表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/91

4.再:魔獣を討伐しよう

ブグマいただきました!

ありがとうございます!!

「あいあおうふぉふぁいまふぃふぁ、おあええふぁふふぁいまふぃふぁ」

「話すのは食べ終わってからでいいから……。」

 ソルジャーギルドにある酒場兼食堂。その一画で大量の食事を前にし、リスのように頬を膨らませた女は僕の言葉に首を激しく縦に振る。

「坊主……、アーヴァは面白いものを拾ってくるな」

「もう坊主でいいよ……、既に拾ってきたことを後悔し始めてるところだよ……」

 果たして暇なのか、これが仕事なのか、ギルドの受付が仕事であるはずのバッシュが、僕と共にこの一心不乱に食事をする女を見守っていた。

 僕の衣服にしても彼女の外套にしても、替えが無い以上は丸洗いできない。一応とげ虫の粘液は拭き取ったが、未だにテカテカしている。やっぱり拾ってくるんじゃなかったかなぁ……。まあ、くっついてきた5匹のとげ虫はギルドで売れたので、多少儲かったけど。





「これも"いっしゅくいっぱんのおん"です。なにかお手伝いできることはないですか!?」

「いや、"一宿"はしてないよね……」

 ソルジャーギルドは食事が出る、とはいえ、規定量以上を食べた場合には追加料金を徴収される。追加料金により「とげ虫」で稼げた小遣いが吹き飛んだ頃、彼女はやっと満足したらしい。やっぱり拾ってくるんじゃなかった……。

「とりあえず、きみ名前は?」

 僕の問いかけに、彼女は得意満面と言いたげな表情で返す。

「おっと、申し遅れました、私はフィルトゥーラ……。あれ? フィルトゥーラですよ?」

「なんで疑問形なんだよ……」

 先ほどまでの自信満々な様子とはうってかわって、首をかしげている。

「なんでしょう? 他に何かあったような気がするのですが、なんかこう、蓋をされているような、その何かが思い浮かびません」

「……もしかして記憶喪失とか?」

「あー、それかもしれません」

 なんて胡散臭い記憶喪失患者だろうか。とても胡散臭いが、思い出せずに戸惑っているのは本当のようだ。


「とりあえず、ラインフォートの住民でもないし、ソルジャーでもないですよね?」

 僕はすぐ横で様子を見ていたバッシュに話を振ってみる。バッシュはゆっくりと頷きつつ口を開く。

「そうだな、俺も彼女を見たことがねぇな、他所の集落から来たのかもな……」

 その言葉を聞きつつ、僕はフィルトゥーラに目を向ける。僕の視線を感じたのか「え、私?」と彼女は少々挙動不審になる。

「えっと、どこか遠くから来たような気がします!」

 予想通りのあいまいな情報だ。なんの参考にもならないなぁ。

「まあ、行くところも記憶も無いってんなら、とりあえずソルジャーとして活動してみたらいいんじゃねぇか?」

 バッシュが気楽にそんなことを言う。とげ虫に集られて倒れてた奴がソルジャーできるのだろうか?

「先ほどから話に出るソルジャーってなんでしょうか?」

 フィルトゥーラの質問に、バッシュが答える。概ね僕が聞いた話と同じ内容だ。


「そういうことですか! 私戦うの得意ですよ! ……たぶん」

 自信があるのか無いのか分からない答えだ。

「案外行けるかもしれねぇな。嬢ちゃんも固有(ユニーク)スキル持ち……?」

 バッシュは頭と瞳を光らせつつ、そう言いかけて言葉を止めた。その見目は急に真剣なものに変わる。

重力(グラヴィティ)って読めばいいのか? 聞いたことのないスキルだな。その上名前の表示が少しおかしくなってやがる。こんなことは初めてたぜ……」

 バッシュは目を細め、何かをさらに看破(シースルー)できるんじゃないかとフィルトゥーラを見続ける。彼女はその視線を受け、照れている。

「ともかくだ、ドレイン持ちなら1級ソルジャーだ。登録するかい?」

 結局わからない以上、考えても仕方ないという結論に達したらしいバッシュは、ギルド受付としての仕事を始めた。この間、クスタはずっと黙り込み、何かを考えているようだった……。






「で、なぜ一緒に?」

「バッシュさんから魔獣討伐が大事だと聞きまして! せっかくなので一緒にと思ったのです」

 鬼ウサギ素材で武器と防具を新調した後、僕は"鬼猿"と戦うべく、ラインフォートを出発した。したのだが、なぜかフィルトゥーラまで付いてきた。

『"敵は道連れ"って言うしー、いいんじゃない?』

「それを言うなら"旅は道連れ"な。自爆攻撃するみたいになってるから!」

 クスタはフィルトゥーラをどこか警戒しているように見えたのだが、思い違いだったかな?

