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町についたぞ!冒険者ギルドはどこだ!

いらっしゃいませ!

 ゴブキンとの邂逅から、2日。やっとこさ、石壁の連なる、人の”町”が見えてきた。あちこちから白煙が上がり、生活を感じさせる。

 

 「おお!城塞都市ってやつかぁ!ロマンや!ぁ」

 「…おっさん…ロマンティストですね。ロマン街道一直線?」

 「違うから…ん?この白煙、場外?そして…臭い…」

 「ああ、有機物系…」

 そう、肉の焼けた臭い…それと腐敗臭。煮炊きの煙ではないようだ。

 「ゴブ軍団かもしれんね…」

 恐らく、町の外の穴で焼かれているのはゴブリンだろう。

 「人死にもでてるかもだし?とりあえず、行ってみよう!おっさん!」

 緊急に設置されたであろう逆茂木の間を縫って城門にたどり着く。とりあえず中に入れるといいなぁ。

 

 「もし、ここで戦でもあったのでしょうか?」

 と、前に並んでる商人風の男に話しかける。馬車に小麦が満載されている。一攫千金狙いかな?戦直後みたいなものだからな。

 「ええぇ、ええぇ。一週間前からゴブリンの”氾濫”があったようですよ、ええぇ。ゴブリン主体だったようです、ええぇ。」

 「討伐されたのですか?」

 …結構個性的なおっさんだな…ぷぷぷ。

 「ええぇ、二日前に襲撃がピタリと止まったようです。ええぇ。商人の間では、指導者クラス、ジェネラルやキングですが、倒されたのではと未確認ながら囁かれています。ええぇ。で、私は、一足先に乗り込んできたと言うわけです。ええぇ。」

 「貴重な情報ありがとうございます…。助かりました」

 「いえいえ、勝手に話したこと、気になさらず、街でみかけたら覗いていただければ幸いです。ええぇ」とまぁ、情報収集しつつ順番を待った。

 

 一応、並んでからは個々で活動してる。手配書で二人組ってなってたらねぇ…トワ君は猪の毛皮背負い、猟師見習いって感じで5組前くらいに並んでいる。

 

 おいら?おいらはもちろん…ゴブ達に追いかけられて身の回りの物を無くした哀れなロートル万年低ランク冒険者を演じるつもりだ。

 なにか?だれだ!まんまっていったのは!お!トワ君はすんなり入れたようだぞ。よしよし。緊張するなぁ。

 …よし!オイラの番だ。

  

 「はい、次ぃ~」

  「おっさんか…」

 二人のガラの悪い…お前らもおっさんやろが!

 「よろし 「はいはい、身分証、または入場証明、ギルド証みせて!」 くぅ…」

  「ん?早くだせよ!おっさん!こちとら忙しいんだ!」

 「そ、それが…ここに来る途中、ゴブリンに追い散らされて…手持ちの金も…装備も…ギルド証も…」

  「はぁ、おっさん冒険者?うそだろ?」

  「ぎゃはははぁ!その年でゴブリンにやられるとか?」

 「”氾濫”で稼ごうと思って意気揚々とやって来たのに…装備無くしてこのざまです…ハイ。」

  「みじめだな…オイ」

  「わかった、わかった。通っていいぞ。一応、仮証出しとくな…再発行できるといいな…」

 思い切り同情されているな。ふふふ。どうだい?大根のトワ君!おいらの迫真の演技は!

 「えぐえぐ…ありがとうごぜぇますぅ…」

  「元気出せよ…おっさん…次!」

 ふっふっふぅ!おいらにかかればこんなもんよ!

 「おっさん…」

 ジト目はやめてぇ~~~~~!


 ”アヌヴィアト”。この都市?町?はノリナ国…ディフェンヴァキュアだったか?おいら達が呼ばれた国の隣の国ね。何時の間にやら国境、越えていたらしい。

 そのノリナ国の南の要。魔の森に備える城塞都市、そして交通の要所のようだ。

 屑王の治める城下町より大きく、しかも、賑やかではないかな。

 

 「とりあえず無事に町に入る事は出来たな。先ずは宿屋か…。」

 「だなぁ。風呂あるといいなぁ。あ…おっさん金足りるかなぁ。」

 「金貨数枚あるから大丈夫だろう、たぶん。」

 「テンプレだと冒険者ギルドでお勧めのお安くて美味しい宿屋を紹介してもらうっての 「採用!」 …いいのか?」

 うん?なにか問題でもあるのか?

 「ああ、それで行こう!冒険者ギルドか!楽しみだね!」

 「で、テンプレでおっさんが絡まれると…」

 「マジ?」

 …あり得るのかそんなテンプレ

 「あくまでもラノベとかだから。…楽しみだね!おっさん!」

 何よ。その爽やかな笑顔は!勿論ギルドは楽しみだが…こ奴の事…絡まれる方だろう。

 「おい!と、その前に…こっちの神様に挨拶しとこう。」

 「神様に挨拶?こっちの教義って人類至上主義だろ?やだな。」

 「うぅ~ん、どうなんだろ。教義自体は後から人が勝手につけたんだろうし。ほかに土着の教会あるのかな?獣人もいるから…あると思うけど…」

 「じゃぁ、そっち優先でさがしてみっか!人至上主義の教会は…アレだろうから…」

 「…だな。」

 ドンとそびえる教会様。儲かってまんなぁ~


 「すいません、ちょっといいですかぁ。」

 と近くにいた獣人の方に話しかける。犬系…か?

