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黄金のドラグレイド  作者: 雨蛙
第4章 獣王国ガルガンシア
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第6-2話 サチの修行 後編

 修行を始めてから数ヶ月後、サチはイルダムと互いに魔法を打ち合う特訓をしていた。

 いつものように風の魔法でプカプカと浮いているイルダムが、サチを目がけて指先から火の魔法を放つ。


 「<火球フレイア>」

 「<水矢ウォテル>!」


 サチが飛来した火球に向かって、魔法の水の矢を飛ばす。火球と水の矢が激突し、ジュッと音がして互いに消滅する。

 次にイルダムは、両の掌から魔法で風の刃を複数生み出し、両手を突き出してそれらを射出した。


 「<プレド風刃ゲイルド>」

 「<豪炎砲ディア・フレイア>!」


 サチに襲いかかる無数の風の刃が、サチが放った巨大な火球になぎ払われていく。

 イルダムが次々に魔法を放っていくが、サチはそれに対して有利な属性の魔法を的確に選択して対処していった。

 そのサチの様子を見て、イルダムは魔法を唱えながら考える。


 (魔法の選択の判断、構築と詠唱の速さと丁寧さ、魔法の威力――どれも申し分ないのう。やはり、こやつの魔法の才能は凄まじい)


 イルダムはサチの修行を見ていく中で、彼女の魔法の才能を見抜いていた。

 しかし、サチはその才能ゆえにすぐに魔法が習得できてしまったため、才能があるものにありがちな基礎が未熟なままだった。

 だからイルダムは、修行の始めにサチがどれだけ嫌がろうとも徹底的に基礎の鍛錬を反復させた。それがサチの才能を開花させる一番の近道だと、イルダムには分かっていたからだ。


 (しかし、まさかここまで化けるとはのう)


 自身が放った魔法を再びサチの魔法で相殺されながら、イルダムは心の中で苦笑した。

 イルダムはサチに基礎訓練をさせるかたわら、得意な属性以外の魔法も教えた。

 魔法使いにとって様々な属性の魔法が使えることは、戦闘を有利に運ぶ要素になり得る。それなのにサチは、得意な火と雷以外の属性の習得を面倒くさがって避けていた。

 このままでは、火と雷が通じない魔物に遭遇した際に大苦戦してしまう。事実、レイルナート山脈の雨のせいで、サチは存分に魔法を使えなかった。だからイルダムは、強力な魔法よりも先に、様々な属性の初級の魔法をサチに覚えさせた。

 基礎訓練の反復と様々な属性の魔法の習得。

 その二つが合わさり、サチは今、イルダムの魔法にことごとく対処できるほどの実力を身につけていた。


 (ここまでできとるなら、最後の試練と行こうかのう)


 サチの実力が十分だと判断したイルダムは、自身のとっておきの魔法を放つことを決めた。 イルダムは牽制のために左手で少し強めの魔法を放つと、その隙に右手を掲げて一気に魔力を練り上げた。

 すると、イルダムの右手の周りに四つの魔方陣が浮かび上がった。

 四つの魔方陣にはそれぞれ<豪炎砲ディア・フレイア>、<巨岩墜ディア・シャマス>、<流水射ディア・ウォテル>、<螺旋風ディア・ゲイルド>の四属性の魔法が込められていた。

 四属性の並列詠唱。

 サチが今までしていたように単一属性の魔法で対抗するだけでは、よくて一属性しか相殺できず、残り三つの魔法が襲いかかる。

 イルダムが何をしようとしているか察知したサチは、<迅雷光ディア・エレク>を放って詠唱を妨害しようとした。しかし、イルダムは空いている左の手を悠然とふるい、魔法で土の盾を形成して、サチの雷魔法を防いだ。

 サチが悔しそうに舌を打つ。


 (さて、この魔法――こやつはどう防ぐのかのう)


 自分のとっておきに対し、サチがどう対応するのか。

 それを楽しみにしながら、イルダムはサチにしっかりと狙いを定め、四つの魔法を放つために右手を振り下ろした。

 高熱の炎の球が、巨大な岩の塊が、高速の水の矢が、渦巻く風の槍が―― 四つの魔法がすべて異なる方向から、サチに食らいつかんと飛来した。

 まともに食らってしまえば命を失いかねない魔法を前にして――サチは意外にもクスリと笑みを浮かべた。

 そして眼前に迫る死を前にして、サチは修行で身につけた()()()の魔法を詠唱した。




 「…………こりゃあたまげたのう」


 イルダムは先ほどサチが唱えた魔法に対して、そう独りごちた。

 そして、自分の右手へと視線を落とす。

 先ほどまでサチの魔法を防ぐために防御魔法を構えていたイルダムの右手には、真っ赤な火傷の跡があった。

 それが示すのは、サチが先ほど唱えた魔法が、イルダムの四つの魔法を打ち破り、さらにそれを防ぐために唱えた防御魔法をも貫いてイルダムに手傷を負わせたということだ。


 「儂の魔法を打ち破るだけではなく、傷を負わせるとはのう……合格じゃ。サチ、お主強うなったのう」

 「ふふん、当ったり前でしょ! あたしは天才なんだから!」


 サチはニヤリと笑みを浮かべて、誇らしげに胸を張った。

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