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曇天のカナタ  作者: 菊桜 百合
第1章 陽光なくとも花々は咲き誇る
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第十四話 魔女の工房

 カナタは、門番の人たちの発言を振り返っていた。

 『奴は最低の存在だよ』この言葉がどうしても頭から離れない。

 虚王を撃とうと誓ってから数十年。カナタはマーリンとは一度も邂逅していない。「各々準備をして、準備が出来たら集まろう」などという雑な約束をしてしまい、いつ集まろうか掴めずにいた。

 とりあえず、虚王を撃つ最低限度の攻略方法だけは持ち得ているのでこの邂逅も無駄ではない。あとはマーリンと考えを煮詰めればいいだけだ。


 そんなことを考えながら適当にほっつき歩いていると、ふとある考えが浮かんだ。

「…もしかして、町の人を贄にしてるのかな」

 魔術において、代償を払うという行為は術式の質を高めるものである。この代償は自分にかかわりがあるモノだけでなく、契約をすれば他者に代償を移すことすらできる。だからこそ、昔は生贄魔術が横行していた。稼いだお金で人を買い、その人と契約をしてより強い魔術を会得しようとしていたのだ。

 虚王を撃つために、その魔術に手を伸ばしている可能性があると思ったカナタ、けれど「まぁ、いっか」と投げ出した。

 

 今はそんなことを考えている余裕はない。

 今現在、カナタはマーリンの工房の中にいる。魔女と呼ばれる魔術師は、自分の工房を持つことが多い。

 工房と言っても、迷いの森(ウィッチ・スコッグ)のように建物ではなく特定の環境を工房にするモノもいる。

 もはや絶滅したと言っても差し支えない魔女は、自分の工房に様々な仕掛けを施す。

 これは太陽のあった時代、今では太陽暦なんて呼ばれている時代から変わっていない。

 いかに平和な時代であろうと、致死のトラップを仕掛ける魔女もいればどんなに物騒ん亜時代でもかわいいトラップを仕掛ける魔女もいる。

 そんな中、マーリンは実は後者寄りだったりする。何でも、人が其処ら中で死んでいる工房は好かないらしい。


 迷路。

 マーリンの工房を一言で言うのなら迷路である。

 魔女の認めたモノにはとても簡単な道のりで魔女の家に着くことができ、逆に魔女の嫌いな存在か、魔術に関わりが無い者は絶対に魔女の家にたどり着くことはない。

 どんなにまっすぐ進んでもいつの間にか森の入口に着いている。つまり、ゴールの無い迷路になる。


 聞いただけでは簡単そうに思えるが、実は(たち)が悪い物になっている。

 主に二つの理由があって、一つ目に魔術でごり押しすることができない点だ。

 魔術で道を作っていこうとしても、木々の再生が馬鹿にならない速度で行われる。そんなことしていると魔力枯渇するだけだ。

 二つ目に、魔女の認めた存在というのが魔女の無意識で決められることだ。どんなに魔女本人も好きな相手でさえ、今は来ないでほしいと考えられてしまえば絶対にたどり着かない。


「さて、私は認められるかなぁ」

 昨日、約束をすっぽかしたことを後悔しても、カナタは進む他無かった。

ルビ振りを修正しました。

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