一つのリンゴ。
朝食を摂り。チェルシーちゃんとアーサー君を連れての町ブラ。彼らも一般人の服装を着ている。が、謎威圧が漏れる…生まれながらに”貴族”なんだなぁと実感する。
護衛はカイエンどん。斥候隊も居るな。トワ君?トワ君はなにやら用事があるとかで『迷宮の光』と出て行った。ダンジョン部?どうせ老師殿の所で酒盛りだろう。
「朝市と言う物でしょうか。賑やかですね。」
「うん?そうだね。普通の家…もちろんチェルシーちゃんとこの料理人だって、こういうところで仕入れてると思うよ。午前中に必要な物をね。」
「この時間だと朝早く収穫して持ってくるのでしょうか?」
「そうだね。昨日のうちか、葉物なんかは暗いうちに収穫してね。採れたて新鮮だぞ。オヤジ。それくれ」
「あいよぉ!丁度食べごろだよ。お嬢ちゃん。」
親父からリンゴ一山、10個ほど購入。勿論マイバッグ持参だ。”洗浄”っと。一応ね。
「はいどうぞ。このまま齧ると美味しいぞ。」
お行儀は悪いが、大切な事だろう。レブランティさんも何も言わない。こちらに任せてくれているようだ。
子供達もおいらに習い、リンゴまるかじり。
「”しゃく”美味しい!」
「”しゃくしゃく”うん。果汁が溢れて。丸のままというのも初めてですわ。皮、味が濃くて美味しい!」
うんうん。そういうことも大事だよね。
「…そういえば。ミッツ様、お金をお貸しくださいませ。買い物というものをしてみたいです」
「こら。チェルシー…そういえば父上から…レブランティ、預かっていないかい?」
「はい。しかし買い物ですか?」
「折角ですもの。色々と経験したいじゃない。」
「…はぁ。」
「では早速行きましょう。お兄様。ミッツ様教えてくださいませ。」
「じゃ、お小遣いな。二人で小金貨一枚ね。お金の”おおきさ”は覚えているね。」
「「はい。」」…。
とまぁ、こんな感じで平和に過ごす昼下がり。彼方此方の出店や屋台で色々と買っているようだ。アーサー君は戦闘用ナイフの値段にビビり、チェルシーちゃんは食材に大いに関心があるみたい。
ま、色恋なんかまだ先だろうし。食欲結構。
「ふぅ~食った食った。で。頭領、明日には出られるのかい?」
只今、夕食を終え、部屋でくつろいでいるところだ。
「ああ。問題ない。『海色の…』なんだっけか?パレアセアたちも準備万端。荷造りも終わって”収納”に入れてる。馬車の手配も済んでるよ。」
「了解。ごくろうさま。」
「トワ様、ミッツ様。トラヴィスでダンジョンに潜るのですか?」
…潜んないよ…アーサー君…
「さすがに潜らんよ。ダンジョン行ったばっかだしな…何だよ、おっさん。」
「うむうむ。成長したなぁ。流石トワ君。」
「…まぁな。潜るのにも準備が必要だ。安全第一!遊びで死んじまっちゃ、つまらんだろう?」
…おい、コラ!仕事だぞ、仕事。冒険者たちの。
「え?ええ?」
「旦那ぁ、言ってやってくださいよぉ~俺ら、それで食ってたんですけど。」
「おう。悪いな。ま、今は準備不足。おっさんの説得にも材料不足。どのみちアーサーは潜れないぞ。」
「そうなのですか?」
「ええ。坊ちゃん。せめて成人してからですね。それまで己を鍛えておくことです。」
「もっとも、ダンジョンなんかより、”海岸”に降りられる方が箔付けるには格が上かもしれませんよ?」
「坊ちゃんが成人して挑む時は我ら『迷宮の光』で護衛いたしましょう。それまでは鍛錬ですぞ。」
「はい!お願いします!」
「…単純ね…お兄様は…」
…そう言う女の子は宝石がちりばめられた”自決用ナイフ”にうっとり。ご満足のようだ。…怖いよ。チェルシーちゃん!
