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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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567 ヴィオレンシア帝国を滅ぼす

 巨大ドラゴン二頭が皇帝城の上を飛んでいる。

 声が聞こえる。

「シン様の口上だよ。よく聞きな」

 幼い女の子の声が城と城下、それから国内全てに聞こえた。


「この国は犯罪国家である。存在意義はない。また魔物を改造した。人の改造も手がけた。天を恐れぬ所業である。すでに関係なきものは転移させた。これから全てを滅ぼす」


 僕らは転移しコーリスとの国境まで下がった。コーリス側である。


 前回のような手伝いはいらない。ただ滅ぼすのみ。

 眷属のほか二百人衆、エチゼンヤ夫妻、ゴードンさん一家、三馬鹿、神父、ハビエル神父、トルネード、きょうちゃん、6神父、セドリックさん、アンナさん、バントーさん、板長さん。バトルホース、ベーベーマン、ベーベーは現場を見てもらおう。いない人は呼んだ

 あとの関係者には中継だ。


 お狐さんが心配して観察ちゃんを乗せてやって来た。アウアウ言って胸にしがみついてくる。アーダはお狐さんのお腹と僕の間に潜り込んだ。お狐さんを観察ちゃんごとバリアをはって包み込んだ。外の音も衝撃も光も熱も感じない。柔らかい光を満たしたバリアだ。大丈夫だよ。いい子だ。


「ブランコ」

「ウォーーン」

 ブランコの遠吠えは力を入れた場合、音ではない。ほぼ光と同じ速度で進行する。どこまでも遠く地表にそって走っていく。人の世の法則を超えた神の咆哮である。

 星を一周して遠吠えが帰ってきた。


 高原地帯を進むラシード隊。

「な、なんだ」

 ブランコ様の遠吠えが辺りを揺らした。

「何か起こるぞ」

「そうっすね」

「特大な何かだな」

 やがてみんなの視界に映像が流れてくる。周りにシン様はじめ眷属様、二百人衆らがいる。

 エレーネ女王一行が来る、600人の兵が来る。三馬鹿が来る。神父さんが来る。次々と関係者が来る。この間の邪な者の街の殲滅戦の時のメンバーがみんな揃う。何人か知らない人がいる。この大陸の人だろう。薄く透けている人もいる。現場にいないのだろう。自分たちもベーベーもそうだ。

 目の前の国は犯罪国家で魔物を改造し、人の改造も手がけた。天を恐れぬ所業である。すでに関係なきものは転移させた。これから全てを滅ぼすと言うシン様の怒りがわかった。


 こちらテッサニア王国の離宮。オフェリア王妃陛下とクロエ侍女長が滞在していた。遠吠えが離宮を揺する。警備隊が立ち止まる。

 気がつくと周りは知らない人だらけであった。警備隊はついてきた。弟のロッカがいた。遠くにシン様御一行がいる。

 目の前はヴィオレンシア帝国。湖の周辺や湖に魔物を増やしたのはヴィオレンシア帝国とわかった。また魔物を改造し、人の改造まで手をつけ始めたことも分かった。シン様の怒りがわかった。


 ロッカはシン様が発見してくれた岩塩の鉱脈からの岩塩採掘方法検討会議をしていた。遠吠えが聞こえた。

 突然目の前に姉が現れた。周りを見ると知らない人ばかりだ。軍隊もいる。遠くにシン様一行がいる。頭にいろいろ情報が流れ込んでくる。シン様の怒りが目の前のヴィオレンシア帝国を滅ぼすことが分かった。ロッカは仰天した。シン様達は神とその眷属であった。救出孔も岩塩があるところに掘ってくれたのだろうと気がついた。深く礼をした。


 僕が手を伸ばす。

 炎の壁が国境沿いに出現した。ぐるりと国を取り囲む。空に手を伸ばす。

 空から灼熱の火球が次々と炎の壁に囲まれたヴィオレンシア帝国に降ってくる。地が震える。皇帝城も帝都も街も村も全て業火に包まれた。

 火球の落下が止まると壁が上に伸びてドームになって閉じた。ドーム内は高熱である。


 火球はこの星のどこからも見えた。火球が一方に流れていくのが見えた。

 星の全ての人も魔物も獣も遠吠えの次に‘許さない’という神の声を聞いた。


 ヴィオレンシア帝国の大地が沸騰している。後には何物も残らない。石造りの建物も全て溶けた。人がいた痕跡は一切なくなった。

 アカが手を伸ばす。ドームが纏う炎が消え、ドーム内の温度が下がる。大地は見える限り何もない。赤茶けた大地が広がっている。ところどころ焼き物になっている。粘土質だったのだろう。アカが再度手を伸ばす。焼き物は土に帰った。

