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教会でも大騒ぎ。

 昨日は良い宴だった。マッドクラブも大評判。青くなっていたのはおそらく、鎧を扱う武器商だろう。ふふふ。伯爵様の株も大きく上がっただろう。

 で、今、教会に。目前で繰り広げられる筋肉の隆起!筋肉の叫び!ミチミチと音が聞こえてくるようだ。

 祭壇には聖銀のバスターソード“神楽”と”聖杯”が安置され、しれっと、プロケルが立っている。ここの神官様だわな。

  

 「ミッツ様…格好いいですね…さすがトラヴィスの”英雄”殿…」

 …アーサー君…

 そういえば、見回すと熱い瞳の男の子のギャラリーが多いな…大人気の”英雄”様だ。真似をする子供達もちらほら。リーラ君もいるし…ここの”舞い手”は安泰だな。

  「…子供なんだから…お兄様は。ふぅ。」

 …チェルシーちゃん…貴女も十分お子ちゃまです。それに男と言う生物はこんなものです。

 「ぶふぅぅぅぅぅ…」

 神酒を賜ったのであろう。茹でタコのように真っ赤な伯爵殿。どうやら、朝の奉納の舞は終わったようだ。

  

 「さて、今日、御集りの方々運がいい。総本山から”使徒”様がいらしております。我らを束ねる神官の頂点、神の御使いであり…」

 おいおいおい!聞いてないぞ!そこ(トワ君)!笑うな!

 おいらを賛美する言葉が続く…。そんな大したものじゃないしぃ!玩具よ?玩具。

  「…それでは、ミッツ様。」

 …どうせよと?おいらに?

  「ミッツ様…」

 キラキラお目目で応援してくれるチェルシーちゃん。であれば行くしかないかぁ。

 

 「ただいま紹介いただいたミッツと言う者です。皆さんの信仰…ん? <やる気スゥイッチィ~おん!さぁ!民どもよ!ひれ伏すといい!> あ…」

 やはりご覧になっていたか!マイゴッド!ひれ伏すといい…って。もう!

 

 教会内に聖なる気が満ち、光の翼が教会内をなめるように広がる。光の翼が通過したところは色を取り戻し、清浄へ。床すらも輝きを取り戻す。そう、この場は神の御手により清められた…

  「なんと…」

 なんと…じゃねぇよ!どうすんだよ!プロケルの予想の上をいったようだ。少しは意趣返しが出来たか。

  「おお!神よ!」「神様!」

  「”使徒”様!」「”使徒”様だ!」

 「ははははは!腹痛ぇ!」

 おいこら!

 「こほん。まぁ、なんだ…」

 ぐるりと見まわす。跪く衆人、皆、涙を流して祈りを捧げている…はぁ。ダメだこりゃ。いや、かえって好都合か…説法なんかできないものなぁ。おいら。

  「こちらからどうぞ。”使徒”様」

 「プロケル神官…楽しんでるだろう?」

  「ふふふ。いやぁ~まさか、こんな次第になるとは!流石使徒様!神もわかってらっしゃる!おお!ハレルヤ!」

 おい…

  「しかし…大ごとでございますね。”使徒”様。」

 「トマス殿…後はお任せしても?」

  「はい。後はお任せくださいませ。プロケル神官が後は奇麗にまとめてくれるでしょう。」

  「ふふふ。お任せあれ。さぁ、皆さん…」

 ここに残ってると神様がまたやらかしそうだからおいらは撤収しよう。

  「…神様…ミッツ様。私も改宗してもよろしいでしょうか。」

  「チェルシー?」

 「ん?チェルシーちゃん?そういうのはお父上を交えて。」

  「…良いのです。父様もどうせ信仰なんかしていませんし。私の意思でございます。」

 「いいんじゃね?それこそ自由意志だろ?」

 「まぁなぁ。本拠地に帰ってからね。それまで十分考えておいてね。」

  「はい。意思は変わりません。」

 だよなぁ~まぁいいか。


 伯爵も教会に置いてきた。おいらはそそくさと撤収。このまま街に繰り出すか。

 「ったく、えらい目に遭ったわ」

 「いいじゃん。笑えたし」

 おい!

