商業ギルドへゴー!
いらっしゃいませ!
「ごめん!トワ君、よ、予定がぁ~おいら達の人生計画がぁ!」
冒険者ギルドでひと悶着。身分証&冒険者デビューの計画がいきなり頓挫した。特に問題は身分証だ…
「いやあぁ~テンプレ乙!」
”ばむばむ”
肩叩くなよ…おじさん世代はトラウマなんだぞ…
「てかさぁ、トワ君。爆笑してないで止めてくれても良かったんだけど。」
「いやぁ~さすが!ジャパニーズビジネスマン!理路整然と屁理屈と嫌味を…おもしろかったよ。舌戦?」
「疑問系かよ!はぁ、アホしかいなかったから、舌戦にもならんわ。って、どうすっかね~マジで。」
「商業ギルドにする?俺ら、”収納”持ってるから、運送業とか?異世界チートでがっぽがぽ!大作戦?」
「ふむ。一考の価値あるな。」
大作戦?結構レトロなところがあるのな。トワ君。
「こっちもランクが上がればあちこち行けるようになるかもよ?」
「実際問題、商人の方が世間的に信用高いな…よし!いってみよう!」
「テンプレ乙~♪くすくす」
え?
「…商業ギルドにもあるの?」
「コショウとか砂糖、蒸留酒の販売?知識チート?マヨ?」
「ふむ。それなら危険はないな。持ってないし?ただ、信用ないからなぁ…その点だけだな。マヨ?ああ、マヨネーズね…衛生状況判んないから当分は造らないよ。」
「何かって…ああ、食中毒か?」
「そうそう。余程信用できる牧場か養鶏場を見つけたらな。サルモネラ菌やら、半分腐った卵じゃやだろ?」
「だよね~で、信用かぁ。一番痛いとこだな。異世界人だもんなぁ。出奔だしぃ~しゅっぽん!なんかいいな。」
けらけら笑うトワ君。ツボかい。
「それなら、ゴブキン魔石出して、この街救ったのは僕です!とか、担保に特大魔石を数個いれるとか?」
「担保?」
「そうねぇ~保証金というか。契約を破ったら没収って。まぁ、信用を金で買うようなものさぁ。今日はここまでか。宿探さないと野宿だぞ。」
「了解。風呂あるような大きいとこにしよう。ふかふか布団で眠るんだろな♪…誰が?」
…おいら達だよ…
「小汚いから入れないかもよ~」
「いこうぜ!おっさん!」
大通りに面したところに周りと比べても一段、小奇麗な宿を発見!その名も『朝露亭』…洒落てるな。
「すいませ~ん。」
「はいはい。お待たせ~。お泊り?」
人の好さそうな女将さんだなぁ。
「はい。ここって風呂あります?」
この規模の宿じゃ無理か?外見こじんまりしてるけど、なかなかの広さだ。清潔感もプラスだ。
「はい。時間内でしたらどうぞ。4の鐘まででしたらだいじょうぶですよ~。」
「では2人おねがいします!」
「二人部屋で!」
「はい空いてますよ。親子でご旅行ですの?夕食つけますか?」
「お願いします」
「では、18000kお願いします」
「はい」
んと…小金貨一枚が10000だっけか?
「ではこれで」
小金貨2枚をだす。
「はい。…ディフェン金貨なので…」?
「ああ…お釣りなしですね?」
セコイことするから…。ほんと面倒だな!あの国は!
金の含有量が少ないのだ。小国群国家発行の金貨に比べ、レートが安い。有事や、”勇者召喚成功”となり、各国に威圧を掛けようものなら、レートは同等になるのだろうが…おいら達逃げちゃったし?影武者仕立てたりするのかな?
「ええ。ごゆっくり。」
「「よろしくおねがいしまぁ~す」」
部屋の鍵をもらい、さっそく部屋へ!10畳くらいあるな。ベッド二つにサイドテーブル。掃除も行き届いてるようだ。いい宿だね。
「さぁ~~~~って!「風呂♪~風呂~♪」」
そりゃ、洗浄の魔法はあるけど…風呂は別だよね…日本人の心さぁ~。
風呂場に到着!男女分かれてるから、まっぱでいいんだよな?