「危なくなったら逃げてよ、僕も逃げるから……」

 とりあえず、とてもじゃないが"守る"なんて言えないので、危なくなったら逃げてもらおう。僕も逃げたいから……。




『あれは角いのししだね!』

 僕らの目の前、巨大ないのししが鼻息荒くこちらを睨みつけている。前足で地面を掻き、目に見えて突進の準備中だ。ただまあ、僕の知るいのししには、頭部にあんな立派な角は生えていないな。やはりこれも魔獣なのだなぁ。

 そんな呑気な思考をしている間に、角いのししは突進を開始した。

「止めます!!」

 僕の後ろからフィルトゥーラが飛び出す。

「あっ──」

 あぶない! そう僕の言葉が続く前に、フィルトゥーラは右手を突き出し、それを中空で下に振り下ろす。

「ピギィィィ!!」

 角いのししは前のめりに地面に叩きつけられ、地面との抵抗で突進が止まる。

「ふっ!」

 フィルトゥーラは一呼吸の間で接近。しっかりと腰を落とし、体全体の回転を乗せた右の拳をいのしし側頭部に叩きこむ。

 彼女の体格に対して不釣り合いに大きな篭手が衝突し、ゴッ!! っという重々しい音を立て、いのししの頭部が跳ね飛ばされる。


「──ぶない……」

 僕の口から続きの声が出た時には、角いのししは沈黙し、ドロップアイテムへと変貌していくところだった。


 もう、僕じゃなくて彼女が魔竜王倒せばいいんじゃないかな……。





『あれが鬼猿だよ』

 クスタはいつもとは異なり、やや小声でそう告げる。敵まではかなり遠く、姿としては木々の隙間から辛うじてその白い毛皮の一部が見えている程度だ。だが、この距離でも声を立てれば気付かれるということだろう。どのみち戦闘となれば気付かれるのは間違いないが、奇襲は無理、ということか。いやまあ、いつも奇襲なんてできてないけどね……。


 僕はフィルトゥーラと無言で頷き合い、僕は左右の手でそれぞれ短剣2本を抜き、フィルトゥーラは……そのままで鬼猿の背後に近づいていく。


「ギャギャギャァァァア!!」

 残り3m程度の距離で、急に鬼猿が振り返り奇声を上げた。正面から見た鬼猿は全身白い毛皮で赤い顔。当然角が生えていた。

 やはり気付かれていたか、という僕の思考を遮るようにフィルトゥーラの声が響く。

「っ!! 上です!」

 弾かれるように上を見る、樹上から2匹の鬼猿が落下してくる姿が目に入る。当然正面の鬼猿も接近してくる。まさかこっちが奇襲されるとは!!


「止めます! 攻撃を!!」

 フィルトゥーラが上へと右手を翳すと、落下してくる鬼猿の落下軌道がズレ、当初の予測落下地点とは全く異なる位置で着地する。続けてこちらに突進してくる鬼猿に向け左手を向けると、猿は唐突にガクリと膝を折り、頭から地面に転がった。

『アーヴァ!!』

「っ!! 加速(スピード)!!」

 フィルトゥーラの動きに思わず見入ってしまった僕は、クスタの声で我に返る。スキルを発動すると、すべての動きが少しスローになった。

「まずは1体!」

 元々地上に居て、こちらに突進してきた1体に接近、地面に倒れている状態の背中目掛けて短剣を振り下ろす。

「硬い!」

 角ウサギ武器が刺さらない! 鬼猿が僕目掛け右手を突き出してくる。巨大な手のひらが接近する。アレに掴まれたら僕の頭くらい簡単につぶされそうだ!! 幸い見えない速度ではない。僕は手を避けるべく一旦下がると、その手は空を切る。

 自分に「落ち着け」と言い聞かせつつ、僕は再度猿に接近。単純な攻撃は刺さらない。なら弱い部分を狙うんだ。弱い部分はどこだ。僕は短剣1本を両手で持ち、体重をかけて首に向けて振り下ろす。


 ゴリッ!! っという手ごたえと共に、短剣は首にめり込む。

「やった──、ぐぇ」

「ゴギャボガァァ」

 刺さったことで一瞬気を抜いたためか、鬼猿が暴れて振り回した腕にあたり、僕は吹き飛ばされ、木に打ち付けられた。が、短剣は手放していない。鬼猿は短剣の抜けた傷口から多量に出血し、直後にバッタリと倒れた。



【スキル:膂力(パワー)をドレインしますか? > Yes / No 】

 頭の中にドレインの確認メッセージが流れる。それを迷う間もなく、視界には2体の鬼猿を相手に時間を稼ぐフィルトゥーラの姿が映る。こんなところで寝ている場合じゃない!! 

 頭でYesを選択しつつ、僕は立ち上がる。


【スキルがいっぱいです。どこに上書きしますか?】

【所持スキル

 1.大吉(ラッキー)

 2.加速(スピード)

 3.回復(ヒール)


 くっそ、こんな時に、回復(ヒール)でいい!