  「はい。なんでしょう?」

 「ここいらに教会ってあります?」

  「目の前にありますが…あれですよ?」

 「いえ、人族至上主義の教義ではなく、もっと大らかな教義のところだといいのですが…」

  「…あなた人族ですよね?」

 不審者を見る目で見られる…ディフェンヴァキュアもだが、この国も抑圧されてるのだろう。

 「誤解しないでください…。人族ですが、どうもあの教義には共感できないんですよ。見た目だけで差別って。」

 「「「…」」」

 獣人達がこちら方をうさんげにうかがってる…。

 「…知ってれば教えてくれませんか?」

  「…」

  「いいんじゃない?別に秘密じゃないし、この街じゃ認められてる教会だし。」

 と見物していた猫系の女性が。

  「寄付でもしてくれれば御の字だし」と。

  「…あの立派な教会の手前にあるよ。近くで聞き直したほうがいいよ。奥まってるし。」

 「ありがとう。」

 ぺこり。異端なのか?ますます解らん。

 

 「警戒されたね?」

 「うん…差別があるんだろうな。人は特にビビりだからね、身体的に優位な獣人が怖いから教義で貶めているのだろうね。」

 「なるほど…そんな”人”が獣人の教会を聞いてる…なんか探ってるかと思われたのかもしれないね。」

 「だね。」

 

 とことこ。30分くらい歩いたかな?ここでも謎肉の串焼き&謎飲み物…意外に美味いんだよなぁ。食べ物に困らなくていいのは助かるが…。コンコン。

 

 「はい。」

 「こちらは教会ですか?」

  「はい…?人族の方?こちらではありませんよ?」

 ん?シスターさんも人族では?

 「失礼ですが…シスターも人族では?」

  「はい、そうですが…間違えて来られる方も少なからずおられるので。」

 「私もゼクス教?は苦手で…こちらで神に祈らせてくれますか?」

  「はい。どうぞ。神への祈りを妨げられるものはおりませんよ。」

 微笑みながらシスターが通してくれる。

 表の教会とはまるで別物。奥まったウナギの寝床のような土地にボロボロの建物。所々、ひび割れがあるのか、外の光が室内に漏れている。入ってすぐに神殿があり、神像が祭られてる。ふ~ん。こういう神様の御姿かぁ。おいらの”鑑定”に、ちょくちょくお出で下さる神と同一であろうか…

 ま、とりあえず。この世界の神には違いない。像の前に跪き、手を合わせる。

 

 「どうやるんだ?おっさん?」 

 「適当…好きでいいと思うよ?祈る気持ちが重要だから。」

 …神様、お世話になります。まぎれてきちゃったけど…よろしくお願いします。…見捨てないで~できれば可愛いい巨乳ちゃんを我に!ハーレムなんか望みません!一人で良いから…お願いします!」

 ん?

 「トワ君?どした?」

 その、お目目は、なぁに?

 「おっさん、途中から心の叫びが漏れてたぞ。巨乳がどうのと…」

 「あら。恥ずかしい。」

 「…安心したよ。いつものおっさんで…」

 なんで!…

 

 神殿から出る。キャッキャ…子供の声?奥に孤児院でも併設されてるのか?

 「お布施です」

 ここは気張って、金貨2枚。まだ来たばかりだしね。

  「こ、こんなに。ありがとうございます…。神のご加護を…」

 「「ありがとうございます」」

 また来よう。孤児院の方も顔だそう。最近父性、モリモリなんだよなぁ~経験ないけど。


 教会を後にして…。やってきました!冒険者ギルド!カウンターがあってル〇ーダの酒場みたいな感じか?見た目は…特にどうということはない。周りと同じような建屋であるが…

 さて、ここから、おいらの伝説が始まるのだ!気合い入れてご入場だ!ふふっ!

 

 スイングドアみたいのを期待したけど普通のドアだな…

 ”チリンチリンチリん!”

 可愛いらしいベルの鳴るドアを開けると、市役所の出張所みたいな感じだな。ちいさい郵便局ともいう。テーブルの向こうにカウンター窓口があって、そこに受注?完了報告?どっちにしろ、ごついおっさんが並んでいる…。あの列に並べばいいのだろうか…


 …なぜだ?

 

 …さっそく絶賛絡まれ中です…。

 ほわっと?なぜ?!まだ受付すらたどり着いてないのに…。

 そこ!笑わない!

 

 ごついおっさん連中の後方。最後尾に並び順番をまってると…

 小汚い3人組が横入りしてきた。装備からいって…こいつら盗賊で決定!汚いし。臭いし。

 トワ君なんも言わないなぁ。テンプレ回避か?ならおいらも無視だ。少々癪だが…

  

 「おっさん、ここには、なんのようだぁ?」

 って、無視してるのに絡んでくんな。盗賊ゴリラ!