「ゆくぞ!トワ!」
「おう!」
うっきうきだなおい!久しぶりの風呂だぁ。
「ふいいいいいいいぃぃ~生き返る…」
「おっさん臭ぁ!」
「はぁ?おっさんですが。なにか?」
「ふあぁ~~~。ふ、ろ、だぁ~~~」
蒸し風呂じゃなくてよかったぁ~。よし!あかすりだ!…でないな。老廃物は魔法でポン!か?何処へ行くんだろう…垢太郎が作れないではないか。
風呂上り。飯じゃ!ビールないんだよなぁ。夕食はお肉ゴロゴロシチュー?と茹で野菜。黒パンうま!硬いが味がいい。これはジャガイモか?蒸かしたのか、ゆでたのか2個ついてきた。シチューとの相性ばっちり。こらこらトワ君、とらないから…ゆっくり食べなさい。
「お代わりできるかなぁ。」
「お金払えばいいんじゃない?」
「うん、聞いてくる。」
「あ!エール、あればビール頼んできて。」
「おっけ~」
「お代わりできた。はい、エール」ほくほくだな。
「サンキュ。ん?ワイン?」
「俺が飲む!」
「…まぁいいか。こっち成人15歳だしな」
そいや、野宿んときもちびちび飲んでたな…
「「かんぱ~い」」
出奔以降、人間らしい温かな食事でした。今日はよく眠れそうだ…
…。
何の警戒も無く眠りに就き、柔らかな日差しと軽い空腹で目が覚める。
「おはよう…トワ君。」
「おはよう…おっさん。」
この世界に来て、城を脱出し、ひと月。魔の森で野人のような生活を送っていたおいら達が…ベッドで目覚めるなんて感動である!トワ君も同じ思いであろう!
「昨日、日用品くらい買っておけば良かったな…歯ブラシほしいわ。」
おいらも。
「飯食ったら女将さんにいい店聞いて買い出しに行こう。商業ギルドにいって、買い物、情報収集だね。今日は。」
「わかった。で、おっさん。今日もここに泊まる?」
「お金足りるかなぁ。売れそうな物はさっさと売って金作らないとね。出来れば仕事も。」
「よし!飯食ってギルドいってみようぜ!」
お代わり、飲み物代の清算をし、もう一日分入金した。
トワ君夕食二人前で…まぁ若いし。たんと食え。
カラリン~♪
ここは商業ギルド。冒険者ギルドに比べ、奇麗に…明るく見える。おいらの心のフィルターがそうさせているのかもしれない。冒険者ギルドは散散だったからね。
商業ギルド。建物は冒険者ギルドと大差なさそうだ。そもそも、街並みの規格みたいのがあるのだろう。中は、商業ギルドらしく。小汚い大男が徘徊してるでもなく、パーティションで区切られた商談スペース、扉が並んでるところを見ると、秘密の商談などをするスペースもあるのだろうね。
もちろん、奥まったところにはカウンターがあり、各種手続きや、依頼の授受ができる。
壁の一面には穀物の価格等、先物取引のチャートのように数字が並び、こちらの壁には希少品等の購入希望票、買取価格等が張られている。こちらの壁には、護衛依頼等の冒険者ギルドにあるような依頼が並ぶ
カウンターにいらっしゃる、受付さんも美人揃いである!むふふ。
早速、美人受付けさんの所に、ゴー!
「いらっしゃいませ。本日のご用件は?」
「すいません。いろいろ聞きたいのですが…よいでしょうか。」
…”すいません”て出ちゃうよねぇ日本人は。別に悪いことしてないのにね。
「はい、どうぞ。」
「こちらの会員証ですと身分証になりますか?入会には何が必要でしょう?」
なにいってんだ?って思ってるんだろうなぁ。おくびにもださない。さすがプロ!
「そうですね…ギルドは所有する財貨、情報などを担保にギルド員を保証しますので証明能力は高いと思います。入会には保証金と会費。できれば他の組合員の商会などの紹介があれば早いですね。」
やっぱ、信用かぁ。
「不躾ですが…責任者、役員の方に面会できないでしょうか?お願いしたいことがありまして…」
「…ご予約がないと急には…」
「…ですよね、では、空いている日時、今日がだめでしたら、明日以降、予約を入れたいのですが…」
「…ちょっとおまちください。確認に 「私が対応しましょう。」 あ、はい、副ギルド長。お願いします。場所は…」
「私の部屋で。飲み物もね。私はマシュー。ここの副ギルド長よ。どうぞこちらへ。」
金髪ぱっつんの美人さんだ。胸部アーマーもなかなかのものだ…拝みたくなる…。おっぱい星人ですけどなにか?
副ギルド長、マシュー女史の執務室に通される。机の上は少々雑多…さぞや忙しいのだろう…。そういう事にしておこう…。仕事は出来そうだ。
「初めまして、わたしは…ミッツ。こっちはトワ。お時間をいただき、ありがとうございます。」
ミッツというのはこの世界で通す名だ。学生時代のあだ名でもある。
一応、隠れてるつもりだから。本名は伏せる。トワ君はまんまだけどね…。
おいらがどうせ、ポロリしちゃうし?
