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閑話 ある執事とワイン

いらっしゃいませ~本日一発目は閑話です。夜にももう一本。GWもおうすぐ…

 「ねぇ、ミツゥーヤ、ミッツさんたちの外套作ったほうがいいと思う?」


 唐突に主のお嬢様から提案が。

 ミッツ様。今代の勇者様だ。その勇者様が、輸送業を起こし、当家の仕事を受けてくださるという。

 それは、生きていくためには”金”は必要だ。流石の勇者様でも、食事はとらねば。

 本来であれば、呼ばれた国や、逃れて森林国辺りで悠々自適できるものだろうが…ま、どのみち、”自由”は得られないだろうが。

 

 「まだ必要ないかと。依頼受注の回答はまだでは?」

 「たぶん受けると思うの。それに、あのくされ教会がちょっかい出そうとしてるでしょ。」

 …忌々し気にはき捨てるお嬢様。

 くされ教会は頂けませんぞ。

  「お嬢様…」

 「あら、御免あそばせ。ミッツさんまで波及しないと思うけど、くされ教会はいっそのこと天罰で消えないかしら?」

  「お嬢様。」

 「…はいはい。で、外套があればそうそうバカはしないと思うのよ。」

  「しかし、なぜそこまで?お聞きしても?」

 

 確かに商売としてはプラス。が、同時に教会を敵に回すことにも…。我が商会は、会頭の指示で、教会、その元の”聖王国”とは一定の距離は取っているが…

 

 「大した話じゃないわよ。彼らは異世界から来たでしょう。誘拐されて。こちらの世界の代表じゃないけど、彼らには楽しんでもらわないとね。

 もちろん、ちゃんとお仕事もやってもらうわよ。太いルートを彼らに、枝葉を今までの輸送隊に任せれば…ふふふ。父様の度肝を抜いて差し上げますわ!」

  「お嬢様…」

 「よし。決めました!どっちみち要るでしょう。作りましょう。一回店に来るように頼んできて。場所は」

  「心得ています。夕食前を狙っていってみます。」

 「書状は…いいわね。お願いね。」

 はい。かしこまりましてございますれば…いざ。

 

 …。

 

 留守のようだ。

 門の向こうは何やら歪んで見える。たまに更地になったり…良く剪定してる木々は見えるのだが…母屋らしきものは見えない…不思議な光景だ。

 昔から”家妖精の住まう家”として有名であった。住む者も居なくなり、利用価値のない、死地とされたが…さすが勇者様というべきだろうか。彼らがこの地を手に入れるとは。

 ん?彼等が…お戻りになられたようだ。しかし…なんだ?あの馬は…

 「あ、買い物忘れた。」

 こちらまで聞こえる独り言…

 そのままUターン。再び路地に消えていった。

 …下手な芝居で…。うん?ああ、冷えたので着てきた外套が仇となったか!羽織った外套が神父のローブに見えたのかもしれない。教会関係者と間違われたか?

 裏に門はない。このまま少し待つか…

 

 …。

 

 おかしい…帰ってこない?ギルドにでも行ったか?でも、馬の背に子供もいたな。そう無理はしないはずだ…もう少し待ってみよう…

 

 …。

 

 どうなってる?帰らぬのか…そろそろ宵の口だ。仕方がない、今日はひきあげるとするか。

 そう思い、立ち去ろうとしたとき、

”ぎいいぃ”

 軋む音と共に『開かずの門』がゆっくりと開く。

 そこから店で何回か見かけたミッツ様が顔をだす。

 

 「突然、夜分にすいません。ミッツ様ですね。先ほど見かけたのでお帰りをお持ちしていましたが…私、ヴァートリー家のもので、ミツゥーヤと申します。」

 「ミッツです。本来ならば招き入れるところ…この家は特殊でして…まだ調整が…ですので、大変失礼ではございますが、ここで。」

 なるほど…家主はどこからでも入れると…。

 「かまいませぬ。エリザベート様より。外套を作るので一回来店願えないかと。」

 「はい、解りました。下手な芝居で、御気づきでしょうが、私たちは貴殿を見て裏に回りました。今、教会にちょっかい出されておりまして…無礼しました。」

 やはり。スレイヴニィルだけでも聖王国が黙っていまいな。

 「さもありなん。存じてます。こちらも突然で。では」

 「あ、これ持ってってください。冷えた体を温めてください」

 瓶入りのワイン?高価そうだな。

 「それは…主人に 「大丈夫ですよ。規格外の安物ですよ。黄色印の。ですが、”あたり”ですので、楽しめると思います」 …では、ありがたく頂きます。それではご来店お待ちしてます。」

