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『ダンジョン配信者、初配信で伝説級ボスを素手で倒してしまう』  作者: ダンジョン配信者


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6/10

第六話 探索配信という巨大市場


 配信終了後。


 悠真はしばらく椅子から動けなかった。


「……疲れた」


 本日の最大同接。


━━━━━━━━━━━━

【684,221】

━━━━━━━━━━━━


「意味分かんねぇ……」


 普通じゃない。


 完全に事件レベルだった。


 しかも。


━━━━━━━━━━━━

登録者数:

5,483,112人

━━━━━━━━━━━━


「増えすぎだろ!!!」


 二日で五百万。


 日本トップクラス。


 いや、もう世界レベルに片足を突っ込んでいる。


 コメント欄でもずっと騒がれていた。


『歴史変わった』

『新人の伸び方じゃない』

『S級確定だろこれ』

『白銀レイナと黒天ギルマス来るのエグい』


「いやほんと何なんだよ……」


 悠真は頭を抱えた。


 だが。


 通知は止まらない。


 ピコン。


 ピコン。


 ピコン。


「うるさっ」


 スマホを見る。


 メール。


 DM。


 企業連絡。


 知らない会社名が大量に並んでいた。


「……は?」


 件名一覧。


『スポンサー契約のご相談』

『コラボ案件のご提案』

『独占インタビュー依頼』

『装備提供について』

『飲料CM出演のお願い』

『探索者向け高級マンション提供』

『生放送出演依頼』

『海外メディア取材希望』


「なんだこれ……」


 怖い。


 本気で怖い。


 昨日までコンビニ弁当半額待ってた男に来る量じゃない。


 その時。


 スマホが鳴った。


 着信。


【白銀レイナ】


「えっ」


 悠真は慌てて出る。


「も、もしもし?」


『お疲れ』


「お疲れ様です……」


『見た?』


「え?」


『メール』


「あー……なんかすごい来てます」


 レイナが少し笑った気がした。


『探索者業界へようこそ』


---


「探索者って、こんな芸能界みたいなんですか?」


 悠真は率直に聞いた。


『今は特にね』


 レイナの声は落ち着いていた。


『十年前はもっと閉鎖的だった』


「へぇ……」


『でも今は違う』


 探索配信。


 それは今や巨大市場だった。


『ダンジョン産業の市場規模、日本だけで二十兆円超えてるから』


「に、二十兆!?」


『装備、配信、観光、スポンサー、素材産業。全部合わせて』


 規模がデカすぎる。


 もう国家産業じゃないか。


『特に人気探索者は影響力が大きい』


 例えば。


 S級探索者が使った武器。


 配信で飲んだドリンク。


 装備した防具。


 それだけで売上が跳ねる。


「インフルエンサーだ……」


『実際そう』


 探索者は今や半分芸能人だった。


---


『だからみんな配信する』


「金のためですか?」


『それもある』


 レイナは否定しなかった。


『でも一番大きいのは、スポンサー』


「スポンサー……」


『探索者って、お金かかるから』


 それは悠真でも分かる。


 武器。


 防具。


 回復アイテム。


 遠征費。


 ダンジョン入場許可。


 全部高い。


『強くなるほど装備代が跳ね上がる』


「確かに……」


『だから人気がある探索者ほど強くなりやすい』


 企業が支援するからだ。


 高性能装備。


 専属サポート。


 研究機関との連携。


 それだけ環境が違う。


『特にギルドは配信を重視する』


「ギルドも?」


『新人を集めやすくなるから』


 なるほど、と悠真は思った。


 確かに。


 人気ギルドには人が集まる。


 強い探索者も入る。


 結果、さらに強くなる。


 完全に好循環だ。


『だから最近は、“配信部門”を持つギルドも多い』


「えぇ……」


『専属カメラマンとか編集班とか』


「プロチームじゃん……」


『実際そう』


---


 レイナは少し続ける。


『配信の人気で、ギルドランキングも変わる』


「ランキング?」


『年間人気ランキング。視聴者数ランキング。スポンサー総額ランキング』


「そんなのあるんだ……」


『かなり重要』


 探索者業界は、もはや単純な強さだけでは回っていない。


 知名度。


 人気。


 広告価値。


 それらが資金を生み、その資金がさらに強い探索者を育てる。


「スポーツチームみたいだ……」


『近いかも』


 例えば。


 地方ギルドでも、人気配信者が一人いるだけで一気に有名になる。


 新人が集まる。


 スポンサーが付く。


 自治体から依頼が来る。


 結果、ダンジョン攻略力も上がる。


『今は“配信できない探索者は損する”時代』


「世知辛いなぁ……」


『もちろん、配信嫌いな探索者もいるけど』


 そこで悠真は思い出す。


「黒天とか」


『そう』


 黒天。


 最強クラス。


 だが配信露出は少ない。


 理由は単純。


 実戦主義だからだ。


『あそこは、“戦場を見世物にするな”って考えが強い』


「紅華さんそんな感じありますね」


『でも人気はある』


「なんでです?」


『神秘性』


「あー……」