トワ君からすれば、呼び名はどのみち”おっさん”だ。ミツルだろうがミッツだろうが変わらんだろう
「よろしく。トワだ。」
「ええ、こちらこそ。さて、どのような話でしょうか?」
ん~こりゃ、変に隠さずにぶっちゃけたほうがよいかな?
「ええ、会員に…いえ、身分証がほしいのですよ。多くの場所を見て歩くのに必要でしょう。」
「おっさん?」
「ほう…おっさん?親子ではないの?」
全然、似てないでしょうに?おいらのDNAが半分も入ったら、こんなイケメンになりません!それこそ突然変異だわ!…言ってて悲しい…しくしく…
「どうしたんです?ミッツさん?」
「い、いえ、少々、動揺いたしまして?…戦友って感じで。で、私達、肝心な世間的な信用がないのですよ。そこで、貴女、もしくはギルドから”信用”を得ようとおもいまして。」
「ミッツさん、あなた、昨日冒険者ギルドでひと悶着おこしたでしょ?」
あら。バレてら。
「ええ。あまりにも稚拙でしたので…年甲斐もなく熱くなってしまいました」
「ギルド長も驚いてたわよ。颯爽と帰っちゃうし。何しに来たんだ?って。話を聞くとギルド証とりにいったのでしょう。」
「自分で言うのもなんですけど、人畜無害、品行方正。なのですが、大げさになりました。あそこアホしかいないようで。」
「ふふふ。でしょうね。で、証は?何をもって貴殿を信用しろと。」
「トワ君あれだして」
「うん?ああ。」
”ごろり”。ちゃうがな!召喚の間の特上魔石じゃなくて…
「コホン、トワ君、ゴブキンの!」
マシューさんの目が尋常じゃない…目玉落ちるぞ。
「あ!こっちか。」
わざとやってないか?この子。
「”収納”…持ち…」
…もう。こりゃ、身バレしてんな。手配書…国境越えるかな?
”ことり”
「で、この魔石、先のスタンピードの先導者、ゴブリン・キングの魔石です…」
「ゴブリン・キング?ど、どこでそれを…それよりも、先の大きな…」
…さっきのは無し。忘れい!無理か!
「コホン。この町に来る途中討伐しました。ある意味、救世主って感じではだめです?本来なら後方に上級職もたんまり控えてたんですよ。全て潰しましたけど。」
「見せていただいても?」
「どうぞ」
一応?格好つけて布に包んだゴブキン魔石をマシューさんに手渡す。
「…本物のようですわね。で、どのような商いを?」
「それなんですが、護衛専門とか、または、私たち”収納”持ちなもので…輸送業とか、どうでしょうか。」
「…いいでしょう。入会を認めます。いえ、歓迎しますよ。”勇者”様。」
”しゅば”
綺麗な抜刀。斬りはしないが、一寸先で止まる…
ナイス動きだけど…。トワ君。まだまだ若造だしね~。仕方ない。
「トワ君ステイ!もう…。カマかけよ。今の。仮に手を下してどうすんのよ…ギルドの真ん中で…愛を叫んでみる?」
「あ!」
「ふぅ、やっぱり…。全くのあてずっぽうでもないのよ。30代と10代の男、黒目、黒髪。美形の青年。のっぺり顔の壮年…」
ほっとけ!のっぺり顔でわるかったな!…実年齢よりかなり若い?東洋人系の特権だな。
「ちょっとは変装したほうがいいかもよ。あの国には含むところもあるし。いいわ、私が後ろ盾になるわ。すべて口外無用で」
「助かるよマシュー副ギルド長。」
「すみません…剣抜いて」
「いいのよ。で、条件としては、できれば、ここを基地とすること。ギルド指定の運搬、私が直接発注する件の受注。”収納”も隠すか、小さいってことにしたほうがいいわ。ダミーでバッグ用意して”小さいマジックバッグ”ってしたほうがいいかもね。
それと、この魔石、買い取らせてもらってよいかしら、適正額だすわ。冒険者ギルド通さない分色も付けてあげる。一応、展示して安全アピールしたいのよ。もちろんあなたたちの名は伏せるわ。」
「問題ない。それでお願いします」
「商談成立ね。会費も一年サービスするわ。少なくとも一年はこの街を基地にしてね。」
「了解です。そうそう、王国から手配書みたいの出ています?」
「う~ん。一部のギルドとか?冒険者ギルドで見たわ。一般にはまだ出回ってないはずよ?特にここは外国だし。いい恥じゃない。切り札に逃げられるなんて。ふふふ。いい気味だわ」
「ははは…」
追っ手はないな…暗殺組織とかってあるのかな…?
