酒宴?当たり前じゃん。何言ってんだ?(トワ氏談)
いらっしゃいませ~!
朝、商業ギルドの前で待ち合わせ。
雹を引き連れ、グローヴィンさんとこに向かう。
朝のお勤めに行く人用か、結構な数の屋台も出ている。いつも腹ペコトワ君が雹を連れてこっちの店からあっちの店に。雹も楽しそうだ。しかし、朝から串焼きか。
昼前かぁ…大丈夫かな。ん、開いてるみたいだ。
「「こんにちは~」」
「おうおう。どうした?何か必要か?入れ、入れ。うん?その子は?」
「あ、雹と言います、私の養子にしました。ほら」
「…初めまして!雹です。よろしくお願いします!」
いい子いい子。
「…おまえさんも…難儀な生き方だの。で。」
と、ため息を吐きつつ。老ドワーフが言う。
まあね!
「そうそう、先日、熊に追い回されて…」
曲がった鉄槍を出す…
「直ります?」
「直すより買い替えたほうがええな。柄の部分が完全に折れとる。」
「曲がっただけ…に見えますが?」
「うむ。伸ばしても、次はぽっきりじゃ。」
…じゃダメだな。後で武器庫から分けてもらおうか。
「なるほど…あ!あとこの子の武器見ていただけます?」
「ん?魔物でも狩るのか?」
「ええ。一緒に運搬業するもので…。身を守る手段が欲しいのです。」
「ふむ。どれ。」
ふむふむ、もふもふ、雹の体を触る。そして最後の掌を凝視。
「ふむ。双剣使って見るか…一発の威力は小さいが、獣人の、しかも豹人族なら向いておる。ちと、まっとれ」
ぶつぶつ言いながら、店の奥にいく。グローヴィンさん。
”がたごとがたたた””がらら…”
…大丈夫か?
「どれ、これなぞどうだ?鉄製だが仕上げまで一貫して、良い仕事だ。わしの弟子が作ったものだが、初めてには十分だろう。持ってみろ」
「軽い…」
「であろう。」
「双剣かぁ。教えられないよ。」
「お主…教えられる武術あるのか?槍は多少心得があるようだが」
笑うな!そこ(トワ君)!
「…う~ん」
ないな!ナイフなら…包丁?魚のさばき方くらいなら…。自称槍使いだ…調子こいてました!
「心配せんでも、冒険者ギルドに依頼すれば良かろうて。武術指南も引き受けてくれるぞい?」
「なるほど…でも、揉めてるんだよなぁ~。あそこ。」
「はぁ…わしが依頼しておこう。組織はどうあれ、真っ当な者もおるで。依頼料は2日で小金貨1枚10日分くらいでいいかの?」
「助かります。ですが、獣人ってことで不当な扱いを受ける心配は 「無い。わしが依頼するのじゃぞ?武器屋敵に回して冒険者できるものならやってみぃ。」 ですよねぇー。お願いします。」
金貨2枚渡す。
「多いの、」
「手数 「いらん!」 …じゃぁ、受けてくれた人に、良くしてくれればプラスで払ってやってください。」
「ほう。」
「人参ぶら下げれば馬も良く働きますので。」
「ふむ。人参か…うむ。わかった、そうするとしよう。決まったら宿に連絡入れるぞい。」
「お願いします。で、双剣の代金は?」
「そうさのぉ、埃かぶっちゃ可哀そうだ、10枚でよいぞ。」
10枚かぁ、100万?…まぁドワーフ製だしね。それに身を守る大切な者だ。変にケチって、肝心な時に使えなかったら本末転倒だわな。よし!
「はい。これで」
10渡す。
「父さん…いいの?」
「命に係わることだからね」
だ、大丈夫さ!
「あと、ちょっと良い皮鎧みたいのある?」
「ふむ。ブロールの奴のとこへ行ってみるかのぉ?」
「ブロールさん?ああ~。つるっぱのおっさんかぁ!」
こらこら。
「カッカッカ!そうじゃ、そうじゃ。あやつは革細工も得意での。剣帯も良いのがあるだろう。」
「へぇ。俺も買おうかな。」
「皮かぁ。リュック作ってもらうかな?」
「おお!いいね!俺もほしい!」
「じゃぁ、3つつくってもらうべ。」
グローヴィンさんに連れられて工廠へ…店舗という感じではないな。工場か?
