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8.思念力VS総意力

最終章も残り2話です。

 戦線が拡大し、ハーヴァシター氏達、エリーゼ達、フィルトゥーラ達、そして防衛要塞アークに居る俺達は、それぞれに離れてしまった。こちらの戦力により分断された結果か、それとも敵の狙いか……。


「どちらにせよ、やることは同じか……」

 防衛要塞アーク周辺の敵を落としつつ、俺は進行方向を見る。


「あれが旗艦アイテールか」

 広大なすり鉢状のクレーター。おそらくは衛星軌道からの重量兵器跡だろう。その中央部にはクレーターの風景からは浮いた存在がある。金属光沢のある半球体。所々に窓や搬入出ハッチのような物が見て取れる。あれが重力ジェネレータが搭載されているという敵旗艦アイテールだろう。

 彼我の距離は、既に望遠機能無しでもその姿が視認できるほどだ。その敵艦の外壁が一部展開し、中から砲のようなものが現れる。直後に敵艦の姿がぐにゃりと歪む……。

『何か……、危険です!』

 レインの声と共に、防衛要塞アークの前方に恐ろしく強固な拒絶障壁(ウィラクトシールド)が複数展開され、と同時に要塞を急旋回させて回避行動をとる。


 敵艦の砲から黒い光線が放たれ、同時に重く大気全体が揺さぶられるような低音が鳴り響く。黒い光は全ての障壁をアッサリ貫通し、防衛要塞アークを穿つ。


 アークの各部が爆発炎上、炎と黒煙を上げながらガクリと高度を下げる。

「レインっ!!」

『火器管制半壊、飛行システムに障害、損傷重大、飛行が継続できません』

 アークの高度がどんどんと下がっていく。ここまで来て……!!

「いや、落とさせないっ!!」


 俺はアークの底部へもぐりこみ、そこでアモルファス体を最大拡張。以前魔王ヨルムンガルドと戦った時のように青い炎の巨人へと変貌する。


『ウォォォォォォ!!』

 アモルファス体を形作るディール粒子から思念力(ウィラクト)を捻出し、アークを飛行させる。


 俺の支えによりアークの降下は止まった、しかし敵エグゾスーツが再び激しい攻撃を開始する。加えて敵艦が砲撃を加えてくる。

『グゥゥゥゥァァァァァッ!!』

 声ならぬ声が漏れる。先ほどのとんでもない攻撃を連発してこないのは助かったが、これほど攻撃にさらされては、要塞が──


 途端、再び要塞がガクリと高度を下げる。

『コースケ! エネルギーがっ!!』

 なっ……、|視界投影型ディスプレイ《インサイトビュー》に映るバッテリー残量が10%を切っていた。アモルファス体が末端から消失を始めている。

 こんな時にエネルギー切れ!? 替えのバッテリーなんて持っていない。どうする!?


 ──防衛要塞アーク、縮退炉……、縮退炉!?


 アモルファス体の一部を伸長、敵攻撃による破損部からアーク内へと入り込み、中央管制棟の真下にある施設"縮退炉"へと接続する。

『コースケ何を……、き、危険ですっ!!』

 縮退炉から放出されるディール粒子の渦に、俺の思念を接続する。途端、一気に流れ込む膨大なエネルギー。消えかかっていたアモルファス体は急激に拡大し膨れ上がり、直径100mを超える白く輝く球体に変貌した。


『ぐおぉぉぉ……、』

 PEバッテリーは破損時のエネルギー暴走など目じゃないほどの莫大なエネルギー。あの時はある程度流れに身を任せることができたが、今回は無理だ。俺は飛びそうな意識を何とかつなぎ止め、球体を"人型"へと押さえつける。"人型"を維持しないと意識が吹き消えてしまいそうだ……。

 俺は白い巨人姿となり、防衛要塞アークを肩に担ぐように地面に着地した。


 尚もアークに向けて攻撃を続ける細かい敵、俺は虫を払うように手を振るい、奴らを弾き飛ばす。手の動きに伴い、そこから漏れ溢れた思念力(ウィラクト)の破片が、その周囲にいた敵も薙ぎ払っていく。

 敵艦からの砲撃が俺のボディを捉えるが、高密度のディール粒子には通用しない。


 俺は左肩にアークを担ぎ、右手を振り回しながら足をすすめ、敵艦へと近づいていく。


『──スケ!、もう──て──さい!』

 誰かの声が聞こえる、が、何を言っているのかよく分からない。


『まだ、だ。意識、を……、』

 一歩、また一歩、歩を進める。


 敵艦の砲門が俺を捉える。あの攻撃がくる。

 俺は右手に力を貯める。まるで棍棒のように右腕が肥大化した。直後に敵艦の姿が歪む。


 俺は右手を翳す。右手が不自然に伸び、敵艦の砲門を塞ぐような形になり、その目前で敵の黒い光線と衝突!