 「…これから街に入るたびに大騒ぎになるぞ…」

 「大丈夫だろう?プロケルが上手くやってくれるさ。そだ。ポニーにキノコ持って行ってやるか。」

 「ポ二コーンか?あれ、可愛いよなぁ」

 「…いいな…ポ二コーン。おっさんには珍しくヒットだ!」

 「どうも。」


  牧場に行き、ポ二コーンと戯れる。うん。平和でかね。本当にキノコが好きなようだな。もしゃもしゃとよく食べる。体が小さいから量は知れてはいるが。

  「あ!トワ様!」「ミッツおじさん!」

 「お?どうしたんだい?」

 『海色の手綱』の連中その関係者の子供達。

  「お世話に来たの!」

 「おお!そいつはご苦労だね!じゃ、ニンジンも出そう」

 ニンジンを手に立ち去る子供達を見送る。

 「どうだい?パレアセア殿、不自由はない?」

  「パレアセアと。我らの事も呼び捨てでお願いしますよ。いやぁ~全くありませんよ。快適、快適。海の富を独占するとあのような高級宿も余裕でしょうか。」

 「独占してる気はないのだが?冒険者連中は最初から”無理”と諦めてるし、やるにしたって、無計画、短慮のアホだ。十分以上に準備をし、頭を使って挑めばいいだろうに。」

  「耳が痛いねぇ」

  「ですが、ミッツ様、装備やら…”勇者”様もいらっしゃいますし…」

 「そりゃ違うって。ドゥラティだったか?まぁ、装備も重要っちゃ重要だが、クラーケンやら、でっかい怪獣なんかの前じゃ無意味だろう?ひとひねりだ。

 場を読み、気配を読み、そんな奴らと遭わないに越したことはない。引き際ってのをわかっちゃいない。ま、俺は戦いたいがね。」

 「トワ君は戦闘狂だからね…。引くのが一番。目の前の真珠より命だ。生きてさえいれば、考え、また挑戦できるだろう?それに、エレン達、『迷宮の光』の連中なら、独自に”採集”できるだろうさ。なぜかこの世界の冒険者連中は頭を使わん。富を得るんだ。それなりの手段、手法もあるだろう。」

  「それなら、うちも”採取”できるように手ほどき願えますか?」

 「どうよ?トワ君?」

 「うむ!ダンジョン部に入れ!ダンジョンに繰り出して死ぬほど鍛えてやろう!ドラゴンとタイマン張れるくらいに!」

  「…死んじまいますよ…」

 「大丈夫だぞ?ある程度の域に達すれば。エレン達なんか笑いながら盾持って突っ込んでいくぞ?」

  「はぁ?!」

  「マジ…か…」

 「タイマンはアレだけど…チームではダンジョンの並ドラゴン程度なら狩るよ。…おすすめはしないけどね。他にも飯の種はいくらでもあるさ。特に今は物流が手薄だろ?」

  「…だな…さすがにドラゴンは…な。」

 「ほら。そんなんだから、指をくわえて見てるだけなんだぞ!冒険者なら命を懸けろぉ!」

 「こらこら。でも気配察知を極めるか、最低、ダンジョンの並ドラゴン程度屠れる武は欲しいな。そうすりゃ、突発的に出てくるシーサーペントから身を守りながら撤退する位なら何とかなるだろ。なにせ、海にはドラゴンなんか屁みたいな魔物、怪物がごろごろいるからなぁ。デカい、クラーケンやら、モササウルス…”魔槍の射手”やら。この前“外洋”から来た人に聞いたら1km以上ある龍亀もいるそうだぞ。」

  「…はぁ?」「1…k…m…」

  「本当かよ…」

 「この世界も広いなぁ!なぁ!おい!ワクワクするだろう!」

  「違いますって…トワ様…」

 「ま、ダンジョン部でどうぞ。」

 

 再び牧場の方に目を向ける。子供達も一生懸命お世話をしているなぁ。ブラシでごしごし。ポ二コーン達も気持ちよさそうだ。お!大きい馬達もブラッシングしてほしいのだろう。ちゃんと順番待ちをしている。ラクダ達もか。

 よっしゃ!おいらも混ざるか。ブラシを両手に装備!フタコブラクダにターゲットオン!じわりじわりとにじり寄る。なんだぁ?そのイヤそうな顔は!わしゃわしゃしてやるぞ!


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