石を多用した堅牢な建屋だな。ドワーフの好みなのだろうか。
「臭くないんですね?」
「うむ。鞣しは別の場所でやっておるでな。お~い、いるか!」
”どんどんどん!”…”がんがんがん!”
ものすごい勢いで戸に拳を打ち付けるグローヴィンさん。壊れるがな。
『うるさいわい!居るわ!鍵あいとる!入ってこい!』
家の中から声が。そりゃ五月蠅いわなぁ。
”がちゃ””がんらがんら…”
「トワたちを連れてきたぞい。」
「「お邪魔します」」
「「邪魔ならかえれ!」」
デフォかい!グローヴィンさん家じゃないだろが!
「むっほっほっほ。よう来た、よう来た見ていくがええ。」
と建屋内に入った。
いやぁ~壮観!壁に10領の鎧。中央には商談スペースかな?大きくて重厚なテーブルが置かれている。奥のカウンターには皮鎧数領と素材の皮、金属片の見本が整然と並んでいる。ごっちゃっとしてるようで整理が行き届いてる…矛盾してるようだが圧倒される。
「で、今日はなんのようじゃ?酒盛りか?」
「酒盛りは後日で。私の養子です」
「雹です。よろしくお願いします」
「…お主は…まぁええわい…」
ここでもため息のプレゼント。
「それで、この剣の剣帯と、背負い鞄を作ってもらおうと思って」
「これは…。…グローヴィンよ、良いのか?」
「ふん。埃かぶっとるよりはええじゃろ。」
なにか大切なものなのか…
「…ふむ。承ろう」
「あの、その双剣なにか由来でも?」
「大したことはないぞ、こやつの愛弟子の形見じゃ。」
お、重いがな…
「変な顔するでない。長く生きておれば形見などいくらでも溜まるわい。」
そりゃね。長命種だもの。
「ただのぉ、貴族に難癖つけられての。代金踏み倒されて不敬罪で処刑じゃ…。」
「そ、それは…」
「わしの耳に入っておれば…のぉ。後の祭りじゃわい。」
「湿った話は終わりじゃ。で背負い鞄とな?ここにあるようなのでは駄目かの?」
「はい!はい!俺もこれに合う剣帯ほしい!ナイフも刺せるやつ!」
「おうおう。まかせろ。で、どうじゃ。」
並べられている背負い鞄…もちろんよくできている。が、どれもおしい!
「そうですね、これと、これのこの部分を組み合わせて。身体に密着するようにベルトを…ここにベルトを通せるように。そして豚鼻つけて拡張性を…」
と前世界のリュックサックに希望を足して、書き書き。
「ほうほう…ここにはこの革がいいな。躰の自由度を妨げないようにここを…ふむ。ここに金具があれば…」
さすが”匠”未知の機能も知識と経験でカヴァーだ!
「面白いのぉ。お主の世界の物かの?」
「ええ。それにこの世界の物を足した感じです。トワ君はなんかある?」
「ここにナイフを差す!」
あっちゃこっちゃにナイフだの…仕込みは確かにロマンだが…尻に刺さりそうだわ。
「…何本装備すんのよ。でお値段は?」
「試作を何点か作ってみんとの。それからだの。腕がなるわい。」
「おっちゃん剣帯!」
「おう、まっておれ。」
ごそごそ。
「トワはこれでどうじゃ?」
「ここは?」
「投げナイフがさせるぞい?」
「お!いいな…これ。なぁ、グローヴィンのおっさん?この太さで鉄の針みたいのつくれる?」
「ふむ?ナイフでなくてか?」
「ナイフだと高いだろ?無くすと勿体ない。俺ら、金ないし?鉄棒尖らせたものなら安上がりかと。」
「まぁ、現実的じゃないのぉ…当たらんぞ、そんなもの。」
「まじかぁ~どうすっかな。苦無みたいのがいいなぁ」
人にしか使えんぞ?あんな熊とか、こんな熊とかには。
「くない?ほう。どんなのじゃ?」
…そっちは勝手にどうぞ。
「で、雹じゃったか。これでどうじゃ。こことこことに双剣を、ここで調整。そうそう、ここにナイフを入れられるぞ。で、剣帯につけられるポーチじゃ。オプションじゃが、付けるかのぉ?」
商売上手だね…。
「ポーチにはなにを?」
「ポーションでも丸薬でも。剣に塗る毒でもええ。工夫しだいじゃの。」
「じゃ付けておいてください。」
…装備中…装備しないと意味がないからな!