  「なぁ、なぁ。何の用だって聞いてんのよ~聞こえないのかなぁ~」

  「びびってるんだよ。ひゃひゃ。」

  「依頼かぁ。俺たちが指名依頼で受けてやるよ~」

  「おう、それがいい~それがいい~。うん?聞いてんのか?おっさん」

 なんか盛り上がってるなぁ。この低能どもが。

  「俺たち、Cランクパーティ、『鬼の剛腕』が受けてやるっていうんだよぉ。ありがたく返事しろ!」

 そう叫びながらおいらに手を伸ばす。唾飛ばすな!汚い!

 さっ!とかわす。

  「おい、おっさん。逆らうのか?」

  「さぁ~。一緒に受注カウンターにいくぞ!」

 と肩を掴もうとする。ゴリラ。再び躱す。うざいなぁ。トワ君はその様子を楽しそうに傍観してくさる!

 

 こトワには期待できんな。仕方なし。ギルドの職員さんに救援を願おう。

 「ギルド職員さぁ~ん。絡まれて困ってまぁす~助けてくださぁ~い!へ~る~ぷぅ~」

  「おいおい!俺達が指名で受けてやるっていってんだぁ~」

 「職員さ~ん、へるぷぅ~」

  「うるさい!静かにしろぃ」

 「職員さ 「うっさいわね!冒険者なら自分でなんとかしなさいよ!おっさん!」 …ん…」

 な、なんと理不尽な。かわいい顔して辛辣な。まだ一般人なんだけどね。おいら…。 

 「一般人で~す!助けて~受付さん~」

  「うるさい~出ていきなさい!早く。しっし。」

 おふうぅ。てかトワ君!さっきから爆笑してんじゃねぇ!ったく。営業なめんなよ!

 「理不尽で仕事放棄の受付さ~ん。助けて~一般人が盗賊に襲われてま~す…あ、共犯ですかぁ~受付さ~ん」

  「なにぃ~!」

 「いい加減にしな 「何事か騒々しい…そちらは?」 …副ギルド長…」

 副ギルド長?ここのナンバー2か?お偉いさん登場!これで、あ…{鬼の剛腕}が安堵の表情?あれれ、こいつもグルか?

 

 「いやぁ~ギルド員さんの『鬼の細腕』?いや、『剛腕(笑)』さんに脅されて、受付さんに助けをもとめたら面倒くさいし、五月蠅いから出ていけ!っていわれた、寂しいおっさんです。

 ちなみに、このギルドは、『鬼の剛腕(笑)』さんの許可がないと仕事の受付や、冒険者登録ができないそうで~す。ほんとですかぁ~?」

  「そんな馬鹿なことあるか!オイゲル、バネッサどういうことだ?」

 盗賊の頭、オイゲルっていうんだ。このハゲ!

  「し、しらねぇ~よ」

  「俺たち…並んでただけだぜ?」

  「そうだ、そうだぁ、なぁ~」

  「私も知りません。その方が騒いでいたので注意しただけです」

 バネッサぁ、それは職場放棄っていうんだよ。

 「横入りされて、依頼するなら指名にしろだと脅されて、職員に助けを求めたら出て行けって…でていったら守ってくれる人もいない…この盗賊らに身ぐるみはがされて、下手したら殺されて終わり…今だって、ほかの受付嬢や、職員、ギルド員の冒険者さんもだんまりだし。

 日常の業務の範囲内なんでしょう…組織的犯罪集団だわここ。普通、事務所内で人が絡まれていて『助けて』っていったら助けるでしょ。普通。一般人よ私。ただのおっさんだし。

 いやぁ~面白かったかな?滑稽で。おいら、暇つぶしのいい見世物になりましたか?

 さて、時間を無駄にした…トワ君行こうか…そこ爆笑しない!」

 「だってさぁ、良く回る舌だなぁ、って思って。しっかりテンプレってるし。最高だぜ~!おっさん!」

 「はぁ。もう少し考えよう…ちと安易すぎたようだ。」

  「ちょっと待て…犯罪組織とは聞き捨てならん。証拠もあるまい?」

 「丸腰の、しかも組合員ではない、一般のおっさん一人、お客様吊し上げているってこと…解ってます?私、被害者。証拠?ギルド内で、職員、構成員、あなた達が容疑者なんですよ?隠蔽してると思わない?グル?あなたが主導してるの?あなたが来たら、『鬼の剛腕』あからさまにほっとしてたぞ?ふん、聞き捨てならんなら捨てなくて結構。元々貴方たちとはなんの関りもない。では失礼。暴力で抑える?それじゃ、盗賊確定だ。」

  「…調べて、謝 「結構、私的には冒険者ギルドという組織がどういうものか分かっただけでプラスですよ。これ以上関わると刺されかねんし?今後も関わることも無いでしょう?」 …」

 「おっさん~煽りすぎだって」

 …ちと頭にきたからなぁ、特に副ギルド長。バカは臭いし。これくらいはいいだろう。

 「じゃ、いこうか。」

 と、散々なギルドデビューだった…あ!身分証!どうしよう…。


本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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