「今回も、勇者召喚成功!協賛金をだせ!さもないと魔族の脅威にさらされるぞ!って。魔族なんてそうそう出てこないっていうの!前回の勇者は本当にひどかったようよ?伝承に残るくらい…美人とみれば見境なく、ハーレム、ハーレムって。盛りっぱなしの犬?そして逆らうと殺す…」
「はぁ、なんちゅう単細胞や。なまじ力を得て暴発しちゃったんだね。」
「最後は、匿まってた教会もろとも焼け死んだとか…真意はわからないけどね。穢され、殺された恋人の仇討ちで殺されたとも。」
「ふ~ん。」
同郷?だが何も感じんな。…うん?
マシューさん真剣な顔で身を乗り出してくる…。御胸の谷間もくっきり…むふふ。み、見えてしまうぞぉ?ん?これがハニトラか!ハニトラなんだな!
「ねえ、ねえ、秘密なら聞かないけど…召喚陣消失したってホント?もし、知っていて話せるのなら…是非、是非教えて!お願い!情報買うから!」
トワ君と目を合わせる。うなずくトワ君。かわいいなおい。父性暴発しそうだよ。
「ああ、消失したよ。ぶっ飛んだ。城諸共」
「ほんと!真意は?信じた経緯は?」
さて…どこまで明かすか…リッチとの共闘…そんなの信じないだろうし…そこをぼかしちゃ信ぴょう性に欠ける…ふうむ…
「俺たちとリッチさんでぶっとばした!」
…おい…。
「へ?リッチ?」
ま、ダメもとで明かすか。
「トワ君の言う通り。召喚、召喚言うけど、私たちからみれば誘拐・拉致だ。今後同じようなことが無いように。また、生贄とか無いように。あの城には多くの犠牲者、積年の怨念等が…。」
かくかくしかじか…
おいら達は破壊工作、リッチさんのこと、消失はリッチさんが確認したこと。リッチさんのことを信用してること。そして彼等を天に送ったこと…。すべてを包み隠さず聞かせた。
途中、マシューさんの面会約束があったようで職員さんが何回も呼びに来たが全てキャンセルして、おいらたちに時間をかけた。”それどころじゃない!”って。
小国群にしてみれば”勇者召喚”は定期的にくる”人災”そのものだもんなぁ。
「ふうぅ…そんなことが…。ありがとうね。特にリッチの件。縛る力が弱まるか、さらに生贄で力を貯めて、暴走したらここらの国、いいえ、大陸の国滅ぼされちゃったでしょう。」
「ああ。あの国の勝手で死んでいった魂。なんとか還せてよかったよ。」
「あぁあ~とんでもない話聞いちゃった。秘匿範囲は?」
「そうだねぇ~追っ手だされても面倒だから、全てリッチさんが壊したことにしちゃおう。あとは適当に。マシューさんにまかせるよ。」
「了解。真相は信用のおける極々狭い範囲でできるだけ名前を伏せてするわ。あとの話しは…リッチが供養と引き換えに聖職者に話したとか…うん、これでいいか。消失したことに関しては結構早くに流れるかもね。私たちの悲願の一つだし。」
「ひとつ?」
「うん、あの国がなくなれば最高!あと、教会も」
「なるほど。くさいものは元からね。教会も?」
「うん。腐敗しきってる。あの国と同じだよ”勇者”と”神”の違いだけね。規模がより大きいから始末が悪い。」
綺麗なお顔を歪め吐き捨てるマシュー女史。余程煮え湯を飲まされたのだろう。
「なるほどね。でもどんとそびえてるよ?この街にも。」
「ええ、国教だからね。一応。…教会の上層部よ無茶いうのは…あと利権に凝り固まった爺さんども。害悪以外ないわ。早く天に召されないかしら。」
…おふう。
「それだけ功徳を積めば、安泰だ。」
「違いないわねぇ~。ふふふ。」
そのあと、紅茶をいただきながら他愛もない雑談。
何かあればマシューさんが対応するとのこと。証とお金は明後日。
マシューさんに礼を良い、部屋を辞する。
折角だし、受付に戻り、掲示板やら、不動産?を見て、目的である、おすすめの雑貨屋の場所を受付嬢に聞きギルドをでた。
身分証の目途もついたし、無職もなんとか回避できそうだ。信用できる人物にも会えた。
今回はよい縁を得られたとおもう。
今日もお付き合いいただきありがとうございました。評価どもです!またのご来店をお待ちしております。