「ほほう!凛々しいな!雹!」
「ありがとう父さん」
「よし、トワ君は?」
…まだかかりそうだな。
「お会計お願いします」
「おう、2でどうじゃ?」
「はい。」
金貨2枚20万円?渡す。まぁ。本物だし?それくらいするだろう。おいらも…ん?良さげなウエストポーチが。ダミー用に良いな…
「このポーチ。おいくら?」
「ふむ?100じゃな」
「ふ~ん。じゃあこれ…100?100!?高ぁ!」
「うむ。そいつはマジックポーチじゃ。安い方だぞ。そういえば”収納”持ちじゃったな。普通のは…ふむ、これでどうじゃ?1まいでええぞい。こいつは丈夫じゃ。」
ふぅ。高けぇなマジックバッグ!高級車一台分か。
金貨1枚渡す。言い値でホイホイだけど…安くしてくれてるんだろうな?たぶん?
「今日はいろいろありがとうございます。いい買い物でした。」
「ふむふむ。飲友価格じゃ。そうさな、一週間くらいで試作もできよう。そのころにまたの。」
やっぱ安いのか?良い買い物ができたようだね。ドワーフ万歳!…トワ君盛り上がってるな。今日は帰るぞ?飲み会はまた今度!
途中、昼飯食って街ブラだ。雹の装備は証ができるまでおいらが預かることにした。
グローヴィンさんの助言だ。難癖付けられて取り上げられる可能性もあるとのこと。ったく。
雑貨屋で孤児達全員分の歯ブラシ買って、焼きドーナッツみたいのをお土産にする。今日はこのまま、雹を送って行って、ゆっくり休もう。
なんか街に来てからイベントてんこ盛りだよなぁ。イベントが寄ってくるのかな?
「よう!旦那!」
…来たよ、イベントが…
「これはスルガ隊長、巡回ですか。ご苦労様です」
「治安維持だ。お、坊主。一緒に行動してるのか?悪いことしてないか?」
「ははは。雹です。養子にしました。かくかくしかじか…」
「…旦那ぁ。思い切ったことを。ほかの子も?」
「ええ、引き取りたいのですが…何分来たばかりで…右も左もわからず」
「解らないやつが養子かよ…」
…は、ははは…
「…ごもっとも。当面は金策、仕事の安定ですね。そう考えると…ギルド職員もアリだったな。今思うと。」
が…マシューさんの下ってのもなぁ…
「おっさん、冒険はするぞ?」
「だね。せっかくファン…っと。」
おおっと!やべ。ファンタジーじゃないわな。スルガさんから見れば日常だ。
「ふ~ん。冒険ね。ちゃんと訓練してるのか?死んじゃうぞ?」
「素振りくらいでしょうか。雹の双剣の講師を募集しようと 「お!ちょうどいい。うちの訓練に参加しろよ、旦那。うちにも双剣使いいるぞ」 …でもご迷惑じゃ」
「実際、坊主は心配してないんだ…筋は良さそうだ。そっちのトワはかなりのものだし。」
ん?なんか話が…思わぬ方向に?トワ君なんで爆笑?
「旦那…体捌きはなかなかだが…ちゃんと武器使えるのか?槍か?どうも気が伝わってこないというか?いい機会だから見てやるよ?」
おいらかい…これでもゴブリンや猪やら、熊やら………収納無かったら死んでるな。うん。
武器使い捨てだもんな。抜いたことない?かも?だめじゃん。物量勝負て。
「…思い当たることあるようだな。どうだ?」
「うん。雹より私のが問題ありそうです…。お願いできますか。もちろん授業料も払います。」
「じゃ、朝の鐘3には修練所、屯所のわきだ。」
「はい、お願いします。3人で伺います。必要なものは?…」
さっと打ち合わせて別れた。巡回中だしね。
「勝手に決めたけどいい?」
「最高!良いと思う!」
「はい」
「じゃ、グローヴィンさんとこに依頼取り下げの話をしに行こう。」
依頼前だったので何の問題もなく話はついた。違約金、勿体ないもんね。お金も全額戻された。律儀だのぉ。そこ!樽ださない!一体何樽パクってきたんだよ!
人をやり、フルメンバーで飲み会が始まったよ…途中から呼子をしたお弟子さん?も参加して結局、夜まで…ほぼ毎日じゃ。おねいちゃんのいる店に…なんでもありません。明日から朝早いぞ!特訓だ!
本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




