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おいらにカルビを…

いらっしゃいませ~

 交易都市【ティネル】に到着。

 早速と、門に並ぶ列に。恒例の入町チェックを受ける。のだが……

 

 「ふん、獣人の小僧か? 何しに来たんだ?」

 はぁ? どいつもこいつも……雹に頷いてやる。何も悪い事はしていないと! 

  「【商業ギルド】の依頼で来ました! これ、ギルド証です」

  「ふん、どうせ偽……」

 ギルド証の裏面を見て固まる門衛。うん?

  「し、失礼しました! お通りください!」

  「お、おい? どうしたんだ?!」

 お仲間さんも、頭に”?”マークがが付くほどの変わりようだ。

  「いいんだよ!」

 おいら達も順に提示して門を通る……ぺこぺこ頭を下げる門衛を後に……

 マシューさん、なんかやったのか? 権力とは恐ろしいものよのぉ。

 

 「……父さん???」

 「マシュー大明神の御威光だな。帰ったらマシューさんを問い詰めよう。でも問題なく通れたから感謝だな」

 「ああ。ちょっとびっくりしたけどね。じゃ、ギルドに行って報告、仕事終わらせて食事に行って情報の収集。白地図を自分たちで埋めていこうぜ!」

  「帰りも依頼受ける?」

 「軽めのならいいかもね」

 

 【ティネル】……なかなかの規模の町だ。宿も多い? 地図を見るに、エキドレアという大きな町への宿場町と言ったところか? それと、ここらの開拓村を束ねるような位置づけにもなってるのだろうね。門の周辺にはこの時間でさえ、市のようなものが立っている。野菜なども豊富だ。

 もちろん、購入しながらギルドを目指す。種なんかもあるといいなぁ。今後の為に。

 

 トワ君と雹は、消費したカロリー補充にと屋台を覗いている。肉かぁ……海の話じゃないけど、魚食いたいなぁ。


 市と屋台を物色しつつ、商業ギルドの看板が見えて来た。

 「「「こんにちは」」」

  「はい。ようこそ。商業ギルドへ!」

 預かった、手紙、小荷物等をカウンターに並べる。伝票と品物の照会が丁寧に行われた。もちろん漏れなど一切なし! 依頼終了のサインとギルド証の確認、照会を行い、初依頼は終了となった。

 

 情報収集を兼ねてギルド掲示板ものぞく。ふぅ~ん。採集依頼もあるな。冒険者だけじゃないんだな。今度泊まり込みもいいかも。盗賊の出現情報は無しか。油断はできないな。あれは湧くものだ。

 

 さて、食事でもいきますか。

 受付嬢にお勧めの店を聞く。ギルドで紹介してる店もあるとか? 曰く、【牛の尻尾亭】【豚の城亭】がお勧めだそうだ。

 【牛の~】の方は職員も良く使うとか? 【豚の~】の方は、最近、人気が出て来たとかでギルドとしても勧めてるとか?

 じもぴー(死語か!)が言うのだ、期待大だな!


 大通りに出て、目指すは【牛の~】なんだっけか……。あれだな。

 ぱっと見はそこそこお高いレストランって感じの店構えだな。受付嬢いわく、そんなに高くはないと聞いたが……さて。

 

 【牛の~】の店内に。うんうん。清潔だし好感が持てるな。なかなかに繁盛してる。

 

 「おすすめ3つね」

  「……はい」

 ん? 違和感? ちと、おいらたち、汚過ぎたか……。一応、”洗浄”はしてるが……。

 暫くして料理が運ばれてきた……

 

 「……お待たせしました」

 うん? 雹の料理だけあからさまにおかしい。ったく。そういう事か。こんなところにもあるのだな。差別が……

 ひと昔の南アフリカを思い出す。色付き人種は専用のレストランで食うのだと。それ以上に怒りを感じたのは、”名誉白人”と言われて舞い上がってる日本人の姿だったがな。

 

 「これは? 息子のが違うのが来たようだが?」

  「父さん、俺、これで 「良くない。店長は?」 ……」

  「あいにくと……不在……でございまして」

 「シェフは?」

  「……」

 さすがに、いない。とは言えんわな。

 「騒がせたな」

 ”ちりん!”