 空の彼方まで響くほどの轟音と、空間自体が揺れていると錯覚するほどの振動が俺の全身を揺さぶる。揺さぶられ薄れていく意識の中、それでも俺は足を前に出し、体を押し出す。


 思念による維持限界を迎えた右手が爆散崩壊し、同時に敵艦の黒い光線が飛散する。飛び散った黒い光線の飛沫は、周囲のあちこちを圧壊させていく……。

 もげた右腕からエネルギーが漏れ続けているのも厭わず、俺は更に歩を進め、ついに敵艦の間近に到着した。


 えっと、右手はどんな形だったか……? よく覚えていないがやることはわかっている。自然と鉤爪型になった右腕を敵艦に引っかけ、上部を力任せに引きはがす。

 金属がねじ切れ、様々な部品を破壊しつつ敵艦の上層部がはがれ、内部が露わになる。


 ん? 何を探しているのだったか?


 俺の一瞬の迷い、その瞬間に敵艦から赤い燐光が溢れ、各所から大量の触手があふれ出す。発振した赤い光が、俺の頭部を撃ち貫く。


『がっ』

『コースケ!!』

 誰かの声がしっかりと聞こえ、それを最後に俺の意識は流れの中へと急速に溶け込んでいく。それを追いうちするように、赤い光があまたの怨念を運んでくる。


『痛い』『滅ぼす』『怖い』『消す』『体が、』『助けて』

『消える』『増えろ』『壊す』『やめて』『広がれ』

『広がれ』『いやだ』『誰か』『増えろ』『広がれ』

『増えろ』『広がれ』『増えろ』『広がれ』『増えろ』

『広がれ』『増えろ』『広がれ』『増えろ』『広がれ』


 それは負の思念、帰還軍兵士たちが変容し、すべてが一つの存在へと結合し発した総意、それを束ね集めた総意の力が、俺という存在を吹き消していく。


『コースケェェ!!』

『レ、イ……ン』


仮想拡張演算装置オーバーエクステンション!!』




 まぶしい光に溶けるように薄れる意識の中、その光から手が伸ばされた。俺は無意識にその手を取る。手の持ち主の姿が見えた。黒髪に黒目、頭上に光る輪があり、背中には白い翼……。

「怜?」


 彼女に抱き寄せられ、俺の意識は急速に鮮明化していく。


 光の中、俺は抱きしめていた。肩の高さにある白銀の髪、彼女の手も俺の背に回されている。

「……、レイン?」

 彼女が体を離し、その真っ赤な瞳で俺を見る。

『支えます、行きましょう』




 目の前には多量の触手蠢く壊れかけの敵艦。それは赤い光と共に怨念めいた意志を発していた。

 白い巨人化している俺の体には、いつの間にか捜査線が多数走り、その身体を維持していた。これは、レインの仮想拡張演算装置オーバーエクステンションか?


『さぁ……、早く……』

 弱々しいレインの声が届く。彼女の限界も近いっ、急がなくては!


 俺は右手に力を集める。右手が強烈な光を放つ。


『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 触手たちが怨念と共に赤黒い光を打ち出し、俺の右手が吹き飛ぶ!

『反ディール粒子です、思念力(ウィラクト)を打ち消す、反思念力(アンチウィラクト)ともいうべき力です』

 いくら反粒子とはいえ思念力(ウィラクト)だけ一方的に打ち消されるなんてことは無いはず! 出力次第だ!


『オォォォォォォォッ!!』

 俺は右手に思念力(ウィラクト)を集約しながら、触手の苗床となった敵艦に向けて振り下ろす。奴らの放つ反思念力(アンチウィラクト)と衝突し、互いの力が消滅していく。


『いぃぃぃけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!』

『うぎゃぁぁぁぁぁぁぁうぼぁぁぁぁぁぁぁ』


 俺の右手が敵艦を貫き、強烈な思念力(ウィラクト)の波が敵艦を吹き抜けていく。

 数多の触手は、断末魔の叫びを挙げながら白煙とともに消えていった……。


用語説明


・超重力砲

 別名グラビトンレイ

 重力子を高圧縮し、放出。限られた領域に対し超高重力を発生させ、対象を分子レベル

 で圧壊する。対象の強度に関係なく、粉砕することが可能であるため防御不能攻撃。

 使用には多量の重力子を用いるため、連続発射はできない。

 視認できるほどに威力を高めた思念力(ウィラクト)を積層展開して初めて射線を

 わずかに逸らせることができる程度。完全に防ぐのは事実上不可能。



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