「背の低い草以外何も生えぬ」

 アカが手を伸ばすとドーム内に雨が降り緑の草が生えてきた。

 エスポーサが本家滅びの草原の魔物を連れてきた。

「魔物が充分増えるまでバリアはそのままだ」

 誰も立ち入れない滅びの草原が出現した。


 見ていた人は声もない。

 この星全ての人、魔物、獣ら全ての意識のある生き物は、神はいる、そして神罰を下すとわかった。


 見ていた人は転移で戻した。意識だけ来ていた人たちも意識を戻した。


 ラシード隊は現実に戻った。目の前に盗賊が30人ほど斬られ、あるいは蹴飛ばされて倒れている。意識が向こうにいっている間に、体が勝手に動き盗賊を切り、ベーベーが蹴飛ばしたのだろうとわかった。

「おい、これは盗賊らしいな」

「そうですね。意識がシン様の方にいっている間に勝手に切ったのでしょうね」

「ベーベー」

 そうらしいと言っている。

「先に行くか。それにしてもバカな奴らだったな。人の改造まで着手するとは」

「こっちの大陸ではそんなことを考えた人、国はありません」

「そうだな。こっちには滅びの草原があるからな。天を畏れる気持ちが自然にあるのだろう」

「今度は向こうの大陸も滅びの草原ができたから変わるのでしょうか」

「わからないが、今より良くなるだろうよ」

 今日も空荷で軽快に高原地帯を進むラシード隊であった。


 意識が戻って離宮にいることがわかった王妃とクロエ侍女長。警備隊も戻ったようだ。

「王宮に戻ります」

 すぐさま馬車で王宮に戻った。


 王宮では皆が右往左往していた。遠吠えが聞こえ空に火球が飛んでいった。天変地異と騒いでいる。

 国王は緊急会議を開催していたが一向に方向が見えない。国王の元に行く王妃。


「静かにしなさい。説明する」

「われらが湖の周辺の魔物、湖の魔物はヴィオレンシア帝国が魔物を改良して送り込んできたものだ。また人の改造にも着手した。シン様が怒り、空から火球を降らせ業火でヴィオレンシア帝国全部丸ごと消滅させた。国は草原になったが誰も立ち入れない」

 静まり返った会議室。


「我々は天に背くことをしてはならない。天は、シン様は、許さない」

 業火をまとった火球が空を行くのを目撃し、神の許さないと言う声を聞いていたので王妃の言葉はすんなり受け入れられた。


 僕と眷属は魔の森の泉に転移した。しばらく休んでから世界樹に報告しに行こう。

 お狐さんはバリアを外しても顔を僕に押し付けて僕にしがみついている。アーダもお狐さんのお腹と僕の間に潜ったままだ。よしよししてやる。もう大丈夫だよ。


 スパ棟を出しておく。ブランコとドラちゃん、ドラニちゃん、ジェナとチルドレンは泉で遊んでいる。雪原号と熱帯号はジェナとチルドレンを見守ってくれている。ジェナとチルドレンがお狐さんとアーダを呼んでいる。お狐さんはアーダと一緒に泉に行った。良かった。

 マリアさんがテーブルと椅子を出しお茶を淹れてくれた。


「しょうがないわよ。一国で済んだから御の字よ」

 エリザベスさんが言ってくれた。

 ローコーさんがお茶を飲んでいる。


 あれ、なぜエチゼンヤ夫妻がいる。泉の側にはゴードンさん一家がテントを張り出した。なぜいる。

「人との繋がりがなくなるといけないから呼んだ」

 アカが申しております。そうですか。問題ないですが。


 ゴードンさんがやってきてお茶に加わった。

「すごかったな。これで魔物の改造や人の改造がなくなればいいな」

「人は業が深いからね。数十年、数百年は覚えているだろうけどその先はわからないわね。そしたらまた滅びの草原にすればいいわ」

「滅びの草原だらけになりそうだ」

 ローコーさんの感想だ。

「元祖滅びの草原を除いて、古いものから解放すればいいのよ」


 なるほど。アカがエチゼンヤ夫妻とゴードンさん一家を呼んだのはこれか。人同士の感覚で遠慮なく言えるからね。ありがたいね。気が楽になる。

 その日は夕方までのんびりして、夕食、お風呂で寝てしまった。

 翌日朝食が済んで、エチゼンヤ夫妻とゴードンさん一家は観察ちゃんの転移で戻っていった。

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