 小金貨一枚を適当に放る。騒がせ代だ。

 「帰るぞ」

 「ああ、胸くそ悪い。こんな店が【商業ギルド】御用達? 見る目、無ぇな! マシューさん、獣人の商人もいるって言ってただろうに。文句だな!」

 「だな。行くぞ、雹!」

  「ましゅー? マシューって……総括の? お、お客様!」

 ふん! 知らん!

 ……

 

 「父さん俺……」

 先ほどから、黙って後ろを着いて来た雹が、すまなそうに口を開く。

 「なんも悪くない!」

 気にすることはない。悪いのはあいつらだ。潰れてしまえい! 少なくとも、”商業ギルド御用達”の看板は下ろさせるつもりだ! そんな力なかろう? って? マシューさんにダダ捏ねてでもね! 屁理屈なら任せておけ!

 

 「だぞ」

 トワ君の声色も低い。モロ認識しちゃったものなぁ。

 雹に向き合い、

 「俺の息子だ! なにか問題でも?」

  「うう……ん」

 「よし! じゃ、次! 【豚の……豚小屋に出発だ!」

  「……父さん、『城』だよ。【豚の城亭】怒られるよ」

 ……そうだっけか?

 「うん? 雹……おっさんマジみたいだぞ。笑い取った訳じゃなさそうだ」

  「……父さん?」

 「じょ、冗談だって、冗談。解ってるさ! 【豚小屋亭】だろ?」

  「……【豚の城亭】ぷぷぷ」

 ……おふぅ。

 「しょうがねぇなぁ! おっさん!」

 ”ははははは”

 ま、笑いが獲れたから良しとしようか。わ、わざとだよ? ボケてなんて……

 

 で、豚小屋、もとい城亭に到着……数メートル手前から漂う香気! (だいぶ手前から、雹の目の色が変わったものなぁ。鼻良いから)もうもうと出てくる白煙! ああ、これは焼肉屋の雰囲気! 炭焼きか! 炭焼きなのか? ……残念。

 薪だった。最近(前世界)流行りとかなんとか? タレはあるのか?

  

 「いらっしゃい!」

 「適当にお勧め持ってきてよ。3人だ」

 「へい!」

 手際いいな! ん?タレか! 醤油あるのか?

 「おまたせ! 好みに焼いててこのタレか塩で食ってくれ。獣人の坊主か、足りないだろ大盛りサービスだ」

 って、でけえ骨付きだ。一瞬ここもかよと思ったけど真逆だった。おいらの肉の方が気持ち少ないぞ?

 タレはフルーツ系だった。違う料理と思えばこれはこれでいける。南国テイスト。付けダレもいい。が、炎が……肉が燃えるぜ! 焦げる……

 「う~~~~ん……惜しい!」

 「どうした? おっさん、メッチャ美味いぞ? これ! 牛だ! 牛!」

  「うん! 美味しい!」

 「ああ」

 厨房の陰から、ぎろり! 睨むなよオヤジ。聞こえてるのか! おいら達の会話が!

 ……

 

 「なにか問題でも? 旦那」

 暫くしてか、とうとう我慢が出来なくなったか。出て来たよ……。であれば!

 「味は良い。とても美味しいよ。薪火、熾火ならまだしも、薪くべたら素人じゃ焦がす」

 「む! それは……」

 心当たりがあるのだろう。

 「そのせいだろう。肉も幾分厚い。完全に火を通してしまうとだいぶ硬くなる。そこで最初から炭は使えないの?」

 「炭? 鍛冶に使うやつか?」

 「ああ。炭にしてみ、大きな炎も出ずに、中までしっかり焼けるよ」

 「ふむ、ちょっと待ってくれ。鍛冶ギルドにいってくる」

 本当に行ってしまった……客放りだして。オヤジぃ。即行動か。しかたない。提案した手前、待つか……

  

 「父さん美味しくなるの?」

 「たぶんね、なぁトワ君」

 「ああ、ここのタレもいいし。タレだけ売ってくれないかな?」

 「う~ん。おいらならあと……なんでしょう?」

 今度は女将さん?