 表に出ないからこそ、逆に人気が出る。


 攻略動画一つで数千万再生。


 黒天所属探索者の戦闘映像は、もはや都市伝説レベルだった。


『特に紅華さんは人気凄い』


「やっぱり」


『女性人気も高いし』


「へぇ」


『あと強すぎる』


「それは分かる」


 あの圧はヤバかった。


 会議室にいるだけで空気が熱かった。


---


「ちなみに」


 レイナが少し声色を変えた。


『探索配信って、昔はかなり嫌われてた』


「え?」


『危険だから』


 当然だった。


 ダンジョンは死ぬ場所だ。


 そこで配信なんて不謹慎だ、と言われていた時代も長い。


『特に初期は事故も多かった』


「事故?」


『配信優先で判断ミスしたり』


『無茶して死んだり』


『再生数狙いで高難度行ったり』


「うわぁ……」


 容易に想像できた。


『だから協会も最初は禁止派だった』


「今は違うんですか?」


『変わった』


 理由は単純。


 メリットが大きすぎたから。


---


『配信で救助率が上がった』


「救助率?」


『遭難者の位置特定』


『未確認モンスター情報』


『ゲート異常の早期発見』


『全部、配信経由で増えた』


 特に大きかったのは、“生存率”。


 リアルタイム映像があるだけで、救援部隊の対応速度が全然違う。


『今は配信データを協会AIが監視してる』


「AI?」


『異常魔力反応とか、危険モンスター出現とかを自動検知する』


「すげぇ……」


 完全に未来だった。


『大規模ゲート災害の初動対応、今は半分くらい配信情報頼り』


「そんなレベルなんだ……」


 もう探索配信は娯楽じゃない。


 社会インフラだ。


---


 悠真はふと思う。


「じゃあ、配信してない探索者ってどうしてるんです?」


『高難度専門が多い』


「黒天みたいな?」


『そう』


 特に国家機密級ダンジョン。


 軍と協力する危険区域。


 そういう場所は完全非公開。


『あと海外だと、配信禁止国家もある』


「え?」


『探索者情報を軍事機密扱いしてる国』


 確かに。


 S級探索者なんて、普通に兵器レベルだ。


 国家が管理したがるのも分かる。


『でも日本はかなり自由』


「なんでです?」


『配信産業が強すぎるから』


 経済。


 観光。


 広告。


 全部が探索配信と結びついている。


 今さら止められない。


---


「でもレイナさんって、なんでそんな人気なんですか?」


 悠真は素朴に聞いた。


『……急に失礼』


「いや違っ」


 少し笑い声。


『まあ、一番は“生還率”かな』


「生還率?」


『私、配信中に一回もパーティ壊滅させてないから』


「……あ」


 その凄さが、悠真にも分かった。


 ダンジョンでは人が死ぬ。


 それが普通。


 なのにレイナは、一度も配信事故を起こしていない。


『だから安心して見れるって言われる』


「なるほど……」


『あと女性視聴者多い』


「確かに」


『あと海外人気』


「海外!?」


『東アジア圏は特に』


 探索者配信は世界規模だ。


 字幕切り抜き。


 海外翻訳。


 リアクション動画。


 特にS級戦闘映像は国境を超える。


『たぶん、あなたもそのうち海外伸びる』


「いやいや……」


『黒竜ワンパンは伸びる』


「そんな映画タイトルみたいに……」


---


 その時。


 ピコン。


 またメール。


「うわっ」


 件名。


『大手飲料メーカー:CM契約のご相談』


『高級装備ブランド:専属契約について』


『配信プラットフォーム公式オファー』


『人気バラエティ出演依頼』


『探索者アワード出演依頼』


「多っ!?」


 レイナが少し笑う。


『今のあなた、歩く経済効果だから』


「嫌な言い方だなぁ……」


『事実』


 しかも。


 まだ正式S級ですらない。


 これで認定されたら、どうなるのか。


 想像したくなかった。


---


『……でも』


 レイナの声が少し真面目になる。


『気をつけて』


「え?」


『人気が出るほど、“本物の敵”も増える』


「敵……」


『海外ギルド。犯罪系探索者。裏市場』


 空気が少し変わる。


『強い探索者は、それだけ価値がある』


 誘拐。


 引き抜き。


 闇オークション。


 違法ダンジョン。


 探索者業界には、表に出ない闇も多い。


「……なんか急に怖くなってきた」


『だからギルドが必要』


「なるほど」


『一人じゃ守れないものもあるから』


 悠真は静かにスマホを見る。


 大量の通知。


 大量の期待。


 大量の視線。


 昨日までは何もなかった。


 なのに今は、世界中が自分を見ている気がした。


『だから』


 レイナが言う。


『もっと強くならないと』


 その言葉の直後。


━━━━━━━━━━━━

《クエスト更新》


『探索者としての影響力を示せ』


進行度:

12%

━━━━━━━━━━━━


「……また出た」


『なに?』


「いや、なんでもないです」


 悠真は小さく息を吐く。


 強くなる。


 有名になる。


 世界が変わる。


 全部まだ現実感はない。


 だけど。


 この異常な日々は、まだ始まったばかりだった。


 



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