「…じゃ、明日に備えて寝るか!」
「おはよう。旦那方。お世話になります。」
門のわきには2台の馬車と『海色の手綱』の連中だ。フックシーとコンコロ-ルは妻帯者だったな。奥方二人。子供が…8人か…多いな。賑やか…ん?
他にもう一家族と、若い女性が二人。人族で成人はしているようだが…
「あ、頭領には話してあるのだが、フックシーところの嫁さんとこ両親と義妹家族。それと…」
「私はグラフィカです。」
「私はフィセロ。」
双子ちゃんか?よく似た女の子…いや、成人してるであろうレディだな。
「…この町のギルドでちょこちょこ世話してやってた新米冒険者の姉妹なんだが、連れて行けと」
「…ご両親は?」
「あんなやつら!」
「ほら、フィセロ。両親と呼ぶべき者はいません。連れて行ってください。」
「で?頭領殿?」
「別に良いんじゃね。姉貴のとこに預けるか?」
「…了解。じゃ、よろしくね。」
その後それぞれの家族の紹介を受けた。子供は3家族まとめての数のようだ。うちの馬車も加え、3台に分乗。冒険者である『迷宮の光』『海色の手綱』そしておいらは走る。
人族割合が多くなったからスピードは落ちるが、普通の馬車の移動に比べりゃ格段に速い。荷物、水などはすべて”収納”だし。
おいらのフタコブラクダはチェルシーちゃんにとられたようだ…上手に走らせているよ。ちゃんと世話するのならあげてもいいな。
アーサー君も騎馬を選んでるから公爵家用に用意した馬車がメイドさんだけだという…ま、子供達が乗ってるけどね。グラフィカ姉妹が御者を務めている。丁度よかったね。
「ふぅ。”勇者”様の御加護か。移動が速いな。」
「ああ…もう国境だぞ。信じられるか?パレアセア」
「信じるも何も目の前にあるのは国境の門。だろ、コンコロ-ル?」
「ふふふ。まだまだこんなモノじゃないぞ。今は普通の馬の馬車と、不慣れな貴殿らが居るからな。」
「そうそう。でも分かるよ。尋常じゃないもんな。このスピード。俺も最初、びっくりしたもの。」
確かパテンス殿と、カルネラ殿…だったか。
「ん?パテンス殿、本来であれば?」
「仲間だ。パテンスでいいぞ。無礼講でいこうや。ああ。ものすごい速さで駆け抜ける。馬よりも速くな。身体能力の底上げでな。俺ら人族も最初は恩恵が少ないが慣れればだんだん速く走れるようになる。今は…そう、疲労が無いだろう?」
「ん…そういえば…かなりの距離を走ったよな…」
「ああ。休憩中に良く伸ばしておけよ。走ったことには変わらない。負担がどうしても出るからな。」
「あるほど…気に留めておくよ。コンコロール、フックシーたちにも伝えておいてくれ」
「応。」
「そうかぁ~なるほどなぁ。”無限収納”と”高速移動”かぁ。商人にとっちゃこれ以上ないな…」
「まぁなぁ。ミッツの旦那は頭も良いし、弁も立つ。交渉事も好きらしいし。正に天職だな。」
「…天職?勇者様だろう?」
「おいおい。ドゥラティ、勝手に呼んで、勝手に期待して、全ての責任を押し付ける…頭領殿だってまだまだ若い…ホント罪深きことだよ。俺なら大暴れだな。」
「そうそう。パレアセアの言う通り。俺らにできるのはミッツの旦那達には今のように自由に面白おかしく過ごしてもらえるようにと願うくらいさ。」
「だな、それが難しい…ほれ、ギルドのも手配書回ってきてたろ。ディフェンから。教会からも別ルートで来てたというしな。」
「そうだな…それにいろいろと悪い噂も聞く…」
「その辺りの事は俺も詳しくねぇがなぁ。あの死んだといわれる獣人の冒険者たちの多くがミッツの旦那の下にいる…ま、そのうちに分かるさ。」
「そうか。楽しみにしておくよ」…。