  「ごめんね。ここの女将のマーサってものだ。お客さん面白い話をしてたからついね。良かったら聞かせてくれないかい?」

 「……素人考えですよ?」

  「はい」

 「甘味は付けダレのほうを強くする。唐辛子の粉や、ニンニク、ニラなどの薬味をメニューに。唐辛子粉位はサービスにしてもらいたいとこですね。自由に使える感じ」

  「ふむふむ。なるほど……確かに唐辛子も考えたんだよ。後かけか。一年中あるし。ニンニクはすりおろしてサイドメニュー……ふむふむ。」

 「後は……


 女将さんと、メニュー談義。お客さんも、『しょうがねぇなぁ』と、長居せずにさっさと捌けていった。あのオヤジの事だ。日常なのだろう。常連さんが、営業中の札を、準備中にひっくり返していく始末だ。

  

 「戻ったぞ。早速、試してみよう」

 と早速、炭をおこす。オヤジ。

 「火力が強いから、コンロも石かレンガ張ったほうがいいかもね」

 煌々と輝く炭。少し離したところに鉄の格子を乗せ焼いてみる。

 「ほう、炎がないのに火力強いな」

 「鍛冶でつかうんですから」

 「「味見♪ 味見~♪ ふふふふ~ん♪」」

 と、鼻歌交じりのトワ君と女将さん……なんで、曲が一緒?

  「俺も!」

 遠慮がちに雹も。期待大だったもんな。ふふふ。

 「火力が強いから……って、お客さんは?」

 「大丈夫。今日はもう休みだ」

 おう……

 

 ”じじじゅうぅ…”

 

 「片面焼いて……と、肉汁が上がったらひっくり返して……はい! 焼き上がり! タレを付けて~パク! ……至福」

 「俺も」「私も」

 「なるほど火の通りがいい。マキより高いが、持続時間も長いし、煙も少ない。高温、時間短縮調理からか? うまみが濃い……」

 「ステーキ肉にも応用がきく」

 「む。確かに……」

 「焼き加減を調整するといいかもよ。おいらは良く火を通したい、雹は片面焼きがいいって言ってたのでレアだな」

  「れあ?」

 「火の通った半生だ、いいかい」

 ステーキ肉を拝借。中央付近強火で表面を一気に焼き固め、隅っこに避難、アルミ箔はないからこのまま少し放置だな。で切って雹の前に出してやる。

  「父さん、これ美味しい! 生? なのにあったかい?」

 だろ~

 「どれ、ふむ。いい肉ならこの方が……いいかもしれない」

  「ニンニク持ってきたよー」

 と、すりおろしにんにくを持って女将さん。ナイス!

 「ぷはぁ! うめぇ!」

 ……ワイン飲でんじゃねぇーよトワ君、飯食ったら走って帰るのだぞ?

 

 それから肉談義がはじまった。

 前の世界の知識やこの世界の肉などいろいろ聞けた。それにごま油あったよ。癖が強くて使わなかったとのこと。ごま油使ったタレの試作やら、焼き方やら。

 ここん家のタレは完成されてたので手を付けたくなかったけどオヤジの研究熱心さに負けた……。

 あーだーこーだしてるうちに夜になった……当分肉は見たくない……。

 

 夜になってしまったので、ご厚意に甘えて泊めてもらうことになった。

 洗浄で綺麗にしてから風呂にはいったよ。ここの家には小さいながら風呂が。洗浄魔法があるが、毎日油と煤にまみれてるので気持ち的にお湯で洗いたいとのこと。

 うん。解る。

 それと、どうもおいらが使う魔法ほどは綺麗にならないようだ……

 

 翌朝、店前を借りて武術の型の修練。3人並んで型をなぞる。むむぅ雹大分上達したな! 美しい。

 練習終了後、井戸で汗を拭く。濡らしたタオルが気持ちい。洗浄魔法じゃ味気ないだろ。

 

 女将さんが朝食を用意してくれていた。ご馳走さまです! ベーコンとパン。そしてコムタンスープ? 白濁した牛骨スープだった。もちろん美味かったよ。

 オヤジに炭を使った調理法や、肉の焼き方、レシピなどの登録について相談されたが、全てオヤジの名前で出してもらうことにした。特許利用料が入れば、30%だけもらうことに。半々て言われたけど、なんとか30までもっていった。……前世界の知識だしね。それにオヤジの研究熱心さがあってこそだから。

 食休み後、オヤジと一緒に商業ギルドに行き、特許申請。契約書の発行をおこなった。

 全ての権利はオヤジに。特許使用料の30%はおいらにって。そこで一筆、【牛の~】なんたらの経営者には使用させない。と。私怨? そうだよ。ケツの穴が小さくとも結構だ!

