癒してもこっち。こっち癒せば先ほどの所が悪化と…」

 「…この子の親御さんは?」

 「その事故で…」

 「補償は?ポーションの支給もない?」

 「ええ、相手がこの町の貴族でねぇ…」

 「どこの誰かは分かってるんですね?」

 「…はい」

 「では”解毒””回復”で行きましょう。」

 「”解毒”?…はい解りました。」

 …何とかなりそうだ。


 …。

 

 「この子は通りで冒険者同士のいざこざに巻き込まれて…」

 「この子も冒険者?」

 「いや、登録前。こんな年端も行かない子が、冒険者にゃ、なれんだろう?薬屋の小間使いで瓶の回収に行ったところ…」

 「…補償は…無いのでしょうね。」

 「ええ、冒険者同士ってことで、急遽作った証を投げてきたそうです。」

 「衛兵は?」

 「来る前に…ごみのように…」

 泣きじゃくる先生。

 「頭部の傷かぁ。長く優しく。って感じで。祈りましょう」

 「はい…」

 …脳内構造なんてさっぱりだ。さっきも何とかなったし、魔法と神様にすがる他ないな。

 先生が魔法を何度か重ね掛けして容態は落ち着いたようだ…

 あとは目覚めを待つのみ。

 はああ!あああああああああ…腹立たしい。皆殺しにしたい気分だ!

  

 「父さん、落ち着いて。先生が怯えてる!」

 「顔にでてた?」

  「うん。殺気とか、魔力が…」

 「…なぁ、雹。これが現実か?」

  「うん。日常だね。」

 「ここにも力のある獣人がいるだろ?」

 「そういった輩は、人族に尻尾をふったペットさね。人族より始末が悪い。率先して迫害してくるさ。」と先生。

 「屑の屑ってわけだ。」…


 「さぁ、進めましょう。治療を。お願いします。」

 「ええ。」

 後は比較的軽傷だった。骨折も即繋がるから軽傷だ。4人が治療後帰っていった。うさ耳の女の子が一人残ったが、孤児だったため居残り。先生は引き取る予定だとのこと。

 

 「ふぅぅうう。ありがとう。肩の荷が一気に下りたよ…報酬だけど… 「要りませんよ。」 …しかし…」

 「お手伝いしただけです。」

 「…助かるよ…あの子たちが目覚めて、孤児院に入れることができればここを引き払うさ。違う村でやり直すつもりさね。旅費にさせてもらうよ。」

  「先生、出ていくの?」

 「ああ、前の所も追い出されたし…ここじゃ、ね…立て直しても。教会に目付けられたからいつ追い出されるか…」

 「…メアリー先生。うちに来ません?医療行為もですが、教師として。一般常識や、生き方、魔法などを教えてくれると助かります。今、子供が8人いるし。門の近くの孤児院もうちに引っ越してくる予定です」

  「良いの!父さん!」

 「ちょっと待っておくれ!孤児院が引越し?何処に?どういうこった?」

 「私の家は”家妖精の家”なんですよ。不思議空間でたくさんの人が住めるんです。診療所も道沿いに作れますよ。家賃などは心配しないで結構です」

 「…」

 「この子たちも連れて行って構いませんよ。マーレさんも迎えるつもりですが…さて、屯所の方も終わらせないとね。」

 「あなたは一体…」

 「ただの商人ですよ。おせっかいかも?」

 「ふふふ。お世話になっても?」

 「ええ、歓迎しますよ。今日の夜にでもとんずらしませんか?動かしても大丈夫だと思うんですが…」

 「明日以降にしたいところですが…ごろつきが来て、何かされてもつまらないのでお願いします。」

 「暗くなってきたし、今日はもう来ないだろう。馬車は…良いのはトワ君か…まあいい。一旦帰って、そうですね…夜中1の鐘の時刻に来ます。それまでに持っていくものを用意してください。”収納”あるのでいるだけ。」

 「…わかりました。お待ちしています」

 

 「大事になったな。」

  「ごめん」

 「?雹は後悔してんのか?」

  「…ぜんぜんしてない!」

 そう来なくてはな!大きく素直に育て!

 「よし!なら謝るな。こういう時は”ありがとう”だ。」

  「ありがとう、父さん」

 「さぁ、お子ちゃまの飯を用意しないと!いそがしいぞ!」

  「手伝うよ!」

 …良い人そうだし、かなり追い詰められている様子だ。是非とも安寧に住んでほしいものだね。

 それにしても…本当に腹立たしいわ!


明日から通常通りの一本になります。またのご来店をお待ちしております。

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