 ミッツ様に礼を言い、辞する。

 

 …当たり…。歩幅が広がる…黄色ラベルの中の特殊な樽。

 検品時に規定外にはねられるが、作りがしっかりしたものが混ざるときがある。そういったものは、飲用時に特別な味わいを醸し出す。

 雑な保管?運搬?温度?何が要因かはわからぬが、高級品質を上回るものも時としてある。好事家はこういった樽を集め、酒宴で披露し、自慢し飲ませ、招待客の驚く顔をつまみにワインを楽しむという。

 さぁて、異世界人であるミッツ様が当たりというのだ俄然期待度があがる。今から楽しみだ。

 

 …。


 「ただいまもどりました。お嬢様…まだお休みではないのですね?」

 くっ!待っておられたとは!が、これでも商会に長年勤め、総括まで上り詰めた男!”表情は常に一定であれ!相手に悟られぬように!

 「お疲れ様です。遅かったですね。」

  「ええ。行き違いがありまして…」

 

 体験と考察を報告する。内容は…あの家は特殊で家主、家人?ならどこでも入れる。慌てて出てきたことから母屋内から門前をかなりの範囲を確認できる魔道具なりを有している。

 多分胸の紋章も見えたのだろう。

 そして、予想以上に教会を警戒している。

  

 「外套の件、了承の事でした。報告は以上です。では。」

 早速、部屋に戻り楽しませていただこう。

 「…お待ちなさいな」

 くぅう。目敏い…流石!お嬢様!次期会頭に一番近いとされている!

 バレたか?くっ!こういう時のお顔、目、会頭と対面しているようだ!

  「な、何でございましょうか?」

 「それは?」

 平常心…商会の基本ぞ!落ち着け。

  「これは、ミッツ殿から頂きました。待たせ、体を冷やした詫びだと。寝酒にと。ありがたいことですな。それでは、明日 「ふーーーーーーーーーーーん。そう。」 は…。値段も確認させていただき、余り高価ではないと 「ふーーーーーーーーーーん」 …では休んで 「ふーーーーーん」 も…お、お嬢様?」

 「あの、気の利くミッツさんが普通のお土産なんてありえないでしょ。ミツゥーヤ長い、なが~い付き合いじゃない?」

 …くっ、どこでミスった?浮かれていたか?顔には出てないはずだ…が。

 「全部よこせって言ってるわけじゃないわよ。一杯…いえ、二杯ちょうだいな。」…

  「はぁ。黄色ですが、不味いって怒らないでくださいよ。」

 「わかってるわよ。早くくださらない?」

 

 くそぉ。お嬢様のグラスに注ぐ…ぶわっと芳醇な香りが立つ。ここに居てもわかるくらいの。新酒の香りじゃないな。

 「”コクリ”…あふぅう。これは、これは。黄色の…」

 くそーぉーー!

 「大当たり!ね。」

 がっくし。くいっとグラスを傾け、ワインを含むお嬢様。

 「はぁ。これは…ミッツさんの運ぶワイン自体に付加価値があるわね。この”当たり”雑味が全くないわ。まったく動かしていないような。10いえ15で売らない?」

  「お嬢様…お断りします。」

 「あら、つれない。分けてくれるように頼んでみようかしら。」

  「お嬢様。」

 「冗談よ。それにしても本当においしいわぁ。やっぱり聞いてみよう。」

 うっとりお嬢様。

 「あ、ここまで注いでくださる?」

 とグラスの縁に指をあてる。

 ワインはそのように飲む物ではございませんぞ!お嬢様!

 「…冗談よ。」

 普通より多めに注ぐ。

 「ありがとう。あなたも楽しんでくださいな。おやすみなさい。」

 「…おやすみなさいませ。お嬢様」

 

 少々目減りしたが、大当たりとやらを楽しもうではないか!


またのご来店をお待ちしております。

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[一言] 酒飲みならば血涙を流すなぁ
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