 

 礼をいってオヤジとは別れた。今日も休みにして研究するそうだ。

 

 そうそう、登録の時に昨日の職員さんがいたのでついでに報告チクリを入れておいた。くくく。

 「すいません」

  「はい?」

 「唐突ですが、貴方は獣人に偏見はありますか?」

  「え? とくには。職員も人間ですから、中にはそういった思想を持ったものも確かにいます。ですが、ギルドの構成員、商売相手のお客さまにも獣人族の方はいらっしゃいます。ですので、表立って騒ぎを起こしたり勝手する者はいません」

 「そうですか……」

  「なにかありましたか?」

 訝し気にこちらの目を見てくる受付嬢。ほう。少しでも情報をと。心配ご無用! 今からしっかり、密告させていただきますとも!

 「すいません。試すようなことを……でしたら、【牛の~】なんとかは獣人の商人や、獣人がメンバーにいる商談相手には紹介しない方がいいでしょう。不快な目に遭いますよ」

  「一応ギルド御用達みたいになってますが……お話伺っても?」

 「はい。それでは……

 

 昨日のことをかいつまんで報告。今後、関わりたくないので、謝罪や補償は放棄した。

  

 「もふもふの敵……」

 心の声が漏れてますよ受付嬢のお姉さん! 同志よ!

  「……解りました。利用云々は置いといて、獣人のお客様には注意するように周知します。情報ありがとうございました。御不快な目に合わせてすいません」

 「いえ。いえ。おかげで【豚、小屋……の城亭】といういい店を知りましたし。なぁ」

  「はい!」

 「危なかったな……おっさん」

 ……大丈夫……よ?

 「そうそう、アヌヴィアトに帰りますので、手紙とかの搬送依頼あります?」

  「はい。あります!」

 ……そうして、復路の依頼も受けおいら達は帰路に就いた。

 

 ただいま川で採集中。おいらは河原でお昼寝だ。トワ君は山に獲物狩りに、雹は川に洗濯に……じゃなかった魚取りに

  

 「と! 父さん!」

 ん? 雹よ大きな桃でも流れてっ……てぇ……?! げぇ!

 「逃げろ!」

  「くっ!」

 「魔力送る!」

 なんじゃあれは……

 どんぶらこ、どんぶらこっこ! と流れて来たもの……今度は蛇かよ! 長! 太!

 

 噛みつこうとする蛇、双剣でいなす雹。なかなかやるな!蛇の巻き付きを飛びのく!噛みつき!いなす。うんうん。ぱっと見、マムシのおおきなヤツ。短くて太い。

 「よくやった雹!」

 颯爽と現れる勇者様。雹に噛みつこうと首を伸ばし切ってるところに、魔剣一閃!”ごとり”首が落ちた……一撃かぁ! うぁ、まだ噛みつこうとしてるよ……胴体もまだまだ元気だ……。

 

 「おっさん、このまま川に入れちゃおう。血抜きにいいかも」

 「血抜き? 食うのか? これ……」

  「父さん! 蛇肉美味しいよ! たぶんこれ、ブラックバイパー! 超高級食材だよ!」

 「まじかぁ。シスターに持ってったら気絶しちゃうな」

  「なんで? 喜ぶよ?」

 「なんでって……大丈夫か」

 ふと、おばちゃんキングの顔が浮かぶ。きっと、バリバリ皮剥いで、ブツ切りにしちゃうんだろうなぁ。

 「この皮、かっこいいな! ブロールのおっさんに革にしてもらってなんか作ってもらおうぜ!」

 「お! いいね! リュックの表地にいいかもね!」

 良い土産ができたわ。

 

 イベント多すぎ……RPGゲームでもこんなにぽんぽんイベントないぞ? そのあとの旅程はつつがなく、日没までにはアヌヴィアトの町に到着した。



本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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