【スキル:膂力(パワー)をドレインしました】

【所持スキル

 1.大吉(ラッキー)

 2.加速(スピード)

 3.膂力(パワー)


膂力(パワー)!!」

 たった今取得したばかりの膂力(パワー)を起動する。僕はぐっと地面を踏み込み、フィルトゥーラに向けて体を押し出す。思った以上の踏み込み力で、僕の体は彼女へとものすごい勢いで接近していく。加速(スピード)の効果で、周囲の速度を遅く感じるようにはなっていたが、僕の速さが上がるわけではないらしく、加速(スピード)中に自分の動きが遅いと感じていた。しかし、膂力(パワー)を使ったことで、一気に瞬発力が上がった。これが膂力(パワー)の効果!?

膂力(パワー)があるっていうならっ!!」

 フィルトゥーラにとびかかろうとしている鬼猿2体のうち、彼女の背後側の1体に向け両手を添えた短剣を突き出す。瞬間、鬼猿は僕の接近に視線を向け、空中にありながらも身をよじって避けようとしたようだが……

「遅い!!」

 確かな手ごたえを持ち、短剣は鬼猿の腹部へと突き刺さる。深々と刺さった短剣をそのまま横へと振り抜く。猿の顔は驚愕と痛みで歪んでいく。が、それをゆっくり見ている暇はない。まだ1体残っている。


 腹を切り裂いた鬼猿は捨て置く。僕は再び足に力を籠め身をひるがえしながら、フィルトゥーラが抑え込んでいるもう1体への前に躍り出た。鬼猿もフィルトゥーラも驚愕で目を見開いたように見えたが、僕はそれを無視し短剣を鬼猿の胸へと突き立てる。ゴキリと肋骨を押しのけつつ短剣は鬼猿の胸へと押し込まれる。

 短剣を抜き去ると、胸部から大量出血した鬼猿は仰向けに倒れていく。

「あっ──」

 腹部を切り裂いた鬼猿がまだ生きており、フィルトゥーラの背後から彼女に向けてその手を──

「ちぇすとぉぉぉ」

 彼女の振り向き正拳突きがその胸部に炸裂、5mほど空を飛び木に激突、落下した。



 やっぱり、僕じゃなくて彼女が魔竜王倒せばいいんじゃないかな……。


アエリア説明スキル


【ドレインスキル】

 魔獣からドレインできるスキル。

 スキルは必ず任意に発動するアクティブスキル形式。いずれも使用後の再使用までには一定時間のクールタイムが必要。


膂力(パワー)

 一定時間の間、体中の筋力が上昇し、攻撃力や移動速度が上がる。

 ただし、反応速度は上がらないため、移動速度は上がっても対応できないことも考えられる。


投影(シャドー)

 自身にダブるような幻影を纏い、敵の攻撃を1回だけ無効化する、簡易バリアのようなものを展開する。

 簡易バリアは攻撃を受けて消えるか、もしくは任意に解除しない限り消えることはない。


加速(スピード)

 一定時間の間、体の反応速度が上昇し、素早く動けるようになる。

 ただし、身体能力自体は上昇しないため、肉体的に不可能な速度では行動できない。


回復(ヒール)

 対象の自己治癒能力を高め、傷を癒す。自身以外に使用する場合には手を触れる必要がある。


必殺(クリティカル)

 攻撃力100倍の攻撃を1回だけ繰り出すことができる。


殺陣(ラッシュ)

 一定時間の間、攻撃力が2倍になる。ただし、身体能力も反応速度も上昇しない。


負荷(スロウ)

 一定時間の間、武器に呪いを付与し、攻撃が当たった相手の動きを遅くする。

 当てれば当てるほどに動きが鈍くなる。スキル効果時間が終了すると、相手の動きも戻る。


弱体(ウィーク)

 一定時間の間、武器に呪いを付与し、攻撃が当たった相手の力を低下させる。

 当てれば当てるほどに弱くなる。スキル効果時間が終了すると、相手の力も戻る。


剛体(ハード)

 一定時間の間、防具や体表の硬度を強化し、防御力を上げる。


瞬歩(ステップ)

 数mの距離を瞬間移動する。発動には、足が何かに触っている必要がある。

 (地面でなくても何でも良い。小石や、空中にある葉っぱでも良い)


固有(ユニーク)スキル】

 特定の人物が保持している特別なスキル。ドレインで上書きすることもできるが、スキルを開放すると元の

 固有スキルに戻る。


大吉(ラッキー)

 アーヴァが保有している固有スキル。魔獣を倒したときにドロップが出やすい。また、良い物が出やすくなる。


看破(シースルー)

 ソルジャーギルド受付のおっさんが持つ固有スキル。貴重なスキルだが、それなりに保持者がいる。

 対象の保持スキルを看破する。ギルド受付にはなくてはならないスキル。これでソルジャー等級を判定する。

 あまり他人のスキルを覗きすぎるのはプライバシーの侵害です。


=重力%\(グラヴィティ)

 行き倒れ魔法使い フィルトゥーラが保持している固有スキル。なぜか名称が少し文字化けしている。

 攻撃を当てた相手を重くして動きを遅くしたり、力を籠めると相手を吹き飛ばしたり、相手を押しつぶしたり

 することができる。

 威力はそれほどでもないが、効果時間は存在せず、いつでも使用可能。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